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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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謀略と野望

 ――とあるホテルの一室。カイは荷物をベットの傍らに置いて備えられた椅子に座って一息ついた。


「……ようやく、一息つくことができたな」


 カイはそう呟くと、窓の外を見る。時刻は夜であるため空などを見ることはできないが、カイがいるホテルよりも高い建物の光を見ることができた。


「さて、やることは多いけれど……ひとまず今日のところは休もう。まずは食事でもするか」


 カイは疲労により体が重いことを自覚しつつ、立ち上がる。その時、ノックの音が部屋の扉から聞こえてきた。


「はい」


 カイは返事をしつつ部屋の扉を開ける。そこにいたのは、


「話をしたいのだが、構わないか?」


 ――人の姿をした邪竜。リュオと名乗る存在が立っていた。


「……本音を言えば休みたいところだけど、重要そうだな」

「別に明日でもいい」

「いや、話し合いはしておこう」


 カイは邪竜を招き入れ、テーブルに備えられた椅子に座り、会話を始める。


「内容は今後の方針かい?」

「ああ、世界の革命……魔力を伴った樹木を形成することは成功し、第一段階は完了した。それによる推移は想定通りであり、そう遠くない内に魔物が出現するだろう」

「魔物が現れたら、第二段階に移行する……だったな」

「ああ、国はその対応に追われるだろう。無論、私達を阻む最大の障害であるそちらの仲間も、な」

「現在進行形でユキト達は対策を立てているだろう。僕らとしてはそれに対抗できるだけの準備をしなければならないが……第二段階へ移行するのは、どのくらいの期間が必要だ?」

「そこについては予測も難しい。樹木の形成は想定通り進んでいるが、この国全体に伝播してから、魔力が大気に満ち……魔物が形を成すほどの規模となれば、数ヶ月単位で時間が必要だろう」

「数ヶ月か……」

「長ければ半年から一年。逆に言えば、少なくとも一年以内には第二段階へ移行するが、それでは長すぎると考えている様子だな」


 邪竜の指摘にカイは小さく頷いた。


「ああ、僕はツカサやイズミの研究を見てきた。魔力樹という新たな資源を得た以上、霊具の開発を加速させるだろう」

「つまり、今まで以上に力をつける速度が増すと」

「そうだ。単純な魔力量だけなら、特級霊具クラスの物を生み出すのに、そう時間は掛からないはずだ」

「魔力で世界が満ちる以上は当然の流れだな……とすれば、魔物の発生も相応に早くなるべきだと?」

「早めるにしても、半年が三ヶ月になるくらいのものだろう。下手をすればイズミ達は一ヶ月で成果を出すはずだ」

「なるほど、間に合わないと」


 邪竜は口元に手を当て考え込む。


「ならば、どう動く?」

「……案を提示する前に確認だが、あなたの配下は僕が顔を合わせた人間だけか?」


 ここに来る前、カイは邪竜の支持者と顔を合わせた。彼らはカイを歓迎し、またその力を畏怖していた様子だった。


「ああ、そこは間違いない。もっとも、工作活動は続け支援者はいるが事情を全て把握している存在……つまり、我の存在を認知しているわけではない」

「なるほどね」

「何か思いついたのか?」

「少なくとも、霊具の開発は止められない。となれば戦力差はさらに開くばかり……だが、それを埋める方法は考えなければならない」

「魔物が発生し始めれば奴らは邪竜云々どころの話ではなくなりそうだが」

「だとしても、ユキトを始め捜索を続ける者はいるだろう……そうした面々の動きを止める方法はある。ただ、こちらもリスクを取る必要はある」

「なんとなく何をするかはわかった。しかし、策を成すだけの価値はあるか?」

「ああ、もちろんだ……現時点でユキト達の存在は日本政府しか把握していない。となれば、それが公になった時に混乱が起きるだろう」

「世界各国が組織に対し圧力を加える、と?」

「ただ、ユキト達しか魔物に対抗できる手段がないとすれば、各国政府も渋々存在を了承するかもしれない……正直、ここについては手立てがない以上は仕方がない。でも」


 と、カイは笑みを浮かべる。


「それに乗じ、僕らが動くことはできる」

「……なるほど、やってみる価値はありそうだな。しかし、それには当然リスクがある」

「細心の注意を払うにしても、誰かが動く必要がある。そこは僕がやるとしよう。あなたの配下は、これまで通りの動きをしてもらえれば」

「いいだろう、ならばお手並み拝見をいこうか」


 邪竜の言葉にカイは笑みを湛えたまま頷いた。

 作戦会議は終わり、邪竜は部屋を去る。そして最後にカイは、


「やれやれ、ようやく休めるかと思ったが……どうやら、野望を成すまで止まることは許されないらしい」


 だが――カイは胸の内にある野望と向き合う。それを成すためなら、どんな苦難も応じてみよう。

 そうした考えの下、カイは静かに頭の中で計略を巡らせ始めた。


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