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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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組織の要

 作業を開始して一時間後、タカオミは手を止め転移魔法陣を構築。それを利用し組織へと舞い戻った。


「直に組織から魔力樹のある範囲ならどこでも転移できるようになる」


 と、タカオミは転移した直後に言った。


「魔物が出現しても、対応はできる……でも、どういう体制を構築していくかは議論の余地がある。これからやることは山積みだな」

「いつ何時、カイや邪竜が出現してもいいようにしておかないといけないな」


 ユキトの発言に、他の三人は相次いで頷いた。


「今日のところはこれで解散しよう。タカオミはイズミの所へ行くのか?」

「うん、採取した魔力を渡さないと」

「俺も同行するよ。レオナとチアキは先に帰っていてくれ」


 その言葉で二人は組織を去る。残ったユキトとタカオミは、イズミが霊具を作成する部屋を訪れる。


 ――彼女は現在ユキト達がいる町とは違う遠方で暮らしている。けれど霊具を作成していく上で一人遠い場所にいるのは不都合、ということで転移魔法を設置してこの組織に来ている。しかもそれは入り浸っているというレベルで間違いない。

 そもそも転移魔法の設置場所も、自宅にある自分の部屋と組織に用意されたイズミの部屋を直通で繋いでいる。霊具を作成していることで転移できる手法を見つけ出したのだが、それにしてもやりたい放題ではある。


 無茶苦茶だが、イズミの能力――霊具を作成する能力は間違いなく組織の要であり、これからの戦いで必要なもの。だからこそ、ユキト達は何も言わず彼女に任せている。

 部屋の中は、大量の資料や資材が置かれた雑多な空間だった。その中でイズミは椅子に座り何やら作業をしていた。


 ユキトとタカオミはそちらへ足を向ける。そこでイズミが反応し、


「あ、帰ってきたんだ。結果はどうだった?」

「魔力は採取してきたよ」


 タカオミは言いながら荷物から箱を取り出す。それを見たイズミは、


「ほうほう、やっぱり純然たる魔力だね。これなら霊具に転用できる」

「その作業、今からやるの?」

「そのつもり。昨日までに色々と準備をしてきたからね」


 自信を覗かせるイズミ。そんな様子の彼女にユキトは、


「……ちゃんと寝ているか?」

「私は霊具の作成に注力しているだけだし、平気だよ。情報収集とかはツカサやタカオミに任せているし……皆の霊具を作成しないといけないし、時間との勝負でもある。ここは少しでも頑張らないといけないね」


 イズミは答えながら魔力を採取した箱をじっと見据える。


「ひとまず、相当多量な魔力でも耐えられるような霊具だって作ることができそうだね」

「それは良かった……イズミ、霊具を作成するとなったら、誰を最初にする?」

「そこは組織の体制とかにも関わってくるかな? ただ、最初の相手は二人……決めてある」

「二人?」

「スイハとオウキ」


 その二人の名を聞いて、ユキトはなるほどと内心で呟く。その間にイズミはさらに解説を進める。


「スイハは何より、聖剣所持者であったこと……剣術面ではカイが上回っていると思うけど、潜在能力の高さを考慮すると、ユキトの次に頼りになる」

「だからこそ、早期に強力な霊具を……というわけか」

「うん。そしてオウキについてはユキトやカイを除いた場合、私達の中で一番の戦力であること」


 ――オウキの能力は接近戦向きではあるのだが、それを考慮しても彼の活躍は異世界でも高かった。

 その戦歴を知っているからこその判断。よってユキトも首肯し、


「ああ、その二人ならよさそうだな。スイハの方は剣術訓練も必要だろうけど、そこは俺がフォローするよ」

「うん、ありがとう。オウキの方は、これから政府間との折衝とかもあって単独で行動することも多い。だから、早めに戦力を整えておきたいという意味合いもあるけど……」

「オウキの負担は大きくなるな……役目について何か言っていたか?」

「やりきるしかない、と本人は語っていたよ。覚悟は決めているみたい」


 ユキトはその言葉を聞いて、オウキの意思を尊重しようと決める。


「俺もオウキの活動に対してはフォローが難しいからな……オウキと、後はメイ辺りが絡んでくるか?」

「メイは率先してやるだろうね……ま、この辺りも改めて話し合いの機会を設けないといけないかな」

「そうだな……といっても、一度に集まれる機会がほとんどないんだよな」

「私は無理矢理にでも時間を作るしかないと思う」

「……それしか、ないか」


 ユキトはスケジュール調整が大変そうだと思いつつ同意する。


「そこについては俺が――」

「ユキトはやらなくても大丈夫。私の方で動くよ」

「……いいのか?」

「たまには霊具の作成とは違うことだってやって気分を変えないといけないし」

「それで気分が変わるのか疑問だけど……俺の方はカイや邪竜の動きがわからないか色々試してみる。それでいいか?」

「うん、もちろん」


 イズミは笑みを浮かべながら返答した。


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