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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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地底の奥底

 変化はどうやら、ユキトが連絡を取るために魔力を発したためらしい――ユキトは立ち止まり、洞窟奥を見据えた。明かりの範囲外は漆黒の暗闇ではあるが、魔力を通して洞窟内を推し量ることはできる。


「……何か、動き出したか?」


 ユキトは呟きながら洞窟奥に目を向ける。その時――オオオオ、という音が聞こえてきた。

 それは洞窟内で発生する自然の音か、それとも魔物の咆哮か。ユキトはしばしその音に耳を傾けた後、歩き出す。


『ユキト、どうするの?』


 ディルが問い掛ける。その問い掛けの意図を理解しつつユキトは、


「……進もう」


 そう返答した。先ほどの声は、魔物の声――ユキト達はそう判断し、進むことを選択した。


『やっぱり邪竜の計略かな?』

「その可能性が高いけど……意図がわからないな。こんな場所で魔物を生み出して何をしている?」


 呟きながらもユキトは進んでいく。やがて明かりで照らしても限りない漆黒が現れた。

 ユキトは明かりの光量を上げる。足下が途切れ、その先に断崖絶壁が存在していた。


 それはどうやら洞窟奥にできた大穴――遙か地底へ進むそれは、岩壁に何かしら魔力が存在しているのが見て取れた。


「間違いなく、邪竜関連だな……大穴の先がどうなっているがここから調べよう」


 そこで、魔物の咆哮が聞こえてきた。ユキトは魔力を探り、大穴がどこまで広がっているのかを調べる――


「っ……」


 そこで、ユキトは声を漏らした。


「この大穴、ただ真下に空いているだけじゃない……そこから地底に存在する洞窟に繋がっている」

『それは……自然に出来た洞窟なのかな?』

「わからない。そこまでもし邪竜が作っているとなったら、相当な魔力を消費している……いや、霊脈を利用すればできないことはないのか?」

『そうだとしても、理由がわからないけど……』

「ここまで手の込んだことをするのであれば、逆にある可能性が浮かび上がってくる……この地底に、邪竜は拠点を置いている」


 ユキトの言葉にディルは『なるほど』と応じる。


『だとすると、この先に邪竜が?』

「可能性はある……もしそうならこのまま単独で進むのはさすがにまずいか。一度引き返して――」


 そうユキトが呟いた時だった。ドオン、と一つ音がした。

 何が起こったのかはわからない――が、ユキトは直感する。


「入口が……破壊され出口を岩で塞がれたな」

『……罠?』


 ディルが呟くと同時に、ユキトは考える。


 ――入口が破壊されて塞がれていても、ユキトならば出ることはそう難しくはない。この洞窟は魔法によって生成されたのは間違いないが、そうであってもユキトの能力であれば脱出できる。

 しかし、時間は掛かる――なおかつ、後方からも魔力を感じた。これは通信を妨害するための処置であるのは間違いない。


「退路を塞ぐだけではなく、俺に連絡を取らせないようにするための処置だな」

『邪竜がここに誘い込んだ、ということでいいんだよね?』

「可能性は高い。怪しい場所がある以上は調査に乗り出す……それには間違いなく俺が動くというのは間違いない。単独か、仲間を伴ってなのかわからないが……いや、仲間がいたら間違いなく俺は脱出を優先するだろう。邪竜は単独で来ることを読み切っての罠、と考えた方がいいだろうな」


 直後、地底の奥底から魔力――ユキトはそれについて感じた記憶があった。それは異世界における、迷宮攻略の際に感じたもの。


「……魔物生成の罠だ」

『私も体験したことがあるね。迷宮内に仕込まれた魔法によって、魔物が際限なく出現する――』


 魔物を生み出し続けるという物量で迷宮攻略者を妨げるものだ。ユキトも幾度かこの罠に遭遇したことがあり、その際は仲間の犠牲が出たこともある。


『これを打破するには魔物を生成する魔法陣を破壊するか、罠の効果が切れるまで魔物を倒し続ける必要がある……』

「ああ。つまり、地底に入り込まないといけないわけだが……」


 地底の奥底で魔物の数が増えていくのがわかる。魔物の咆哮が唱和し、状況は明確に悪くなっていく。


「……速やかに連絡をとって迎撃態勢に入るのが最善だ」

『うん、そうだね』

「だが、どうやら……邪竜はそれをする余裕を与えないらしい」


 ユキトが呟いた直後だった。地底の奥底にあった気配が、徐々に近づいてくる。


「退路を塞ぎ、魔物による物量で俺を倒そうという感じらしい……が、魔物の強さは並程度だ。俺なら対処できる」

『もし魔物を無視して脱出を優先したら……』

「脱出はできるだろうけど、俺の魔法によって地上に魔物を出さないよう入口を塞ぐことが出来るのかは疑問だ。大量発生した魔物を放置はできないし、外へ出すわけにもいかない」


 言葉と共にユキトは剣に魔力を集める。


「地底奥深くから他にも地上への出口があって、そういう場所から魔物が出る可能性もある。今は俺を標的にしているからいいが、退却したら魔物がどう動くからわからない」

『私達がいるから、魔物は外へ出ずこっちへ向かってくると』

「そういうことだ……なら、魔物を真正面から打ち破る!」


 そう宣言すると同時、いよいよ迫ってきた魔物に向け、ユキトは刃を放った――


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