終わる作戦
カイが邪竜と対面する間に、ユキト達は魔物の討伐を続け、やがてその勢いが衰え始めた。
「順調にカイが邪竜の仕込みを破壊しているみたいだな」
ユキトはそう考察する。会場内には魔力が多数あるためさすがにユキトでもカイの居所をつかむのは不可能であるし、邪竜の仕掛けも場所についてはわからない。
だが魔物の減少によってカイがちゃんと行動しているという証明になっている――ユキトはなおも落下してくる魔物を倒し続ける。持ち前の継続戦闘能力を存分に発揮して、ユキトのパフォーマンスは何ら変わることなく動き続けている。
一方で仲間達には疲労が出始めている。よってユキトはいくらか指示をして周囲を警戒する仲間と交代。他の面々は魔物と戦う者とそれ以外とで分け、対応していく。
そうして魔物の数はさらに減少し――いよいよ戦闘は終局を迎える。それと共にカイから連絡がやってきた。
『邪竜の仕込みについては処理できたよ。そっちの状況は?』
「魔物の出現数は少なくなっている。会場内の仕掛けは全て壊したのか?」
「観測できる範囲では」
「わかった。それじゃああともう一踏ん張りといったところか」
ユキトはコメントする間に時間を確認。ライブ開始からおよそ一時間ほど経過しようとしていた。
まだ相変わらず会場から声が漏れ聞こえてくる。ライブ自体はまだまだ先があるようだが、ユキト達の仕事が終わるのはそれほど遠くなさそうだった。
「はっ!」
ユキトは声を発しながら数体の魔物を撃破する。加えて他の仲間達も奮戦し――やがて、完全に魔力が途切れた。
頭上を見上げて魔物が出現しないことを確認した後、ユキトは仲間達へ指示を出す。
「周辺を警戒しつつ、最初の配置に戻ろう」
その言葉に仲間達は従い――その一方でユキトはなおも会場の屋根の上で魔物が現れないか注視する。
(まだ魔力は地底から噴出し続けている……警戒は続けないと)
『ユキト』
その時、カイが声を発した。
『会場内の様子を確認したけど、異常はなしだ』
「わかった……外へ戻ってくるか?」
『状況はどうだい?』
「魔物の出現はなくなった。警戒は続けるけど……」
『わかった。僕の方ももう少し様子を見てから動くことにするよ』
「了解」
ユキトは空を注視しながらも動き出す。屋根から移動し、元の位置へと戻ってくる。
「……これで、終わりでいいのか?」
そしてユキトの口からそんな疑問が出た。
邪竜は策謀を得意としている。それは間違いなくこの地球においても配下を用いて色々な動きを見せている。
しかし敵の狙いが何なのかわかっていない。敵の動きを読んで魔物の撃退には成功したが、結局どういった意図があったのかは不明のままだ。
「カイは……何かしら考えがあって色々と準備をしていたわけだけど……」
何かわかることがあったのか――作戦の後に話をしようとユキトが思った時、仲間から周囲に敵はいないという報告を受けた。
「もう邪竜の仕込みはないし、もし敵が動くとすれば配下とかが出てくるんだろうけど……」
それはないだろう、とユキトは確信していた。邪竜達が表に出てくることはない――ユキト達は組織的に動き、今回の戦いも圧倒している。この世界に邪竜がいるにしても、ユキトほどの力は所持していないだろう。
故に、直接戦いになる可能性はおそらく低い。ユキト達としてはどうにか敵を見つけ出し、正面から挑むことができれば――
「……まだまだ戦いは続きそうだな」
ユキトはそうした予感を抱きながら、どこまでも空を見上げ続けた。
やがてカイが戻ってきて戦いは終了したという旨を告げる。
「とはいえ、ライブが終了するまでは警戒する必要があるかな」
だがさすがに全員は必要ないという結論に至り、時間も時間であるため仲間の多くはご飯を食べに行くということに。
仲間達がワイワイと移動し始める中、カイは会場を見据えていた。ユキトはそこで、
「カイ、何か気になることが?」
問い掛けに少し反応しなかった。ユキトはなんだか様子がおかしいよに感じたためもう一度声を掛けようとしたのだが、
「……ああ、すまない。今回のことについて考えていた」
「カイもわからないか?」
「色々と推測はできるけれど、断定はできないな」
カイはそう述べた後、ユキトへ顔を向けた。
「今回の事件で色々と情報は収集できた。魔力を解析して、邪竜の居所を調べたいところだ」
「そうだな……少なくとも情報は集まっている、だな」
ユキトの言葉にカイは頷く。
「邪竜のやり方は悪辣かつ、分別がない。何かしら目的があるのは確定的だが、残念ながら姿を現さない以上は目的そのものを暴くのは難しい」
「どこまでも後手に回るしかないな」
「うん、これからも同じような戦いが続くだろうと思う」
カイはそう述べたが、瞳は力強い。
「だが……僕らは絶対に勝つ」
「そうだな」
「邪竜の、思い通りにはさせない」
ユキトは再び頷く――その時、カイの様子が少し変わったことに気付く。
それはまるで、先ほどの言葉は自分に言い聞かせているような――ユキトは気になったがついぞ尋ねるようなことはせず、作戦はやがて終わりを告げた。




