飛来する魔物
魔物の能力はユキトの基準から言えば並といった程度。決して弱いわけではないが、異世界で戦い続けたことを思えばそれほど高いレベルではない。
これならばお手製の霊具しかない中でも対応はできる――そうユキトが心の中で呟くと、魔法による援護が飛んできた。
飛来したのは雷撃。それが魔物に突き刺さると、あっけなく消滅する。仲間達なら容易に対処できる、という事実を目の当たりにして対応は可能だとユキトは内心で断じる。
しかし同時に、別の疑問が浮かび上がった。
(以前生成した竜や、先日の魔物と比べて弱い……強力な魔物を生成できないのか?)
ユキトはなおも魔物を倒しながら考察する。大気中の魔力を利用して魔物を生成するという技法。これが異世界で利用していたのかは判然としないが、霊脈を利用する形式以外で邪竜は魔物を生み出せることは間違いない。
それと共に、先日エリカ達へ襲い掛かった魔物の能力を考えれば、より強力な魔物が生み出されてもおかしくはないはず。
(俺達の動きに気付いていて、威力偵察をしているとか?)
そんな疑問が頭に浮かんだ矢先のことだった。上空にある魔力が新たな魔物を生み出す気配を見せた時、
「……なるほど、そういうことか――カイ!」
ユキトは魔法でカイに呼び掛ける。
「会場周辺を固めてくれ!」
『何かわかったのかい?』
「強力な魔物を生み出すとかではなく、今回は質より量だ。立ちのぼる魔力を利用し、大量の魔物を生み出す気だ」
そうユキトが語る間に魔物が上空より飛来してくる。その大半は会場の屋根に降り立ち、動き出そうとする寸前でユキトに滅ぼされる。
しかし、数が多ければ対応が遅れる――そう思った直後、仲間達が屋根へと移動し魔物の迎撃を始めた。
「これなら、どうにか対応できるか……?」
ユキトは胸中で呟きながら魔物を倒していく。ただ、懸念はまだある。
「カイ、霊脈から立ちのぼっていく魔力……これについては、ライブが終わらない限りは止まらないよな?」
『ああ、そこは間違いない』
ユキトの問いにカイは応じる。
『時間にして今から二時間くらいかな?』
「……ライブが終われば魔力が途切れるか? それとも、お客さんが会場から出る間も手続けるんだろうか?」
『そこはわからないな……ただ、こちらもちゃんと準備をしているよ』
そう言うと共に、カイが立っている場所から魔力が。
『ツカサ、頼むよ』
『ああ、任せろ』
現場にいるツカサ――カイが指揮官ならばツカサは会場周辺に施している仕掛けを管理している。
『魔物が生まれるメカニズムについては完全とはいかないがある程度分析できている。こちらの魔法で魔物の生成を阻害する。時間は……長くて三十分程度か』
「その間、持ち堪えればいいか?」
ユキトの問いにツカサは『そうだ』と応じ、
『邪竜が施した術式を探しつつ、魔法でその効果を阻害。同時並行でやる。おそらく術式自体は会場周辺にあると思うんだが……』
「探す人間を編成した方がいいかな?」
『そこは、僕がやろう』
と、カイが口を開いた。
『現場指揮はオウキに任せる。僕の方は会場内などに入り込んで邪竜の術式を破壊する』
「中へ……そういえば、会場内は大丈夫なのか?」
『ツカサがその辺りをやってくれている』
『会場内に魔力を拡散する術式をいくつも仕込んでいるからな。実際、観測している中で会場内に魔物が生まれた気配はない……建物の構造物に魔法を仕込むことができたから、そう難しくはなかった』
「でも会場の外では難しい、というわけか」
『大気中に術式を固定する、というのは強力な霊具がないと難しいからな……とはいえ、やることは明確になったな』
「ああ、とにかく魔物を倒す……シンプルでいい」
語る間にもユキトは魔物を一体倒す。
「カイ、そっちは任せる」
『わかった』
「誰か帯同する人間を連れていくか?」
『いや、会場内は安全だし、外側でさらなる動きがあるかもしれない……僕一人で探す。ユキト達は外で魔物を殲滅したら来て欲しい』
「わかった」
――会場内にどうやって入るのか、という点については尋ねなかった。魔法を用いればいくらでも方法があるためだ。
そしてカイは動き始める。ユキトは彼の気配が動き始めたのを確認すると、魔物を倒すペースを速める。
上空からはなおも魔物が飛来してくる。ユキトは仲間達と共にそれを迎撃しながら、邪竜の次の一手を読むべく思考する。
(これで終わり……か? いや、会場を狙う攻撃であるなら、他にも何か手が――)
そう呟きつつ、邪竜の目的は何なのかを思考する。単純に魔物という存在を世間に周知させる――にしても、この方法はどこか回りくどい。魔物の存在を認識させるなら、もっと手っ取り早い方法があるはずだ。
(エリカ達へ攻撃を仕掛けたのと繋がっているはず……だけど、その意図は……)
なおも魔物を倒しながら、ユキトはひたすら思考し続けた。




