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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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成功の条件

 ――そして、メイが所属するアイドルグループのライブ当日となった。ユキト達は可能な限りの準備を済ませ、いかなる状況でも対応できるよう、態勢を整えた。

 エリカとミナについては、ライブに参加させるという形となった。二人は町にいてくれた方が良いのは事実だったが、最終的にはエリカ達の判断に任せた――これは、カイの意向だ。


「二人がいることで悪い方向に事態が傾く可能性はある……けれど、二人の自由にさせてあげたい」


 その主張にユキト達は同意し、エリカ達はライブ会場へと入った。

 会場周辺は公園や街路樹が存在し、民家や店舗などは少し距離がある。そのため人払いをする必要性は少なく、ユキト達もその点については楽ができた。


「……さて」


 カイが呟く。ユキトは彼の隣で遊歩道からライブ会場を見据える。

 まだライブは始まっておらず、現在はお客さんがどんどんと会場入りしている状況。アイドルのライブであるため男性の比率が多いが――老若男女、色々と人が散見される。


「……すごいな」


 ユキトは人の流れを見て呟く。するとカイは、


「ああ、メイが……いや、メイが所属するグループと、それを支える人が頑張った結果だ」

「ネットで調べたんだけど、この場所はライブの聖地であり、ここを目標にしているアーティストやグループが多いらしい。俺は音楽とかあんまり触れてこなかったから最初ピンと来てなかったけど……」

「ここでライブをすれば、成功する……だからこそ、色んな人が目標にする」

「この真下に霊脈があるらしいけど、それと関係あるんだよな?」

「……霊脈というのは、地上の干渉によって多少なりとも流れが変化する。河川が変化するのと一緒でね」


 と、カイは語り始める。


「もちろん霊脈という大河、その流れを余すところなく変えることは人の手では不可能だ。けれど例えば、地上で熱狂することによって地底に影響を及ぼし、霊脈の一部が地上に昇ってくるということは考えられる……実際、僕らが召喚された異世界で同様の現象を観測したことがある」

「同様の現象?」

「メイは異世界でライブをしただろ? それによって魔力が活性化して人々に高揚感を与えた……霊脈の上でやると、地底から魔力がせり上がってくるんだ」

「それと同様のことが起こる……と」

「異世界とこの世界とで魔力の性質にどれだけ違いがあるのか不明だけれど、何かに吸い寄せられるみたいな性質は同じらしいね。でなければ魔物も生まれないし」

「つまり……魔力によって高揚感を生み出し、それが成功に繋がると?」


 ユキトの問い掛けにカイは少し間を置いた。


「少し、違うかな。高揚感によってアーティスト側と観客側の間に一体感が生まれる。それによって人々は最高のライブだったと口にして、評判を呼ぶ。その結果、ネットやメディアで取り上げられるようになり、露出が増えていく……といった流れかな」

「魔力が直接的に影響を及ぼすのではなく、感情を揺さぶると」

「そうだ。実際、ここでやって必ず成功するというわけでもない。僕も色々調べたけど、ここでライブをやって一年経たずして解散したバンドとかあるしね……ただ、そういう人達には絶対とは言わないけど共通点もあった」

「共通点?」


 聞き返したユキトに対しカイは、


「ここでライブをしたはいいけれど、あんまり盛り上がらなかったとか……さすがに会場運営が良くなかったり、ライブ前にアーティストが何かの要因で炎上したり……そういうことがあれば当然、観客も覚めてしまうしお客さんも入らない」

「なるほど、そういう結果ライブ自体が成功しなかったら魔力も地上に昇ってこない……と」

「そうだね」

「つまり、ここでライブをやるだけじゃなくて、大成功させないといけないわけだ」


 ユキトはそう述べると、改めて会場を見回す。


「なら絶対……ここは守らないといけないな」

「ああ。現時点で異常はなし。このまま何事もなければいいけれど」

「……ここまで近くに来て、ライブを見れないのもなんだか悲しいよな」


 作戦に参加したメンバーの大半は外。一方で会場内を完全に無防備にするわけにはいかないため、仲間の幾人かが入り込んでいる。お客さんに紛れてという形であるため、そうした仲間はライブを楽しむこともできるが――


「アユミなんかは中に入るけど、さすがにこの現状だとライブは楽しめないかな、とぼやいていたよ」

「メイの友人である彼女としては不本意かもしれないけどね……ここは申し訳ないけれど、我慢してもらうしかないな」


 会場に多数の人が入り、次第にその流れが弱まっていく。いよいよ会場が埋まりライブが始まるタイミングが迫っている。


「……そろそろ魔法を使う」


 ここでカイは述べた。


「チケットを持っていない人はお帰り願おう」

「人払いの魔法か……周囲が無人になれば守りやすいからな」


 ユキトが応じる間にカイは仲間へ電話を掛け――やがて、ユキトは魔法が発動した魔力を感じ取った。


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