魔物の狙い
「魔物の気配……もしかして、メイ達に反応しているのか?」
そう呟いた時、気配がメイ達が去った方向へ進んでいくのを確信する。
「まずい……! 結界を構成しているけど、今の状態ではすり抜けられる!」
かといってメイ達を呼び戻すことは――そう思っていた時、ユキトの視界に人影が映った。
「ユキト!」
メイだった。ミナ達はおらず、何かしら理由をつけて彼女だけ戻ってきたらしい。
「魔物の気配は――」
「感じられるか? どうやら、何かに反応して動いている。そして形を成していないから、結界をすり抜けてしまう」
そう端的に説明した矢先、魔物の気配はまだ動く。
「くっ……! 何が狙いだ?」
「方向的には……ミナ達が向かった先だけど」
「公園の外へ出るよう指示したんだよな?」
「うん。そうだけど――」
魔物の気配が動く。しかもそれは明確な意思を持っているかのように、ユキト達から遠ざかろうとする。
「俺やメイが狙いじゃないのか……! しかもこれは――」
「ミナやエリカが……?」
ユキトは周辺の地図を頭の中から引き出す。ミナ達が進んだ先はまだ公園の敷地内。結界の範囲内に留まっているが、それを抜け出すのも時間の問題だった。
一方で他の人達は続々と公園の外へ出ている――そして魔物は確実にミナ達へ向け進んでいる。
(どうして彼女達が……いや、考察している暇はない。今はこの状況を打開しないと!)
「とにかく、向かおう」
ユキトは発言と共に移動を開始する。それに追随する形でメイも動き出し、隣を歩く。
「メイ、ミナ達に――」
「事情を説明はしてもいいと思うよ。二人がすぐに理解するかはわからないけど」
それは当然だ。目の当たりにしたって、どういうことかと驚き事実を受け入れるのは難しいだろうとユキトは思う。
「だが、この状況であれば話をしないと」
「それは私がやるよ……でも、一つ問題がある」
メイはユキトを見据えながら続ける。
「ユキト、魔物を倒したらミナとエリカから記憶を消そうとするよね?」
「……彼女達は一般人である以上、そこは当然の処置だと思うんだが」
「うん、無関係な人を巻き込むわけにはいかないから、そういう処置をするのは仕方がないという面はある……でも、今回は事情が違う」
それは何か――ユキトも理解できる。彼女達が狙われている可能性があるためだ。
「もし彼女達を狙っているのだとしたら……これが単なる魔物であったなら、何か魔物自身思うところがあって二人をターゲットにしている、ということで話が終わる」
「しかし今回は、挙動が普通の魔物と違う……つまり、人為的なものだ」
「だとすると犯人は意図的に二人を……犯人を見つけ出さないと根本的な解決は図れない」
「もし、魔法や魔力に関する記憶を二人から消すとしても、それは主犯格の誰かが捕まってからではないと、まずいという話か」
「うん」
メイの指摘にユキトは「そうだな」と頷いた。
――彼女達が狙われているのだとしたら、間違いなき邪竜一派の仕業だろう。なぜこんなことをするのか首を傾げるが、そこは疑いようがない。
ならばなぜ、二人を狙うのか――それを解明しない限り、この場で魔物を倒しても以降狙われ続ける危険性が高い。
「でもどうして、二人が……」
「邪竜の一派が狙っているとしたら、俺達のことをどこかで監視している可能性がある」
ユキトの言葉にメイは押し黙る。
「なおかつ、監視をしている人間はまだ力を持っていないんだろう」
「……ユキトだったらずっと監視されていたら気付くんじゃ?」
「俺はおそらくわかるよ。人の視線の動きとか、背中越しに人の気配を察することができるから。でも、俺のことを監視するのは露見する危険などを考えて避けるだろう……俺以外の誰か。ミナやエリカが狙われるのであれば、カイもしくは交流のあるメイが監視されているか」
「もし私なら、今は気付けない」
彼女はまだ魔力を抑える処置を行っている。
「それに、私の周囲にはたくさんの人が動き回っている……」
「芸能界なんて特殊な場所だからそんな所に邪竜一派が入り込めるか微妙ではあるけど……考察はここまでにしておこう。まずはこの状況を脱しないと」
「カイたちへの連絡は?」
「スマホが通じない。魔法による連絡もできなかった」
「妨害しているってこと?」
「そうだ。俺も連絡魔法は妨害を弾く機能なんて持たせていないからな……ただ、組織にいる仲間は俺が結界を張ったことはわかったはずだ」
「応援が来るのが先か、魔物が暴れ回るのが先か……」
メイはそう呟きつつも、どんな風になるのかは予想がついている様子。
ユキトもまたそれは同じ――魔物はカイ達が応援に来るより先に、動き出す。
「ディル、いつでも動ける態勢に」
『もうやってるよ』
返答を受け、ユキトは「頼む」と一言添える。そしてミナとエリカの姿を発見し――ユキトとメイは、彼女達へ近づいた。




