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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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調査の日

 結局メイに対するフォロー案は思いつくことなく、カイに言われた仕事をやる日を迎える。休日、ユキトは動きやすい格好で家を出た。


『単独で動くなんて久しぶりじゃない?』


 歩いていると、頭の中でディルの声が響いてくる。


「ああ、組織として活動することが多くなっているからな」

『魔物と交戦する機会はあるかな?』

「魔力を採取する場所は町中とかだから、戦闘に入るようなことはないと思うけど……」


 ユキトは応じつつ、スマホをポケットから取りだした。


「カイに連絡しておこう」


 電話を掛ける。二回目のコールで相手は出た。


『ユキト?』

「今家を出た。調査に入るよ」

『わかった。僕は今日組織の方にいるから、何かあれば動くことにするよ』

「あくまで調査だし、大丈夫だとは思うけどな……トラブルがあれば連絡する。あと、終了時も報告する」

『うん、頼む』


 通話を切る。そしてユキトは歩き始める。


「一ヶ所目は公園だ。歩いて行ける距離だから、このまま行こう」

『魔法とかは使わない?』

「散歩がてら、ということでいいだろ……あ、それとディルと相談したいことがある」

『私に?』


 問い返すディルに対しユキトは「ああ」と応じつつ、周囲に目を向ける。


 近所周辺には散歩をするご老人であったり、休日だからかどこかへ出かけようとする家族の姿も見受けられる。また車も時折走っており、ユキトがディルと会話をする際に気をつけないと怪しまれる可能性がある。

 ブツブツと独り言を呟いているくらいに思われるのが関の山なので、眉をひそめられるにしろなんだこいつと警戒される可能性は低いのだが――ともあれ、ユキトとしてはわずかな可能性も排除したかった。


「……鍛錬そのものは順調に進んでいる。組織のメンバーについても順調さだし、成果は上がらないけど邪竜の捜索も続けられている」

『うん、着々と迎え撃つ準備はできつつあるね』

「そうした中で最悪な想定……カイも考慮しているとは思うけど、一番まずいのは世間に魔法という存在が露見すること」

『魔物は基本映像なんかには映らないけど、例外はあるし実際に邪竜側は動画を出した』

「カイとしては既に映像にも残る魔物が生み出されていてもおかしくない、と考えている。で、だ。魔物という存在が世間に出回ってしまったらどうなるか」

『警察とかに任せよう、なんて思わないかな?』

「政府としては知っていたという体で応じればなぜ言わなかったのかと問題になる。知らない、という場合は俺達組織の人員は表向きは関係のない組織として扱われる」

『どちらにしても面倒か』

「この辺りは政治の世界だから、俺達がどうこうできる話じゃない……そしてもし大規模な戦いになれば当然、俺達が戦う」

『ユキト達が矢面に立たされる、と』

「その対策自体はカイなんかがやっているみたいだし心配はしていないけど……大きくその後の人生が激変するのは間違いないな」

『で、私と相談したいことは何? 今までの話だったら、カイと相談した方がいいと思うけど』

「今一度情報の整理をしておきたかったんだ……俺なりにできることを考えた結果、ディルを使う戦闘においてさらに選択肢を増やしておくべきだろうと」

『今以上に?』

「敵はどういうやり方で攻撃を仕掛けてくるかわからない。場合によっては、多くの人を守りながら戦う必要性が出てくる」

『今の状態では不十分ってこと?』


 ――ユキトの能力は全盛期を比べれば劣っていることは確かだが、それでもこの世界において最強なのは疑う余地もない。


「あらゆることを想定して……となったら、今でも足りないと俺は思ってる」

『だとしても……何かしら方針を決めないと、まずいんじゃない? 闇雲にやっても意味はなさそうだし』

「わかっている。だからこそ、ディルが現時点で持っている能力を考慮して、相談したい」

『カイとかスイハには……』

「まだその段階じゃないな。現時点でやれること……リュシールがいない以上は『神降ろし』だって不完全なままだ。それを以前のように使う、というのは難しいにしても近づけることはやっていきたいが、それ以外」

『なんだか要求が増えていくなあ』

「仕方がないだろ。組織の規模は大きくなり、仲間も強くなっているけど……時間が経てば経つほど、敵の策略だって狡猾になっていくはずだ。それを考慮すれば、少しでも選択肢を増やしたい」

『わかった。とりあえず今日の調査中に色々考えて提案すればいいんだね?』

「ああ、頼むよ……もちろん、現時点で出せないというのも一つの解答だけど、今日ぐらいはひたすら考えてみてくれ」

『はーい』


 返事と共にユキトは歩調を速める。そして公園へと辿り着き――作業を開始したのだった。


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