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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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ショッピングモールの中で

 最初にエリカとの会話を済ませたせいか、ユキトとしては以降心の中が軽くなり、会話を楽しみながら過ごすことができた。

 買い物から始まっていくつか存在する美術館の一つを回り、これまでこのメンバーで遊んだかのような雰囲気で時間は過ぎていく。やがてミナとエリカの二人も打ち解け、昼の段階で今回の顔合わせは大成功だと断定して良かった。


「これで、解決とは言いがたいけど」


 ショッピングモール内、メイ達女性陣が雑貨屋を回っている時、カイはユキトへそう述べた。


「以前よりもエリカが僕と接してくれたら……いいかなあ……」

「話せていなかったのか?」


 と、問い掛けて当然だろうとユキトは思う。組織のことで動き回っていたのだ。顔をつきあわせて話をする機会もほとんどなかっただろう。


「色々と話を持ちかけるタイミングはあったんだけどね。エリカの方も忙しいからと遠慮がちに僕から距離をとったりしていたから」

「なるほど……カイとしては不満だったと」

「僕としては気にしていないんだけどね……忙しいのは事実だけど、プライベートなことも大切にしたいし、もっと接してくれて良かったのだけど」

「……組織のことを考えると、カイの負担を減らしていく方向へ進みたいな」


 ユキトが述べるとカイは「そうだね」と同意しつつ、


「ただ今は、さすがに無理だ。まだまだ足りない物が多すぎるから……とはいえ負担という意味ではユキトの方が大きいよ。組織運営のことはなんとかなるけど、邪竜に対抗できるだけの戦力……それを考えると、ユキトがどうしても矢面に立つことになるから」

「戦闘面については本当にどうしようもないからな……仲間達が異世界で戦っていた時と同じように、なんてさすがに無茶だから」


 そう言いつつ、ユキトは軽くのびをする。


「ま、少しずつ進んでいくしかないか……と、カイ。これからどうするんだ?」

「親交は深まったようだし、もう少しモールを見て回りつつ、昼食でもとって……かな? ユキトもそれでいいかい?」

「ああ、構わないけど――」


 ふと、ユキトは視線を周囲へ向けた。ショッピングモールには様々な人が歩いている。洋服店に入ろうとするカップル、はしゃぎ回る子供とそれに追随する母親、中学生らしき複数人の男子が喋りながらどこかへ走り去っていく光景――そうした中、車椅子を引く白髪の男性の姿が目に入った。車椅子に乗るのは女性。


(……色んな人がいるんだな)


 改めてユキトはそんなことを思う。同時、カイへ再び視線を向けた。


「女性陣次第で、解散時刻は変わりそうだな」

「今日メイがオフなこともあるし、夜までいくかもね」

「そうなっても付き合う気ではいるけど……メイは大丈夫かな?」

「ま、そこは彼女の判断に任せよう」


 その時、ユキトとカイを呼ぶ声が。それにカイが応じ、ユキト達はメイ達がいる場所へと歩き始めた。



 * * *



「――確認できましたね」


 車椅子に乗る女性、ミリアは淡々とした口調で呟く。背後にいる白髪の男性は無言に徹し、彼女はただ独り言のように呟き続ける。


「この距離でも気付かれずに接近することができた……特にユキト、という人物とカイという人物に気付かれていないことで、隠蔽は十分だと判断できますね」

「――もっとも」


 と、ミリアの背後から声。彼女が視線を転じると、仲間の一人――フォナがいた。普段はスーツ姿のキャリアウーマンといった風体だが、今日はパンツルックのスタイルでイメージを崩すことなく様になっている。


「これ以上力を得れば、相手も気づくでしょう」

「ええ、そう思います……相手に露見しない程度に力を付与する。リュオ様の判断は的確のようです」


 そう声を漏らしたミリアは、どこまでもユキト達を観察し続ける。一方で彼らがミリアやフォナの姿に注目することはない。


「あの場にいる方々の調査も完了しました。ユキト、カイ、そしてメイ……この三人が力を持っている」

「まさかメイちゃんが戦士とは、ね」


 フォナが言う。それでミリアは、


「おや、知っているのですか?」

「若い子達の間では人気沸騰中のアイドルよ」

「そうなのですか……ふむ、もしかするとそちら方面から仕掛けるのか。それとも、力を持たない言わば部外者に干渉をするのか」

「……私は次の作戦について聞いていないのだけれど、彼らを狙うの?」

「そのようです。リュオ様にはどうやら思惑がある様子」

「ユキトという人物こそ、最強の存在でしょう? そんな彼が出てくるかもしれないというのは、非常にリスクが高そうだけれど」

「無論、考慮はしているようですよ。むしろあえて、とのことです」

「危険は承知で、ユキトという人物に攻撃を仕掛けるわけか……どうなるか読めないわね」

「私もです」


 そう返答したミリアの表情は、笑っていた。


「だからこそ、リュオ様が描く作戦に期待している……フォナさんも楽しみましょう。次の戦いは、本当に面白くなるはずですから――」


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