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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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魔物発見

 ユキト達は地下街へと入る。そこを歩く人々の姿は様々。家に帰るため黙々と無表情で歩を進めるサラリーマンや、クレープを片手に談笑しながら歩く女子高校生二人組。さらに、どういう経緯で何をするのか、大きなリュックを背負った男性――歩く人々全てに人生があり、彼らは周囲の人と交わることはなく、ただ自分の目的を果たすため地下街を歩んでいる。


 そうした中でユキトは気配を探る。魔物の気配は地上よりも明らかに濃くなっているのは確かだが、まだ位置については不明瞭だ。


「……なあ、カイ」


 ユキトは気配を探りながらカイへ問い掛ける。


「魔物は自然発生したものか、それとも誰かの手によって生み出されたものか……どう考えている?」

「現状ではどちらも可能性がある。もし邪竜によって生まれたものであるなら、最悪の可能性もある」


 それは何か――と尋ねようとする前にカイは話し始めた。


「組織が索敵に関するネットワークを構築したのはつい最近だ。もし邪竜が他の場所にも魔物を密かに生みだし行動させていたら……」

「似たように魔物がいる場所がたくさんあるかもしれない、と」

「現状、ネットワークにより引っ掛かったのはここのみだけれど……最悪の可能性は考慮しておいた方がいいだろう」


 カイの表情は厳しいものであったが、瞳は邪竜を必ず倒すという気概が存在していた。


「索敵範囲も色々と考えなければいけないだろうね」

「課題は山積みだな」

「でも、魔物を発見した当初と比べれば状況は雲泥の差だ……組織もきちんと動いているし、仲間もいる。警戒すべきだし、気を引き締める必要はあるけれど、悲観的になる必要はないさ」


 カイがそこまで述べた時、ユキトは魔物の気配を捉えることに成功した。カイへそのことを伝えると、速やかに現地へ向かおうと進言する。

 そしてユキト達が辿り着いたのは、地下街において数々の道が交差する大きな広場。人々の往来はさらに増し、色々な人達が通りを行き交っている。


「ここだな」


 ユキトはそう述べたのだが――周囲を見回しても魔物らしき存在はどこにもない。


「隠れているのか?」

「その可能性は高そうだ」

「それとカイ、気配を探った感じだとまだ他にもいるぞ。距離もある」

「その場所は捕捉できているかい?」

「地下街にいるのは間違いないが……」


 ユキトは目を凝らす。立ち止まっているが、広場の端にいれば誰も気に留める人はいない。精々「この広場を待ち合わせ場所にしている一団」にしか感じられないだろう。

 そして気配を探る内にユキトは疑問に感じる。


「……俺の能力でもすぐに探し出せない魔物、となると普通じゃないな」

「そうだね。邪竜から何かしら能力を付与されたか、あるいはこの世界の魔力によって特殊能力を得たのか……」


 カイが推測を述べていると、スイハもまた言及する。


「ユキト。隠れている、ってことは何か目的があるのかな?」

「どうだろうな……まあこんな所にいて人間観察をしています、とは思わないが……自然発生した魔物なら誰彼構わず襲っているだろうけど、今回の魔物は違う。目的がある、と捉えてもよさそうで――」


 ユキトはそこで、ようやく魔物を視界に捉えることに成功した。発する魔力は明らかに普通とは違う――


「……カイ、あれだ。でも同時にもう一つ疑問が生まれるぞ」


 視線の先は広場の隅。人々が行き交い場所で、一匹のネズミが存在していた。


「ネズミが魔物……なのは違和感ないけど、あんな小さいものから発する魔力を観測できたのか?」

「……なるほど」


 疑問を呈したユキトに対し、カイは合点がいったような声を上げた。


「ユキト、結構面倒事になりそうだよ」

「……どういうことだ?」

「観測したのは大きな魔力だった。でも実物は小さなネズミ……もちろんあの魔物の魔力だけを観測したわけじゃないけれど……たぶん、同様の姿をした魔物が多数存在していて、それを観測したんじゃないかな」


 カイの発言を受け、ユキトは険しい顔をする。


「なるほど、一体の魔物ではなく群れを成している魔物か……上手く捕捉できなかったのも頷ける。集結すれば巨大な魔力の塊になるけど、バラバラになったら捕捉が難しい」

「むしろ、あの気配を辿ってここまで来たユキトを称賛すべきかな」

「いや、別に褒めなくてもいいけど……カイ、どうするんだ? 人を呼ぶか?」

「その前に一つ確認だ。ユキト、あの魔物を倒す場合どうする?」


 微動だにしないネズミを見据えつつ、ユキトはカイへ応える。


「そうだな……小さい魔物である以上、剣でどうにかするというのは難しいな。もちろんディルを一瞬だけ出して魔物だけ斬る、みたいなことはできるぞ。誰かが動画を撮っていていようが、監視カメラに映ろうが魔法で上手く隠蔽はできる」

「なら、まずはそれを実行に移してみてくれないか?」


 カイに言われ、ユキトは小さく頷く。そしてネズミの魔物へ向け、歩を進めた。


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