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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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盤石の布陣

 カイの要請を受けてユキトは組織へと赴く。スイハに魔物が出現したと伝えると彼女も行くと表明し、二人で向かうこととなった。

 本当ならばタカオミなども行こうかと言ったらしいのだが、カイは「誰かと一緒に来るなら少人数で」との指示だったため、連絡まで待機するということに。


(厄介な場所、と言っている以上は戦力を集中させるのではなく、分散させて動けるようにしておくべきという判断か)


 ユキトはそう結論を出しつつ会議室へ入る。そこにはカイとツカサが待っていた。


「二人とも、ありがとう」


 カイはまず礼を述べる。ユキトはそれに頷きつつ、


「それで状況は?」

「まだ魔物は動いていない……可能であれば早急に対応したい」

「ここには四人しかいないが……カイ、他の仲間は?」

「連絡はして、各々待機してもらっている」


 やはりか、とユキトは自分の推測が当たっているのを理解する。


「わかった……それで魔物の居場所は?」

「町中だ」


 言いながらカイは机の上――地図へ目を向けた。

 その地図はユキト達が暮らす町の物ではなく、もっと広い範囲をカバーした――複数の県なども範囲に含められた物。


「場所はここ」


 そう述べるとユキト達は険しい顔をした。そこは――ユキト達が暮らす町からは離れている、俗に都市圏と呼ばれる領域だった。


「わかっていると思うけど、ここから電車で一時間ほどの距離だ。今回は町中に組織が間借りした建物があるから、そこへ転移してもらう」

「間借りした建物って……」

「都市圏にはそういう施設があるんだってさ。どういう用途なのかは僕も詳しく聞いていないけれど、現在急ピッチで準備を進めているから、あと少しだけ待って欲しい」


 そう述べた後、カイは詳細について語り出す。


「魔物の出現については、構築している索敵ネットワークに引っ掛かった。ただ、具体的にどこにいるのか、そして見た目などについてはわからないことも多い。さすがに組織の人員を向かわせて確認するわけにもいかないし」

「現地へ飛んで確認するということだな」

「その通りだ。問題は魔物がいたとしてどう倒すかだけど」

「そこは現場判断しかないだろうな」


 ユキトはそう応じつつ、腕を組む。


「場所が場所だから、町に人を残しておきたいという意図は理解したよ。で、四人で向かうのか?」

「ツカサは組織で転移魔法を使う役割がある。そしてこちら側に人がいることで、転移魔法で往復もできる」

「なるほど、転移役か」

「戦闘に参加できず申し訳ないが」


 ツカサはそう述べつつ、カイへ視線を向けた。


「連絡は魔法で行うんだな?」

「ああ。この距離なら通信機器を使うよりも魔力通信の方がロスもなくやりとりできる」

「なら俺は索敵による魔物の観測を続けながら、逐一連絡を行う」

「わかった。連絡手段は霊具を介した魔法だから、常に魔法を維持して状況が変わってもすぐ対応できるようにする」


 頷くユキトとスイハ。今回赴くのはカイを含め三人だが――組織における最精鋭。ある意味盤石の布陣ではある。

「ユキト、スイハ、準備ができ次第出発する。ひとまず組織内で待機を頼むよ」


 話し合いは終了し、ユキトは会議室を出た。そこから建物内にある自販機でジュースを買い、飲み始める。


「ユキト」


 そうした中でスイハが近寄ってくる。


「今回は人通りが多いところで戦闘するかもしれない、ってことだよね?」

「ああ。カイとしてはたぶん、誰にも気取られないよう魔物を倒したいという思惑があるだろうな」

「できるのかな?」

「魔物がどういう形でいるのかわからない以上、なんとも言えないが……現時点で明確な被害が出ていないことを踏まえると、魔物も警戒はしているだろう。例えば道のど真ん中とか、そういう所で戦闘という可能性は低いと思う」


 ただ――と、ユキトは付け加える。時間は放課後だが、まだ日も沈んでいない。そして魔物がいるのは都市圏なのだが、


「……大都市クラスになると、どんな路地でも人はいるからな」

「そっか。私達が暮らす町だと人気の無い所は多いけど……」

「公園ですら真夜中とかじゃない限り人がいるように思う。魔物と戦闘……となったらどうしたって誰かに見られる。そういう状況を防ぐには、戦闘に入ることなく……つまり、魔物を一瞬で撃破する迅速さが必要だ」

「今までの戦いとは違うね」

「まあな。でも、現時点で俺を含め今回転移する三人にはそれが可能だと思う」

「私も?」


 問い返すスイハにユキトは深々と頷いた。


「ああ、今まで行った修行の成果を出せば、いけるんじゃないかと」

「不安はあるけど……やれるだけやってみる」

「ああ、頼りにしているから」


 そう述べた後、ユキトは一気にジュースを飲み干し、カイの声がした。


「二人とも、準備ができた」

「わかった」


 ユキトが応じると二人して歩き出した。


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