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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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後継者

 視線を向けられたカイの友人――ミナは、一瞬目を丸くした後、


「あの……?」

「ああ、すまないミナ」


 まずはカイが彼女へ近寄り謝罪。


「さて……要望についてなんだけど」

「はい」


 カイは視線をメイへと向ける。今は魔法を使っているため、誰の目にも彼女が人気のアイドルだとは気付かない。だが、


「――どうも」


 メイが挨拶をした。その瞬間、彼女は魔法を解く。


 とはいえ、その魔法があくまでミナを対象として解除したことにユキトは気付く。幻術の範囲を一部分だけ除外する、といった特性なのだろうと察せられたし、またそうした高度な魔法は、本来は霊具がなければ難しかったはずだが――メイ自身、組織の一員として活動していく上で必要だと悟ったのだろう。これについては、間違いなく彼女の努力の賜物だった。


 そして――声を掛けた相手がメイだと気付いたミナは、口を手で覆って驚いた。


「あ……え、っと……!?」

「どう? 私はいざとなればオーラを消して世間に溶け込むことができるんだよ」


 それで説明つくのか、とユキトは思ったがミナ自身はそれを真実として受け取った様子だった。


「それで、カイからおおよそのあらましは聞いたけど」

「あ、はい。その、私の名前は――」


 しどろもどろになりながらミナはメイへと話をする。そこでユキトはカイと共に一歩退きつつ、


「なあカイ、彼女はその……ご令嬢、ってことだよな?」

「世間一般で言われるご令嬢という概念は人それぞれだと思うけれど、大体そんな感じで合っていると思うよ」


 カイは答えると、どこか遠い目をしながらミナを見据えた。


「ユキトは、僕の生い立ちとか知っているよね?」

「異世界へ召喚されて以降、雑談の体で色々と聞いたな」

「両親の仕事関係で交流することが多かったと話していたけど、最初の出会いはそれこそミナの両親がすり寄ってきたと言っても良かった」

「あんまり良い言い回しじゃないな」

「そうだね。文字通り……それこそ、僕の父に命じられれば靴を舐めそうな感じだったよ」


 ユキトはその発言に驚きつつも、彼の視線がどこか鋭いものになっていることに気付く。


「僕の父は……それこそ、厳格であり僕は父の言葉に従い生きてきた。幸いながら、僕には色んなことをこなせるだけの器量があった。だから要求をちゃんと叶えたし、周りも僕を父の後継者として認めるようになった」

「……カイは、後継者であることを望んでいないのか?」

「僕自身、そういうものだと教育は受けてきた。まあ、反発することもあったよ。中学なんかは特に酷かったし、周り全てが敵だなんて認識をしたこともあった。僕ではなく、僕の父に興味がある人間ばかりだろうと」


 そう述べた後、カイは小さく。


「――だからこそ、僕は支配に……」

「カイ?」

「ああ、ごめん。そうした中で、それこそ全身から棘を出して人を避けるようにしてきた僕を最後まで見捨てなかった……僕という存在を見てくれた人が二人。一人はユキトも知っている僕の幼馴染みであり、もう一人がミナだ。今の僕が穏やかに過ごせているのは、彼女の存在が大きい」

「恩人なんだな」

「そうだね……出会いは正直、最悪に近かった。ご両親の態度からして、ミナと僕の関係性を利用して父に取り入ろうとしたというのが、丸わかりだったからね。でも、ミナは純粋に僕を友人としてみてくれた。だからこそ、無茶な要求くらいは叶えてあげたいと思ってさ」

「だから今日、こういうことになったと……」


 ここでユキトは、カイが好いていた幼馴染みのことが気になった。


「僕の話をするかい?」


 そしてカイもまたそれに勘づいて問い掛けてきた。


「……心を読まないでくれよ」

「気になるのは当然だと思うけれど……結論から言えば、顔を合わせて告白した」


 想わぬ発言にユキトは驚く。


「一気に進展したな……」

「顔を合わせた際、もう二度とないかもしれないと考えたし、必死だったんだ」

「結果、どうだった?」

「断られたりはしなかったよ。彼女も僕のことが好きだと言ってくれた……が、僕と住む世界が違いすぎることを気にしてた。だから、まずはそんなこと関係ないと主張するところから始めようと頑張ってる」

「なるほど、な……でも、大きく進展しているんだな」

「障害は多いけれどね。取り入ってくる人のこともそうだし、何より彼女に影響が及ばないよう配慮しなくてはいけないし」

「……思った以上に長い戦いになりそうだな」


 ユキトは自分が原因の一端であるため、少しばかり申し訳ない気持ちになったが、カイは微笑し、


「ユキトは気にしなくていいから……ひとまず、卒業までにはなんとかしたい」

「そういえば、進路とかどうするんだ?」

「僕は決まっているよ。彼女の方は……悩んでいるし、僕と同じ大学へ行きたいみたいだけど」

「カイの基準で考えると、彼女は相当大変だろうけど……」

「僕が勉強を教えると言っているんだけどね」


 それでも大変だろう――と、ユキトは思った。


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