特別な存在
数日後、今後の方針がまとまったということでユキトは、カイと話し合ったことについて学校にてスイハとタカオミへ伝える。場所は中庭。昼食後に三人揃って外へ出て、スイハがベンチに座る中で報告を行った。
「……私達にできることは?」
内容を吟味した後にスイハが問い掛けると、ユキトは二人へ視線を流し、
「タカオミの方はイズミが持つ霊具作成に関する技能……それについて知っておいて欲しい」
「うん、問題ないと思う」
「スイハの方は、他の仲間達と一緒に鍛錬して……今以上の戦力アップかな。やることが多岐に渡るけど、何より重要なのは戦力強化だ。霊具を作成しているけど、根本的に個人の能力が高くあった方がいいからさ」
ユキトの言葉にスイハは頷き、
「それと平行して記憶を戻していくってことだね……人員が増えれば増えるほど、さらに多くの霊具が必要になっていくけど」
「イズミの方もそこは想定していると思う。現段階では検証などをする必要があるから時間が掛かっているけど、いずれ短時間で作れるようにはなるはずだ」
「そっか……それで私の霊具は――」
「カイも言っていたけど、聖剣所持者としての力を持っている存在である以上は、相応の武器が必要だと」
スイハは沈黙する。彼女が何を言いたいのかユキトは理解する。
相応の武器がいる――それは逆に言ってしまえば、それだけの力を所持する以上は組織としても重要な立ち位置にいるということに他ならない。
「僕の方はどうだ?」
そこでタカオミも問い掛ける。
「持っていた霊具のことを考えると、戦闘面でも期待されていそうだけど」
「そこについてはまだわからないな。ただ確実に言えるのは、カイの頭の中では聖剣を持つ人間とそれ以外とで分けているみたいだ」
「それだけ聖剣というのは特別だと?」
「そうだな」
ユキトは頷くと、過去の戦い――カイが聖剣を用いて奮戦した光景を思い出しながら、
「……俺はディルを通してこの世界にいる人間のことを調べたことがある」
無言となるスイハ達に対し、ユキトは語る。
「俺達が召喚された世界と比べ、この世界に住む人々は先天的に魔力が高い傾向にあるようだ……元々、地球に存在する魔力が多い。それを背景にして、魔力を抱える生物が多い、ということらしい」
「つまり、霊具を使いこなすことができる人間が多いと」
口を開いたのはスイハだ。
「魔力的に才能を持っている人がたくさんいるってことだね」
「そうだ。でなければクラスメイト全員が霊具を持つなんて状況にはなっていない……ただ、そうした中においても聖剣……あの霊具を使いこなせるだけの人間というのは、極めて少なかった」
そこまで語るとユキトは肩をすくめる。
「まあ聖剣は相性の問題もあるから、カイと同等の魔力を持つ人間だから聖剣を持てる、というわけではないんだが……ただ異世界と比べて資格を持つ人間は多いだろう」
「カイと私……とても近くに二人はいたわけだし、世界中には結構いるのかな?」
「正直、そこは微妙だと思う」
ユキトは腕組みをしながらスイハへ答える。
「他の場所にも聖剣を持つに足る人間がいてもおかしくないと考えるところだけど……霊脈がこの町にはあるだろ? そういう影響もあって、偶然二人いたと考えた方がいい」
「……霊脈というのは、世界にそう多くはないの?」
「霊脈といっても種類がある。霊脈周辺に影響をもたらすものもあれば、逆もある。確かに地球規模で見れば霊脈はとても多いけど、人間に影響を与えているケース、というのは極めて少ないようだ」
「その内の一つがここだったと」
「そういうこと……スイハ、組織として活動していく以上は今後は今まで以上に大変かもしれないけど」
「大丈夫」
スイハは応じた。ユキトはそれでこれ以上語る必要はないと判断する。
「わかった、ならこの話はこれで終わりだ……続報を待っていてくれ」
「うん」
「タカオミの方も頼む。霊具を作成については今日明日の話じゃない。イズミの方の作業が一段落したら、ということみたいだから気長に待っていてくれ」
「わかった……他の仲間達には何か言っておくかい?」
「いや、現時点では特に……もし戦闘面について不安とか疑問があったら、遠慮無く言ってくれ」
ユキトはその言葉を残して二人から離れた。ふと振り返ると話し合いを始めるスイハとタカオミの姿があった。
それを少しの間見た後、ユキトは校舎に入る。そして教室へ戻る間に一つ考える。
「問題は俺だな……ディルとの連携をさらに強化して『神降ろし』を今以上に扱えるようにしないと……」
『やることは多そうだね』
ディルがふいに口を開き、ユキトは「そうだな」と答えた。
「ま、今は組織として動いている。心配はしていないよ」
『いやあ、記憶を戻してからユキトは生き生きとしているね』
「……そう言われると複雑な心境だけど」
ユキトはそう答えつつも、充足感があるのは胸中で認めるほかなかった。
(とはいえ、敵は邪竜だ。気を緩めることは絶対にないように……)
自らを戒めるようにユキトは心の内で呟きながら、廊下を歩き続けた。




