急務
「――カイとスイハの、武器?」
作戦終了後、ユキトは組織の建物に戻り報告を済ませ、ほとんどのメンバーが帰った段階で、カイと話を始めた。ちなみにシオリが取得した記録については、今後検証していくとのこと。
「ああ、僕とスイハ……聖剣を持つに値するだけの力を持っている以上、相応の武器を用意すべきだと思ってね」
「イズミにお願いしたのか?」
「話を向けたけどね。でも聖剣は天神が作り上げた武器だ。あれほどの霊具を作れるほどの技術は、当然ながらない」
断言に対しユキトは頷く。
「なら、どうするんだ?」
「聖剣の強さは使っていた経験からすると、単純に保有する魔力量が高いからだけじゃない。その特性は天神の魔力を保有している……その点にが大きかった」
「魔力の質が根本的に違うということか」
「うん、そうだね」
「聖剣を再現するのも無理ってことだな。そもそもこの世界に天神の力なんてものはないわけだし……なら、カイやスイハが扱う武器として良い物は――」
「単純に魔力量が大きい物、とかかな」
カイの言葉に対しユキトは首を傾げる。
「どういうことだ?」
「質で強力な武具を作成するのは、現段階ではできない……けれど、魔力を可能な限り多くして強固にすることはできる」
「なるほど、霊具の魔力量を大きくすればそれだけ制御は難しくなるけど、聖剣を使った経験のあるカイやスイハならば問題なく扱えると」
「そうだね」
「ならそういう方針で二人の武器を作成する……結構時間は掛かりそうだな」
「イズミの他に霊具を作成できる人間が必要かな?」
「誰かの記憶を蘇らせるのか?」
「それも良いけれど、今いるメンバーの誰かを選定するのでもいい……ユキト達側で一人、霊具を調整できる人間がいると望ましいかな」
「それならたぶん、タカオミになるかな。彼は『空皇の杖』を所持していたから」
「であれば、彼が適任だろうね」
カイは納得した声を上げつつ、今後のことを語り出す。
「もう少し段取りをよくして記憶を戻す人間を増やしていこう。それと平行して霊具も作成していくが、それをちゃんと使える物にするためにはもう少し時間が掛かりそうだ」
「先は長そうだな」
「そうだね。けれど、想定しているよりは短い時間だと思うよ」
「問題はその間に敵が動くかどうか……カイはどう思う?」
「邪竜としては、ここまで色々な実験をしてきただろう。魔物の特性の検証や、召喚魔法の起動による効果。さらに言えば、魔物の遠隔指揮……町に出現した魔物については、おそらく生み出していた魔物が好き勝手に活動していたのだと思う」
「これまで実験を幾重にもやってきた……が、次こそ本格的に動くか?」
「邪竜は僕らが異世界で戦っていた時、明確な目論見があった。この世界で行っていたことも全て意味があると考えると……いよいよかもしれないね」
つまり、戦力強化は急務――ユキトが胸中で呟く間に、カイは口元に手を当てつつ、
「ただ魔物を一斉に出現させてどうにか、という可能性は低いだろう」
「それは……何故だ?」
「魔物は受肉しなければ映像記録などに映ることはない……そして、大規模な召喚魔法を起動した際に肉体を伴って魔物を生み出せたわけだけど、あれだけの規模の魔法を使うとなったら相当な準備がいるはずだ。けど、僕らが警戒している以上はもうあんな仕込みはさせない」
強い口調と共に言ったカイの表情は、とても勇ましかった。
「ただ邪竜もそこはわかっているはずだ。僕らは確実に戦力が強化されている以上、下手に動けば看破される可能性が高いと考えているはず」
「邪竜は狡猾だし、今回魔物を動かしたことで現在の戦力事情についても把握はしているはずだからな」
「そう。よって、今後はこれまでとは異なる動きを見せてくる可能性が高い」
「……相手が何をしてくるのか分からない状況だが、備えられるのか?」
ユキトの問い掛けにカイは難しい表情を示しながら、
「備えなければならない、だろうね」
「……そうだな」
ユキトは小さく息をついた。今後、厳しい戦いが待ち受けると容易に想像できるためだ。
「ただ、戦力強化は急務だし、敵がどこでどういう動きをしても対応できるよう準備はしておく」
そしてカイは再び語り出す。
「特に転移魔法の構築によってあらゆる場所へ行けるようにすること……移動手段は必要だね」
「今後、俺達のいる町以外の場所でも騒動が起きると?」
「敵が持っている可能性の高いアドバンテージとしては、大地に存在する霊脈……その場所を把握しているかもしれないことだ。僕らは今から調査しなければならないけれど、この世界にやってきて時間が経過し、支援者すらいる邪竜は霊脈のことだって調べているだろう」
「なるほど、その霊脈を利用して魔物を……か」
「その可能性を考慮して準備を進めていく……同時にいくつものことをやる必要はあるけれど、組織もしっかり動いている。そう心配はしていないし、過度に恐れる必要はないさ――」




