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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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欠けた何か

 メイと会話をした後、やがて仲間達が集まり――それと共に組織の職員もまた顔を出して、交流会は始まった。司会はメイ。ここでも彼女が前に出るのかと、ユキトは先ほど会話をしたはずなのに、心配となってくる。


 けれど、彼女が前に出ることで空気が和やかになるのもまた事実。カイ達とスイハ達との間には多少なりとも壁が存在していたし、職員とユキト達との間にもそれなりに壁があったはず――なのだが、メイが笑いながら話を始めるとそうした空気が一変する。


 ここはさすがアイドルだとユキトは自覚し、先ほど考えていたことを押し込める。ただ、


(記憶……思い出せないのはどういうことだ?)


 その点について引っかかりを覚え、ユキトは内にいるディルへ問い掛ける。


「なあディル……メイの言ったことはわかるか?」

『あー……』


 と、ややディルは言葉を濁した。


『正直、その辺りについてはわざと語らなかったんだよね』

「知っているのか?」

『うんまあ。私はほら、ユキトの内面とかも見れるし……その、この世界へ来てからメイに関して言及がないなー、とか思っていたから戦いの結果とか、あるいはこの世界へ帰ってきたことで忘れてしまったのかなと』

「……何が原因か、はっきりとしたことは言えないか」

『たぶんリュシールと融合したことによる反動だと思うよ。私は再召喚されてその技法を知ったし、その経緯はよく知らなかったけど……大きな戦いだったわけで、何かあるんだなと思っていたよ』


 ユキトは沈黙する。その詳細を聞こうとしたのだが、ディルが先んじて発言した。


『メイが話したがらない以上、私が語る資格はないかなあ』

「……それもそうだな。本人が嫌がることをするのは俺としても不本意だ」


 とはいえ、この話は放置することはできないとユキトは心の中で断じる。場合によってはリュシールなしとはいえ『神降ろし』の技法を使う必要に迫られるかもしれないのだ。それを踏まえれば、リスクなどについてはきちんと把握しておくべきだった。


「……カイと相談するか」

『ま、何かあったらすぐに言いなよ』


 ディルもまたフォローを入れる。


『たぶんいち早く対処できるのは私だから』

「……そうだな」


 ユキトが同意した時、メイの向上が終わって交流が始まった。職員と話をする仲間や、カイやメイと談笑する人物――色々な人が入り混じる中で、ユキトはメイに話し掛けられた。


「というわけで、私の役目は終わりかな」

「お疲れ、メイ……ここまで段取りするの、本当に大変だっただろう」

「ま、気分転換にはなったし」

「……アイドル活動の?」

「そうそう」

「華やかな世界だけど、色々と大変……いや、そういう世界だからこそ、か」

「活気がある業界だけど、たくさん人がいる以上は色々と……ね」

「メイも内に抱えていそうだな……その、大丈夫なのか?」

「私は今の立場に満足してるよ。それに、本気で嫌だったらとっくに逃げ出してる」

「そっか……」


 ユキトが沈黙すると、メイは苦笑する。


「そんなに思い詰めなくてもいいのに」

「ごめん……なんというか、さっきの会話のこともあって課題は山積みだなと思って」

「……ユキトの方は大丈夫?」

「今から検証することになるけどまあ、突然倒れるようなことにはならないさ」


 そこで、カイが近寄ってきた。するとメイはその場を離れ今度はカイがユキトの相手をする。


「楽しんでいるかい?」

「まあ、それなりに」

「元々ユキトはこういうイベントが好きじゃなかったか」

「あんまり記憶には残っていないな。そもそも、人付き合いが良い方でもなかったし」


 そこまで言うとユキトは、周囲を見回した。


「それこそ、親友……と呼べる存在ができたのは、異世界へ召喚されてからだ」

「そうか……そう言ってもらえると嬉しいよ」

「カイが?」

「共に戦った仲間なんだ。当然だろう? 確かにあの記憶は凄惨な光景だってあるけれど、おそらく全員記憶が戻って良かったと思っているはずだ……それこそ、どれほど苛烈で、辛い記憶だったとしても、取り戻したいと考えたものだから」

「……そうか」


 ユキトはその言葉に小さく頷きつつ、


「カイ、こんな場で言うのもあれだけど、早々に言っておいた方がいいと思ったから言わせて欲しい」

「どうしたんだい?」


 ――先ほどメイと会話したことで判明した事実を説明。邪竜との決戦における記憶が、ということでカイは腕組みをした。


「十中八九『神降ろし』が原因だろうね」

「だよな、やっぱり」

「ただまあ、天神と融合して力を……という技法が、何のリスクもなくというのは考えにくいし、あの戦いにおいては仕方のないことだった、と割り切るしかないな」


 そう告げた後、カイは苦笑した。それに対しユキトは、


「どうした?」

「いや、その……実を言うと、メイにそのことについて相談されていたんだよね」


 思わぬ発言に、ユキトは目を丸くした。


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