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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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解決策

 魔物が現れた店舗の従業員は、その後営業を再開した。メイは「また魔物が出るのでは?」という疑問を呈したのだが、


「魔物は相当警戒している……俺達が反撃したことで敵は引っ込んだ。おそらく同じ店舗に出現することはないさ」


 記憶改変の魔法も使用しているため、彼らはトラブルがあって水が床にこぼれてしまったという程度に落ち着いている。問題ないと確認した後、メイのことを待っていたアユミの記憶を戻し――事情を説明した。


「なんだか騒動の渦中で記憶を戻したのは忍びないけど」

「ま、その辺りは別に構わないけど」


 アユミはさっぱりした口調で応じた後、彼女とメイはシオリの記憶を戻すべく動き出す。

 その間にユキトは一度カイ及びリュウヘイと合流した。


「カイ、メイ達はシオリの記憶を戻すのに動いた……で、それが戻り次第行動に移す」

「わかった……三人記憶を戻したわけだけど、すぐに動く必要性に迫られているな」

「スイハ達へ連絡しないと――」

「それはもうやったよ。こちらへ向かってくれるようだけど、その間に対策を立てないと」

「……今回の魔物は店の中に突如出現したことから、下水道内にいるのは間違いないよな」

「ああ、そこは確定だ」


 カイは首肯する。次いで彼は、


「問題は、どうやって戦うか……下水道へ侵入するのはかなり大変だ。そもそも、魔物と遭遇できるかもわからない」

「地上から索敵をして捕捉するしかないか?」

「うん、ただその場合はユキトに負担が掛かるよ」

「わかっているさ……それじゃあ一度魔法を使ってみる」


 ユキトはカイへ宣言しつつ、索敵魔法を使用。その範囲を地表や地中へと向け――ただ、


「ぐ……思った以上に難しいな」

「どういうことだい?」

「そもそも、大地そのものが魔力を発していることで見つけにくい……加え、魔法を使って気付いたけど、あくまで魔力を探知するだけだから地中がどうなっているのかという構造まではわからない。仮に魔物が見つかったとしても、魔力の動きから居場所はわかるにしても、どうやって魔物のいる場所へ向かう……そこについては、改めてやり方を考えないといけない」

「ふむ……」


 カイは口元に手を当てて何事か考え始めた。それに対しリュウヘイはユキトとカイの顔を交互に見比べ、


「なあユキト、一ついいか?」

「ああ」

「危険かもしれないが、地上へおびき出すとかいうのはどうだ? 地上にいたという痕跡はあったし、外に出ないわけじゃないだろ?」

「それも考えたけど……最大の問題は、どうすれば外へ出てくるのか。今回、突然店の中に出現したけど、偶発的なものだと思う。現在は不用意に地上に出れば攻撃される、と魔物側は警戒している可能性が高い」

「そうなると……持久戦になるな」

「とはいえ、そんな長期戦をするようなリソースはないぞ」


 ユキトはリュウヘイに答えながらため息をついた。


 実際、仲間は増え霊具の作成も進んでいる。先日スイハ達の実力を検証し、組織だって行動できることだって証明した。

 だが、今回のケースはそれを上回る難易度であることは間違いない。そもそもこれは、特殊作戦の部類だ。


「情報が圧倒的に不足している。それに、下水道を始めとした配管の構造などがわかったとしても、敵の位置を捕捉するだけでは到底おびき出せる材料には――」

「非常に困難なミッションなのは間違いないね」


 ユキトの言葉を遮るようにカイは告げる。


「それに、夜になればなお悪い要素がある」

「それは……?」

「夜を迎えれば、必然的に人の移動が発生するため、相応に水の使用なども変化する。それは繁華街も同じで……そうしたことによって魔物がどう反応するのかも不明だ」

「最悪、水の流れに乗ってどこか遠くに行く可能性も……」

「ゼロではないね。この周辺に魔物がいるのだとすれば、仕留めたいところだけど……」


 沈黙が生じる。予想以上に難しい戦いであるのを、ユキト達は再認識した。


「……なあ」


 そしてリュウヘイがカイへ尋ねる。


「シオリの記憶が戻って魔法が使えるようになったとして……今回の作戦に影響するのか?」

「それは微妙なところだね。場合によっては別の役割を――」


 と、言ったところでカイの動きが止まった。何か思いついたのかとユキトが口を開き書けた時、


「そうか……効果があるのかわからないけど、候補が浮かんだ」

「本当か?」

「うん、それにはアユミやシオリの協力が必要かもしれない」


 その言葉にユキトやリュウヘイは驚く。


「むしろ、今回記憶を戻したのがアユミ達で良かったと言えるのかも」

「カイ、それはどういう策だ?」


 ユキトが疑問を呈するが、カイは答えず視線を合わせ、


「まずは記憶を戻し、シオリの協力を得られるようにお願いしよう。彼女が手を貸してくれるのであれば……この騒動を解決できる可能性が高まると思う――」


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