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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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秘密組織

 春伏から報告を受けた十五分後、ユキト達は組織の建物を出て一目散に山へと向かった。その場所は麓に田畑が広がってはいるが、それを越えればひたすら木々が生い茂る深い森だ。普通ならばちゃんとした備えがなければ最悪遭難してしまう可能性さえある。


「確認だけど、装備はこのままで問題ない?」


 移動中、タカオミが尋ねてくる。その姿は訓練場にいた時と同様にトレーニングウェアだ。


「ああ、問題ないよ。戦場に出るにしては格好がつかないかもしれないけど」

「動きやすい格好だし、問題はないと思うけどね」

「実はユニフォームとか作った方がいいのかと考えたんだが」

「あ、それは良いかも」


 と、スイハはユキトの言葉に賛同する。


「魔法で衣服を作成するという方法もあるけど」

「それだと四六時中魔法を使うことになるし、人によっては負担も大きいからな」


 解説する間にユキト達は森へと入った。軽装ではあるのだが、全員問題なく動けている。その理由は、体にまとっている魔力だ。


「しかし、魔法ってのはすごいな」


 森の中を進みながら、ノブトが感想を述べる。


「ちょっと教えられた魔法を使って、何の問題もなく行動できるようになるんだから」


 ――組織の建物から出る前に、ユキトは仲間達に一つの魔法を教え込んだ。それは魔力をまとい身体能力を向上する方法。仲間が問題なく使用できるくらい簡易的なものだが、これによって寒い場所でも冷気を遮断し、疲労しにくくなる上に、さらに身体能力が向上――様々な効果を実現できた。


「とはいえ、油断はしないでくれよ」


 ユキトはノブトの感想に対し、そう告げて釘を刺した。


「これはあくまで身体強化の簡易版……戦闘する場合にはもっと魔力を引き出して戦わないとまずいからな」

「あくまで移動とか、寒さとかを弾くために使う魔法ってことだな」

「そうだ。この魔法が維持できていれば体力はなかなか減らないし、こうやって山に入っても問題なく動ける。ただ、過信はしないでくれ」

「了解、っと……お、魔物がいたぞ」


 ノブトが声を上げると全員が視線を注いだ。それは、鹿を模したような姿が特徴の個体だった。


「ああいった魔物が巣を作っているのか?」

「おそらくは。でも、その見た目は個々に違うはずだ」


 ユキトの言葉通り、別所に猪にも似た個体が姿を現した。


「魔力的には類似した反応だな……うん、自分達の縄張りを守るための見張り役といったところか」


 ユキトが考察をした時、タカオミが一つ発言をする。


「あの奥に巣がある?」

「それで間違いなさそうだ……よし、それじゃあ改めて作戦を説明する」


 ユキトは立ち止まり、魔物が警戒する中で仲間に話し始める。


「前線には俺とスイハ、そしてノブトの三人が出る。俺の方は魔物の動き方次第で立ち位置を変えるが、スイハ達は前線の維持を頼む」

「わかった」

「ああ」

「次に後衛。ここにはタカオミとカノの二人……ただ、カノの方はさすがに炎魔法は使えない」

「森の中だもんね。まして今は冬だし、乾燥しているからさらに危ない」

「熱波を放つくらいなら大丈夫だろうけど、山火事なんて起こったら洒落にならないからな……消火についても魔法ならできると思うけど、さすがにリスクは避けるべきだ。よって、カノは補助魔法などを使って援護を。使えるよな?」

「うん、私が持っていた霊具にはそうした魔法も多少あったし」

「なら、それで頼む……で、カノが魔法を使えない分、誰かが補助に回らないといけない。よって、そこはチアキに頼む」

「了解。魔物を風で弾き飛ばせばいい?」

「ああ、それで頼む……タカオミは魔物の動きに合わせて魔法で援護。できるか?」

「不安はあるけど、やってみる」

「よし、今回の作戦は魔物と魔物がいる巣の破壊……とはいえ、巣を見つけるのは至難かもしれない。地中に存在しているとしたら、山の中を歩き回る必要性だって出てくるかもしれない」

「長期戦ってこと?」


 口を開いたのはスイハ。ユキトはそれに首肯し、


「そうだ。とはいえさすがに夕方になったら引き上げるつもりだ。まずは地上にいる魔物を掃討して、次に巣の破壊……それをやってようやく、事態は解決する」

「問題は巣が一つなのかどうか、だね」

「その通り……まあ巣といっても魔物が勝手に生まれてくるわけじゃない。よって巣を破壊できなくても魔物さえ倒しきれば……ってことだけど、全てを見つけて倒せるかどうかも未知数だ」

「ま、やってみようじゃないか」


 ノブトが言う。ユキトはそれに頷きつつ、


「というわけで、早速ミッション開始だ」

「なんだか格好いいな」

「怪獣を相手に戦うヒーローものみたいか?」

「それもあるし……何より、秘密的な組織ということでテンションが上がる」


 ユキトはノブトの言葉を受けて苦笑する。確かに、現在ユキト達が所属しているのは、秘密組織である。


「あんまり浮かれないでくれよ……と、話が脱線した。戦闘中も俺は巣を探すため周囲の警戒はするけど、みんなも頼む。どれだけ能力が高くとも、一人だと見過ごしてしまう危険性もあるからな……では、戦闘を開始する――」

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