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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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特化型

 風の刃を受けた魔物は、空中で力をなくし墜落、消滅する。残る鷹の魔物は三体。その全てはチアキを捕捉して突撃をしようとしていた。

 今度は同時攻撃によって、なおかつチアキを包囲する形で攻め寄せようとする。それに対しチアキのとれる選択肢は二つ。大きく回避するか、それとも防御するか。


 魔物の攻撃については、その鋭さをチアキも認識しているはず。もし三体の攻撃を防ぐことができると確信しているのなら、その場で防御するはず――

 魔物達が同時に仕掛ける。それに対しチアキがとった行動は、風の塊を生み出したことだった。


(その場で防御か……)


 彼自身、確信を持った行動だったのか――それはわからないが、弾けるように突風が生まれ魔物の攻撃を、大きく鈍らせた。

 なおかつ、チアキは即座に反撃を開始する。鷹の魔物の動きを見極め、手をかざしまずは一体に風の刃を放った。動作は一瞬かつ、風を生み出すのも一瞬。攻撃する予兆をほとんど見せない彼の動きは、魔物にとっては厄介極まりない。


(いや、対人戦においても面倒だろうな……動きで予測することができない)


 元々彼が所持していた霊具を始め、魔力を練り上げ魔法を放つというタイプの霊具は、属性的に一種類しか使えないという欠点はあるが、その一種類で様々なことができるというのが特徴だった。チアキが持っていた霊具『風帝玉』は、突風はおろか竜巻すらも引き起こせるだけの能力を持っていた霊具で、風の系統に属する魔法であれば詠唱も予備動作も必要がない。


 だからこそ、チアキより前に所持していた人物――それは異世界にいる冒険者だったのだが、その特性は戦場で遺憾なく発揮し戦っていた。

 風をまとわせた武器というのもあり、それらと違いを見いだすことは難しいが、大きな特徴としては両手を自由にできる点だろう。武器を持たないことはデメリットにもなり得たが、『風帝玉』所持者はそれをちゃんと把握して使いこなしていた。


(チアキ……そしてカノの二人は、魔法による支援が可能……もっとも、それぞれ役割は違うか)


 ユキトは次に戦うカノについて思いを馳せつつ戦いを見守る――彼が放った風の刃は正確に魔物を穿ち、二体目の魔物を撃破した。残るは二体だが、それらは一度引き下がって体勢を立て直した。

 突進が通用しない場合、鷹の魔物にはさらなる攻撃を行うよう仕込んでいるが――魔物の動きに変化が生まれる。直後、今度はチアキが先んじて動き始めた。


 右手をかざし風の刃を放つ。それは魔物が新たな行動を移そうとした魔物に機先を制した形。直後、刃が魔物に直撃して三体目も撃破。

 残った一体だが、こうなってしまうと楽勝だった。チアキはなおも飛び回る魔物へ向け風を放った。高速で飛行しているため、捉えること自体本来は難しいはずだが――風はまるで魔物を追尾するように捉え、とうとう撃破することに成功した。


「……うん、問題ないな」


 消滅を確認した後、ユキトは口を開いた。


「チアキは風を十分使いこなせているな……霊具の記憶が残っているため、だよな?」

「そうだね。ひとまず、問題はなさそう?」

「チアキは状況に応じて前衛、後衛どちらに回ってもらうか考えてもらうけど……その調子ならどちらでもいけそうだな」

「風、という能力から上手いこといけば相手に気取られないように攻撃するとかできるかもしれないな」


 これはタカオミの言だった。ユキトはそれに首肯し、


「魔法を使う時に魔力は漏れるけど、それを秘匿する手段があれば、密かに攻撃などできそうだな」

「実際それはやるのか?」

「いや、特に考えていないよ。そもそも諜報活動とかは政府関係に任せるつもりだし」


 単独行動などは、さすがにユキトも考慮していない――いくら魔力を自由自在に扱えるといっても、そうした活動は社会的に支障をきたす場合がある。


「うん、チアキも問題はない……最後はカノだな」

「わかった」


 そしてカノが進み出る。チアキが後方に引き下がった後、ユキトは剣をかざそうとして、


「……その前に、これもやっておくか」


 ユキトはそう呟くと剣を振るのではなく、片膝をついて左手を床に当てた。直後、ユキトとカノを囲うように結界が生まれる。それはディルの力を用いた強固なもの。少々暴れても、問題はないはずの強度を持つ。


「カノの魔法は火炎系だからな。念のため警戒しておかないと……それに、カノだって周囲に被害が出る可能性を考えると、全力で戦えないだろ?」

「うん」


 カノが告げた後、ユキトは今度こそ剣を振った。それによって生み出されたのは、スイハが戦ったような大型の魔物一体。外見は、ミノタウロス――牛の頭部を持った、巨大な魔物であった。

 武器は持たず素手ではあるが、もし拳を受ければひとたまりもないだろうと予想できるくらいには、魔力がみなぎっている。


「ずいぶんと大きいね」

「これまでの訓練風景を見る限り、攻撃力だけを言えばスイハに次ぐくらいだ。タカオミは万能型で、カノは特化型といったところかな」

「霊具による影響が大きいのかな?」

「ああ、それは間違いない……さて、この大きな魔物相手にカノはどうする?」


 問い掛けに彼女は構え――同時、魔物が咆哮を上げ戦闘態勢へと入った。


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