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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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邪竜達の動向

 ――竜が出現した騒動から、邪竜の配下であるヒロは潜伏し、取り立てて活動はしていなかった。それは他ならぬ主からの指示であり、ようやく命令が来たと思ったら作戦会議をするという話になった。


「さて、ようやく私は体を得た……次の段階に移ろう」


 そう主は語る――ヒロの目の前には、今まで声しか聞いた事がなかった男性が立っている。黒髪で現在はスーツ姿であり、容姿そのものはひどく地味で取り立てて特徴があるわけではない。

 だが、瞳に秘める眼光は異質な存在感を秘めている――最初に口を開いたのは、彼に一番近い場所にいる車椅子に座るミリアだった。


「確認ですが、なんとお呼びすればよろしいでしょう?」

「ああ、それについてだが……好きに呼べばいい、と言いたいところだがそれでは困るとのことだったからな。私のことはリュオと呼べ」

「リュオ?」

「私の世界に存在する神の名だ……といっても、人間基準で言えば悪しき神だが」

「わかりました……それでリュオ様、次はどのように?」

「ヒロにも語ったが、さらなる人員を集める……が、単純に数を増やしても意味はない」


 と、リュオは語った後――この場にいる者達を一瞥した。


 ヒロは自分が視線で射抜かれた時、緊張感が体を走った。それは間違いなく、他ならぬ主が魔力を通して自分のことを見定めているためだ。力を得たことにより、それがより顕著に伝わっている。

 他の者達も何かしら感じているようで、ヒロの横にいるオズは全身に力を入れた。なおかつ眼鏡の奥にある瞳は一瞬だけ大きく見開かれる。グロムなんかも白髪を揺らし、ただ唯一スーツ姿で背筋を伸ばすフォナだけは見た目的にさしたる反応はなかった。


(いや、内心で緊張しているな。演技が上手いってことか)


 ヒロは得た力を通し彼女もまた緊張していることを認識する。


「……それに、だ。この場における面々はこう思っているだろう。さらに人数を増やせば、自分達の分け前が減るのではないか? と」


 そのようなことは――と全員言葉には発しなかったが、雰囲気が部屋全体に伝わる。それはどうやらリュオも理解したようで、


「その辺りのことは、心配せずともいい……こうして肉体を得るまで支援した恩義については、きちんと考慮しよう……さて、この場における人員の力を借りれば、協力者を増やすことはさして難しくないと私は思っている。故にそう心配はしていない」


 そう語った直後、リュオは魔力を発露した。それはヒロを含めこの場にいる者達を震撼させるに十分なもの。


「この力を示せば、従う者は多いだろう。ただし問題は、秘匿しながらやる必要がある点だ」

「秘匿……」


 フォナが呟くと、リュオは深々と頷いた。


「現在、我らに対抗する勢力がいる。それも、私が元いた世界で相対していた者達だ。なおかつその一人は、限りなくその時の力を維持している」


 ここでリュオは再度ヒロ達を一瞥。


「全員、ヒロが撮影した動画は確認したな?」


 その質問に全員が首肯。竜というこの世界にとって想像上の生物を作成し、それがより強大な力を持つ存在によって滅ぼされた動画。


「竜を倒した存在こそ、力を維持している者……なおかつ、我が本体を直接倒した存在でもあるその力の大きさは、この私が一番よく知っている」

「あの人物が……」


 ヒロが呟いた矢先、リュオは資料を取り出してそれぞれに配る。そこに、当該の人物に関する詳細が書かれていた。


「さすがに細かいプロフィールについてはわからないが」

「セガミ、ユキト……」


 ミリアはそう呟いた後、リュオへ視線を向ける。


「彼についてはどう対処しますか?」

「現状、大がかりな仕掛けを使用した余波であの町は相当警戒されている。現在彼らの方も準備を進め、彼と仲間が暮らす場所の周辺は魔法により警戒が進んでいるはずだ。故に、手出しは無用だ。むしろ手を出せば、そこから確実に私達の喉元まで迫ってくる」

「彼についてわかれば、その親族などに干渉することも可能ですが……」

「社会的に傷を負わせると?」

「可能かどうかは調査しなければわかりませんが、あるいは……」


(怖えな)


 率直にヒロは思う。彼女の素性について詳しいことはほとんどわからないが、それができるだけの権力があるという話なのだろう。


「そうだとしても、手出しは無用だ」


 けれどリュオはそう答えた。


「現在の時点で政府系組織と関わりがある。もし迂闊に干渉すれば、そちらから調査の手が伸びる危険性がある」

「わかりました。では干渉しないことにします」

「そうだな……そして相手は間違いなく、霊具の作成に着手するだろう。仲間を増やし、かつ強力な武具を作成する。この世界の魔力は私がいた世界とは質は異なっているが、それでも彼らは技術で作り出せるはずだ」

「武器。それを得れば私達はさらに不利となりますね」

「とはいえ、彼ら自身も不特定多数の人間に渡すなどと考えているわけではないはずだ。今回の騒動で、彼らは魔法の秘匿という点について特に重要視していることがわかった。よって、武具を作成してもそれが政府系組織の人員などの手に渡ることはない。魔法という概念を知られないようにするには、身内だけで対処するのが一番だからな」

「付けいる隙は、そこですね」


 何かを理解したようにミリアが言うと、リュオは深々と頷いた。


「いかにも、彼らはさらに仲間に頼り戦力強化に乗り出すだろう。同時に、私に手を貸す人間のことを調べ始めるはずだ。とはいえ、平行してやるのと集中してやるのとでは大違いだ。まず彼らは先に霊具の作成などを優先するに違いない。その間に、こちらは仕込みを行う」

「上手くいくでしょうか」

「ここでしくじれば、相手の強化を見逃したという話になる。仕損じることはすなわち、死だ」


 絶対に成功させろ――そういう意図をヒロは感じ取る。


「ヒロ、お前はひとまず待機だ。面が割れている以上は、行動を控えろ」

「……俺の顔つきから、見つかる可能性もあるか?」

「ゼロではない。敵としては今までこちらの攻撃に対し応じていたため調査の余裕はなかったはずだが、これからどうなるかはわからん。あるいは魔力によって探知される危険性もある」

「現在いる場所が危険ならば、こちらでフォローしますが」


 ミリアが続く。そこでヒロは小さく息をつき、


「ま……どちらにせよヤバいとは感じていたんだ。遠慮なく、頼らせてもらうか」


 そう呟き、ヒロは自分の処遇について告げた――


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