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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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彼女の出番

 その後、一時間ほどでユキト達は魔物の掃討に成功した。


「気配はなくなったな……霊脈が干渉を受けた影響なら、これで終わりだと思うが」

「経過観察は必要だけど、ひとまず大丈夫だとは思う」


 カイはそう説明しつつ、握っていた魔法の剣を消した。


「魔力が多量に存在している世界で今まで発生していなかった……霊脈に干渉されなければ、同様の事例は生まれないだろう」

「ならいいけど……さて、調査は終わったけどこれからどうする?」

「後はこの場所に転移魔法陣を設置しようか」

「使えるのか?」

「いや、この地点で使用することはできない。僕らが住む町に魔法で常時起動している魔法陣は作成したんだけど、そこからここへは転移できるようにする」

「もし何かあれば……ってわけだな。戻るのが大変だけど」

「そこは霊具の作成さえできれば、どうにか……といったところだね。それで、山の中で魔力が多い場所を見つけたいところだけど」

「俺が案内する」


 ユキトが先導する形でさらに山の中を進み――やがて、頂上付近の一角へ辿り着いた。


「うん、この辺りは魔力が濃いな」

「それじゃあここに魔法陣の起点を作成する。メイ、手伝ってくれ」

「了解」

「……こういうことをやるなら、ツカサも呼ぶべきだったか?」

「ツカサには別のことをやってもらっているからね」


 ここにはいないツカサもまた、何かしら仕事をやっているらしい。


 やがてカイ達は作業を終える。目に見えて変化は何もないが、ユキトは目を凝らせば地面に刻まれた魔法陣を感じ取ることができた。


「これで目標は達成か……後は帰るだけだな」

「うん、ただその前に食事でもどうだい? 僕の奢りで」

「いいのか?」

「私は行くよ」


 メイが応じる。それでユキトも、


「なら、俺も」

「それじゃあ駅周辺まで戻ることにしようか」


 今度はカイが先導する形で歩き出す。そこでユキトは、彼の背中へ向け質問を飛ばした。


「今後の方針については決まったけど……人数が多くなればそれだけ組織をまとめるのが大変になる。カイならば問題ないと思うけど……」

「政府側にも説明は必要だしね」


 と、カイはわかっているという風にユキトへ応じる。


「人を増やすことについては、敵がやったことを踏まえると政府側も素直に頷くはずだ。ただ、あまりに多くなると……」

「最悪反発が起きる可能性がある?」

「そこまで心配はしていないけどね。基本的に僕らは従順にしているから」

「トラブルが起きたら……」

「そこは僕に任せてくれ」


 カイの言葉にユキトとメイは頷く――結局彼に頼ってばかりだが、


(こういう状況も少しずつ改善していかないといけないかな……)


「私の出番はどこまであるかな?」


 と、ふいにメイが口を開いた。出番――というのは、アイドルとしてのことだろう。


「多くの人に魔法の危険性を訴えるには、私みたいにそれなりに顔が知られている人が必要だけど……」

「正直、難しい部分だとは思っている」


 カイは複雑な顔を見せつつメイへと応じる。


「メイが広報のような役割を担うことは、魔法という存在が知られたらおそらく確定するとは思う」

「公になるまでは出番なしと」

「そうだね。組織は秘匿しておくのだから、むしろ普段の活動に対し支障が出ないようにしなければならない……そしてもし、魔法のことが表に出てしまったら……ただ、ここで問題が生じる」


 と、カイは一度メイへと視線を投げた。


「メイ自身魔法が使える以上、それを示せば興味の対象になってしまうからね」

「場合によっては魔法を使いたいという意見が出てしまうと」

「うん、だからメイが公の立場に立って……という場合は、相当注意を払う必要がある。場合によっては手法なども考える必要があるね」

「魔法の危険性だけを説いても意味はないよね」

「それは間違いない。ただメイ、もし矢面に立つ必要性が出てきたら……それは間違いなく、大層面倒な状況であることを覚悟しておいて欲しい」

「それはわかるし、私は大丈夫」

「ありがとう。もしもの事態に備えて色んなプランを策定してもらうよう政府には言ってある。さすがに僕らだけでは想定しきれない事態というのはいくらでも出てきてしまうし、人がいる政府側の方が策定できるだろうし」

「広報については、政府側に任せた方がいいだろうな」


 ユキトがそう言及するとカイは小さく頷く。


「そういうこと……僕らは霊具の作成などを進め、敵を発見し倒せるだけの力を得ることに注力すればいい……ひとまず一ヶ月くらいかな」

「一ヶ月か……」


 短期間であるのは間違いない。その間に幾人も記憶を戻し、訓練を続け――


「残る問題は敵の居所についてだけど、これもイズミが開発する霊具で発見できるかもしれない」

「邪竜由来の力だから、それを探す霊具を作ればいいってことか」

「そうだね。それができなくとも、魔力などの揺らぎによって敵が何か行動を起こしていることを察知できる道具などを作成できれば」

「霊具があれば、戦術はいくらでも増える……と、カイ。そのことで一つ疑問が」

「どうしたんだい?」

「邪竜は人間に力を与えているけれど、邪竜が似たように霊具に近しい物を作成する可能性は?」

「ゼロとは言えないけれど、魔神の魔力は生物に宿る性質があるから……」


 そこまで言ってカイの口は止まった。


「いや、魔力の性質が変わっている以上、それを邪竜が利用するなら、可能性も考慮しておく必要性はあるな……」

「邪竜もまた物質に力を宿すことができる?」

「邪竜自身ではなく、力を与えた人が……という可能性もある。この辺りについては考慮する必要性がありそうだ」


 カイはそこまで述べると、一度ユキト達へ向き直る。


「だったら、なおさら霊具の作成などは早急に行う必要がありそうだ」

「同時にこの世界にある魔力も検証しないといけないな」

「やることは多数……だけど、記憶を戻すことで人員が増えれば一気に進展する。ユキト、少しの間動き回る必要性があるけど――」

「俺は一向に構わないさ」


 応じるユキトにカイは深々と頷き、


「それじゃあ、すぐにスケジュールを立てよう。最低限必要な人員の記憶を戻し……邪竜との戦いを円滑に進めていくことにする――」


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