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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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二人の戦い

 カイが今まさに踏み込もうとした段階でユキトは魔物の姿をしっかりと捉えた。獅子や虎くらいの大きさで四本の足によって立つ魔物。耳の形状などから野犬などをベースに生まれたようで、色は漆黒。うなり声を上げてユキト達を威嚇している。

 その力の大きさは異世界に召喚された時に遭遇した魔物の比べれば弱いと断言できるが、カイとメイの二人は霊具を持っていないため、単純な能力だけでは戦いがどう転ぶかわからない。


(カイについては問題ないと思うが……)


 以前剣を交わした光景を思い出す。聖剣を通して得た剣術については体の中に染みこんでいるようで、魔法で剣を生み出せる以上は現時点でユキトやスイハと共に主戦力を担えるだけの力を有しているのは間違いない。


(ただ、その能力をこの世界の魔物相手にちゃんと機能するかどうか)


 魔力の質が違う――ユキトはそれでもディルの力によって何の問題もなく敵を倒すことができている。


(その性質の違いがどこまで戦いに変化を与えるのか……)


 スイハは問題なかったが、特にメイは大丈夫なのか――

 先陣を切ったのはカイ。魔法により剣を生み出して最短距離で魔物へと仕掛ける。それによって相手も反応。オオ――と、一声発した後に突撃を開始した。


 真正面から激突すれば、カイであっても衝撃が体に響くはず。結界を行使して防ぐにしても、多少なりともリスクはある――


「ふっ!」


 カイは魔物の激突する寸前に動きを変えた。体をわずかに傾け切り返すことによって、魔物の横をすり抜けるように動く。

 魔物の攻撃は止まらず、両者はすれ違う形となるが、カイはそこで胴体へ向け一閃した。横からの斬撃は魔物の体をしかと抉り、うめき声をもたらす。剣戟によって魔物の勢いは完全に喪失し、動きを大きく鈍らせた。


 そこに、後方にいたメイの追撃が入った。両手を正面にかざし、生み出されたのは光弾。それが真っ直ぐ放たれ、魔物の頭部に直撃。それによって魔物は崩れ落ち、消滅した。


「うん、上々だね」


 メイが呟いた矢先、別所から新たな魔物が。戦闘の音を聞きつけたか、あるいは魔力を感じ取ったか。カイはそこで迷いなく魔物へ仕掛ける。それを追うようにメイとユキトが続き、カイは真正面から魔物と相対する。

 その動きは的確だった。魔物が突撃など攻撃的な行動を取るよりも先に、カイが間合いを詰めて剣を振った。体捌きは聖剣を所持していた時と比べれば遅いが、それでも魔物を前にして怯んだ様子などは見受けられず、ユキトの目から見て動きは完璧だった。


(邪竜がいるとして訓練をしていたにしろ、技術面については聖剣を所持していた時とほとんど変わらなくなったか……?)


 短期間でここまで仕上げてきたカイにユキトは内心で驚嘆する。とはいえ、残る魔力面については霊具を作成しなければ解決しないため、ここからは時間が掛かるだろうと予想できる。


(現時点でも、邪竜一派に対抗できるくらいの実力はあるはずだけど、さすがに霊具はあった方がいい。イズミの助力によってその辺りは変わってくるはずだけど――)


 ユキトが思考する間にも状況は変化する。さらに一体魔物を見つけるが、今度はメイが先に仕掛けた。

 生み出したのは十数本もの光の矢。それが一斉に放たれ、木々の間を縫って魔物へと迫る。それに対し魔物は回避行動に移るより早く直撃した。


 ガガガガ――形容するならそういう音。一気に突き刺さった光によって魔物は動きを完全に停止し、消滅する。


「うん、メイも問題なさそうだね」


 と、カイが告げるとメイは頷いた。


「魔力も十分……魔物のレベルがこのままなら、戦い続けても平気かな?」

「戦力になるのはありがたいけど、メイの本職は治療だからな……」


 と、ユキトは頭をかきつつ言及する。


「他に魔法を使える人間がいた方がいいよな……?」

「そこについても考慮しているよ」


 と、カイはユキトの言葉を受けて発言した。


「誰の記憶を戻すかについては……メイの友人であるシオリやアユミかな? と思っているよ。話も通しやすいし」

「ああ、それならまあ……アユミも霊具は弓だったし、遠距離攻撃要員が増えるのは良いな」

「ユキト、そちらの仲間についてはどうだい?」

「スイハとノブトが前衛で、カノとタカオミが後衛。チアキについては所持していた霊具の特性もあって臨機応変に……という形にしているけど」

「うん、それで問題はなさそうだね」

「いずれ全員の記憶を戻すにしても、スイハ達と上手く連携させたいよな……」

「それも考えたけれど、もう一つの可能性を考慮している」

「もう一つ……?」

「邪竜がどれだけ力を持っているにしろ、相手が活動し始めたのが今とあっては一度目の帰還の際に来たのは間違いないと思う」

「ああ、俺もそう思う」

「ならスイハ達の戦いぶりは、観測していないはずだ」

「……あえて連携させず、手の内を隠しておくってことか?」

「スイハについては既に動いているから敵に見咎められているとは思うけれど……いや、スイハ自身聖剣所持者であったことを踏まえると、これからの鍛錬次第で相手の意表を突けるような能力が生まれるかもしれないな」


 カイは何やら考え始める。ユキトとしてはスイハ達は別行動で――というのは多少なりとも危険性が増すのではと思ったが、


「……この辺りは敵の出方次第だから、あくまで可能性の一つとして考えてくれればいいよ」

「わかった……まあ人選とかについては俺がやるよりカイに託した方がいいのは間違いないからな。スイハ達の訓練方針については、変えなくてもいいな?」

「うん、それで問題ない……さて、ツカサやイズミと裏方に属する人をメインに記憶を戻してきたけど、それと平行して戦力となれる人も集めていこう。まずは、守りのリュウヘイかな」

「イズミの記憶を戻したし、それで良いかな」

「うん、今後敵の出方次第ではあるけど、時間との勝負になるから今まで以上に記憶を戻していくペースを早めていくつもりだ。ユキト、協力頼むよ」


 ユキトは頷き、メイも「協力する」と返答。それでカイは握りしめていた魔法の剣に目を向け、


「よし、それじゃあ残る魔物を倒して回ろうか。ユキト、捕捉できるかい?」

「ああ、確認できた。このまま真っ直ぐ――」


 そうしてユキト達は、森の中を進み続けたのだった。


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