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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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どんな相手でも

 リスクがあるのは間違いないが、ここから先の戦いで霊具が必要になっていくのは間違いない。


「……管理の方法については、色々と考えてはいる」


 カイは一連の発言を受けて自身の見解を述べた。


「政府側の人間に預けるというのも、現時点ではやるべきじゃないだろう」

「それは、政府にも敵がいる可能性が?」

「それもあるし、何より他者の手に渡ってしまうのは避けたいところだ……実を言うと、イズミの記憶を戻して霊具を作成する、ということも政府には言っていない」


 思わぬ発言だった。ユキトは内心で驚きつつ、


「つまり、霊具作成はこの場……いや、異世界へ召喚された人間の間だけで留めておくと?」

「そうだ。僕は政府系組織と話をする際に、召喚されたことについては語ったし、なおかつその影響で魔法という概念を得たと説明した。けれど、そこから先……霊具のことは語っていないし、それを作成できると話していない」

「政府側は、あくまで俺達の能力が高いという認識なのか」

「僕らが独自に霊具を作成できる手段を持っていると知ったら、政府側も僕らの扱いを変えてしまう可能性が高いだろうね」


 カイの発言に一同押し黙る。


「……まあ、リスクを承知で僕らは霊具を作成しようとしているわけだ。保管場所については、僕の家を始めとして、それぞれが所持するのが無難だろうね。ただし、もちろん他者には使えないように処置をするけど」

「霊具を作成すること自体、秘密ってわけか……」

「政府側には試行錯誤して色々と魔法を強化できたとか、あるいはこの世界の道具を利用して魔力を増幅できるようになったとか、そうした説明を施せばいい」

「……霊具には種類もあるけど」


 と、ここでイズミが発言する。


「魔力を増幅するタイプと、霊具そのものに魔力を内蔵するタイプ。向こうの世界にある強力な霊具は二つの合わせ技だったけど、今回はどうするの?」

「同じようにして欲しいけれど、まずは盗まれても敵に扱われる危険性が低い魔力増幅型から始めよう」

「それなら、まだ安全だね」


 イズミは納得の声を上げると、カイはさらに説明を加える。


「現段階では、魔力を増幅させる効果を持たせるだけで、僕ら以外に扱えないので、政府から目を付けられる危険性は低い……けど、注意はしておかなければいけない。そして本格的に魔力を内蔵させるような霊具を作成する際、秘匿する必要性がありそうだ」

「……どんな相手でも油断はできない、か」


 ユキトが小さく呟くと、もちろんとばかりにカイは頷いた。


「それは仕方がない話だ。この世には存在していない力……それを利用するべく動いているからね」

「政府側が懸念し始めたらどうするんだ?」

「いくつかプランは考えているけれど……」


 と、カイは腕組みをしながら、


「露見した状況に応じて、対応手段は考えていかないといけないな」

「……政府側としては、こうして密談しているのもやめて欲しいだろうな」

「そこは当然だろうけど、政府側の許可を待って動いていては遅いからね」


 と、カイはやれやれといった様子で語り始めた。


「先日の騒動も、下手すれば大惨事だったけれど、政府側としては悠長だったし」

「……悠長だったのか?」

「事の重大さが、魔法を使えない人としてはどうしたって理解するのが難しいという話だよ。実際、あれだけ広範囲に魔法を使っても感じることができないため、実感は薄くなる」

「そうか、俺達は魔力が感じ取れるしヤバいと考えるけど、政府側ではそうもいかないのか」

「かなり政治的に踏み込んだ話になるけど、今回の騒動で日本の軍事的なありようを変えるきっかけに……みたいに考えている人だっているらしい」

「政治的な利用か……」

「被害が大きくなればそんなことも言っていられないけどね……ユキト、一つ確認なんだけれど、この世界で魔力を行使し、それは異世界で同じように扱えたね?」

「ああ、そこは念入りに確かめたから間違いない」

「だとすると、結界なども強度も同じだね」

「当然そうだけど……何かあるのか?」

「例えば世界各地に魔物が出現したとして、軍隊の攻撃が通用すると思うかい?」


 問い掛けにユキトは沈黙する。


「……カイ、試したことがあるのか?」

「僕は召喚された際に、魔法や魔力の検証で色々と試したことがある。結論から言えば、魔力による攻撃や防御は魔力でしか成立しない。さらに言えば、強力な魔法攻撃は物理的な防御を容易くはね除ける……法則性で言えば、物理よりも魔法が上位にあった」

「それと同じ法則がこの世界に当てはまるとしたら……」

「魔物は魔力の塊だ。その法則性を踏まえると、軍隊の攻撃が通用しない可能性がある。もっとも、ダメージがゼロになるわけじゃない。少なくとも手傷を負わせることはできるけれど……」

「一体だけなら集中攻撃すれば勝てるが、既存の軍隊が通用しないほどの数が出現したら……」

「世界は大混乱になる。それだけではなく、数次第では国が滅ぶ危険性だってある」


 ――そこに至るまでには邪竜が相当な準備をしなければならない。だが、カイはその可能性すらも危惧している。


「……どのくらいの確率であり得ると思う?」

「邪竜のやり方によるけれど、恐怖による支配を行うとしたら、十分あり得る未来だと僕は考えている。だからこそ、拡大するより前に、今のタイミングで邪竜を倒さなければいけない」


 カイの言葉にユキト達は一斉に頷く。敵も少しずつ準備を進めている。そして表舞台に出てきた時には手遅れになる。だからこそ、今の段階で――


「よって、イズミの霊具作成能力が必要になる……敵の戦力を上回り、勝てるだけの力がいる」

「そこで私ってわけだね。わかった」

「私も可能な限り協力する」


 メイがイズミに続いて発言。それを受けてユキトは、


「俺も当然、そこに加わる……何かあったら、すぐに連絡してくれ」

「この中では一番ユキトの負担が大きくなるけれど」

「ディルを所持しているからな。全力で戦えるのは現時点で俺だけだ。俺の能力は知っているだろ? 遠慮なくこき使ってくれ」


 その言葉に――カイは「頼む」と一言告げた。


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