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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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最大の懸念

 翌日から、ユキトは早速行動を開始した。スイハを含めた仲間達へ今後何をするかを伝え、その日のうちに組織の訓練場に集合した。


「というわけで、簡単だけどメニューを作成させてもらった」


 体育の授業で使われるジャージに全員着替えて、全員が話をする。スイハ達は一様にユキトから受け取った資料を眺めている状況だ。


「前衛、後衛、状況に応じてどちらも……という三種を基にして鍛錬をしてもらう。俺とチアキは前衛後衛どちらも、スイハとノブトは前衛。そしてタカオミとカノが後衛って形になる。これは以前所持していた霊具のことを考慮した結果だ」


 スイハ達は一様に頷く。それと共にユキトはさらに解説を続ける。


「元々所持していた霊具に沿って鍛錬を始めれば、飲み込みも早くなる……加えて魔法は扱えるから、所持していた霊具に近しい攻撃方法を編み出せれば、それだけで一気に強くなれる」

「魔法で武具を生み出すってことだよな?」


 確認するようにノブトが問い掛けるとユキトは首肯した。


「その通り。スイハがやっているように――」


 と、言ったところで全員が手をかざし、その手に武具を生み出した。スイハは剣、ノブトは槍、タカオミは杖で、カノは短剣――と、異世界で手にした霊具を模した物ばかり。

 唯一、チアキだけは何も生み出していない。とはいえ彼が所持していた霊具は持っているだけで効果を発揮する水晶球。それを模して使う必要性がどこにもないからだ。


「全員、武器の作成については問題ないってことか……それじゃあ、それを使って鍛錬を始めようか」


 ユキトの言葉に従い、まずは全員の実力を確認する。以前カイ達と共に集合してから多少時間が経過しているため、改めてという形だ。

 その結果――ユキトの予想以上に、仲間達は鍛錬をしていることがわかった。さすがに霊具を所持していた時ほどの力はない。だが、手にしていたからこそ、その記憶はしかと体に刻み込まれ動けている。


(魔力を自在に扱えているのは間違いないな)


 異世界で鍛錬していたことはちゃんと体に残っている――この世界とでは扱いに苦労したはずだが、それでも経験を得ていたからこそ、ユキトの予想よりもずっと武器の扱いも、魔力の制御もちゃんとしていた。


「うん……基礎的なものは問題なさそうだ」


 だからユキトはそう明言する。これには仲間も嬉しそうだった。


「今の状態でも、魔物と戦えるとは思うけど、数が増えればさすがに面倒だろうな」

「どういう想定で鍛錬をしていく?」


 問い掛けたのはタカオミ。


「多数の魔物と戦う想定? それとも、ユキトが見つけた人間と戦う想定?」

「……次に人間と出会う時は、決戦になると思う。それに備えて……というのも一つではあるけど、まずは魔物と戦っても問題ないようにしておくところからスタートかな」

「動画にあった竜のように?」

「そうだな」


 頷いたユキトに対し、仲間達はゴクリと唾を飲む。


「ユキト、あの竜と戦う場合はどうすればいい?」


 さらにタカオミからの質問。それにユキトは一考し、


「……現状、俺以外だと火力が足らないかもしれない。竜ほどの大きさでも、倒すのに体を破壊し尽くす必要性はない。急所と思しき頭部もしくは心臓を狙い撃ちして、それを砕けるだけの力があればいい」

「問題はそれをどうやって実現するか」

「ディルが竜の能力がどの程度か、という分析をしてある。魔力で竜の皮膚の硬度を再現して、まずはそれを壊せるかどうか確かめてみようか。それと平行して、多数の魔物と戦っても大丈夫なように訓練を重ねる……加えて、連携するための戦術とか、より基礎的な部分……魔力と体の動かし方を連動させるための手法とか、やることは多いな」

「悩みはつきないな」


 と、タカオミは苦笑しながら言及する。


「優先順位を付けるべきだな」

「そうだな……なら、まずは魔物との戦いについてだな。特に竜のような存在……ああした存在を打倒するために、力がいる」


 ユキトの言葉にスイハは頷き――方針が決まる。


「それじゃあ、早速だけど始めるとしよう。放課後に集まっているし、とれる時間も少ないけど……あ、部活動とかあったら優先していいけど――」

「幸いなのかわからないけど、全員部活動他、放課後については柔軟に動ける」


 と、ノブトはユキトへ口を開いた。


「まあだからこそ、ユキトが大丈夫だと太鼓判を押すくらいに訓練できたわけだが」

「……なら、今日から毎日俺はここに来るから、来れそうならここで訓練しよう」

「そういうユキトは平気なの?」


 と、スイハが尋ねるとユキトは小さく肩をすくめた。


「特に問題はないよ。それに、ここに来ればカイとかもやってくるだろうし、組織の人とも情報交換はしないといけないからな」

「大変そうだけど」

「そんなに労力にはなっていないし、問題はないよ。あ、ただ一つだけ。親御さんとかには、怪しまれないように注意してくれ。友達を勉強しているとか、そういう理由をつけておいてくれよ」


 スイハ達はそれに頷き――改めて、鍛錬が始まった。






 その後、二時間ほど訓練をやって解散となった。初日に抱いたユキトの感想としては、思った以上に鍛錬が早く進みそうだということ。


「魔物と戦えるようになるのは、思ったよりも早まりそうだな」

『とはいえ、火力が最大の懸念か』


 ディルの言葉にユキトは小さく頷く――竜の硬度を模したものに仲間達が攻撃をした結果、現時点で傷をつけられるのがスイハだけだとわかった。

 スイハの力は明らかに他の仲間と比べても抜けている――聖剣所持者になれるほどの魔力を保有しているため当然だが、その膨大な魔力をきちんと制御している点も見逃せない。


「聖剣の意志は確かにスイハの体に備わっている……他の仲間は自分の魔力だけで魔物と戦うのに少し戸惑っている雰囲気だったけど、魔力制御具合を考えれば十分すぎる内容だ」

『ユキトの見立てとしては、戦力に加われるのはどのくらい?』

「一ヶ月……いや、それよりも早いかな。後は決戦に備えての準備は……まあ、俺の方で頑張ろうか」


 まずは『神降ろし』を今の力で十全に扱えるように――心の中でそう決意しつつ、ユキトは仲間達と共に訓練場を後にした。


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