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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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事の顛末

 ――翌日以降、ユキトは今回起こってしまった戦いの顛末を観察した。具体的には町に変化がないかどうか――つまり、魔物の存在が認知されているかどうかの確認だ。

 結果は数日経過してから判明し、戦いを知る人間は出てこなかった。これはカイ達の構築した魔法が問題なく発動、機能していたこと。そしてユキト達の対応がちゃんとうまくできたことを意味していた。


「……とりあえず、問題はなさそうだ」


 と、学校でスイハにユキトは連絡した。昼休み、状況報告を行うため、開放された屋上で話をしていた。

 風は強く、真冬の今では生徒が来ることはほとんどないのだが、だからこそ好都合で、景色を眺めながら話をすることに。


「魔物断続的に出現していたけど、噂にすらなっていない……山からの音に反応してSNSに投稿した人はいるけど、それも大した話題にはなっていないみたいだ」

「きちんと魔法が役目を果たしたってことか」

「今回の戦いで、俺達の魔法がちゃんとこの世界で通用することがわかった……俺達と邪竜の一派以外は、魔力を練り上げることすらできない現状では、普通の人々は魔力を多量に抱えていたとしても、抵抗力は皆無ってことだな」

「それは逆を言えば、敵も……」

「そうだ。敵が人々を操って何か行動を起こす可能性も否定はできない……けど、それをしたら当然足がつく。魔物が生み出しても直接的に人に危害を加えていない実情を考えると、人々をどうにかする可能性は低いと思う」

「もしそうした行動を起こしたら……」

「警察なんかも動き始めるし、政府側も俺達を支援して全力で動くことになる……人的な被害が出たら、そうするしかない……俺達としては絶対に避けたいわけだけど、そうなったケースも考慮して動く必要があるかもしれない」


 ユキトの言葉にスイハは表情を硬くする。


「敵は……そうすると思う?」

「現段階で、自分達の姿をさらす可能性のあることはやらないと思う。俺が男性と偶発的に出会った以外、敵は極力俺達の前どころか、誰にも見咎められないように動いている節がある。敵の目的が魔法や魔力という概念を公にすることだとしても、それはあくまで自分達が直接手を下すということではない……という話だな」

「絶対に自分達の素性がバレないように……」

「そういうことだ。俺が一度遭遇して、対処できなかったのが悔やまれるけど……同時にわかったこともある。カイとも話をしたけど……おそらく邪竜は、支援者か何かを使って、今回の騒動を引き起こした」

「協力者がいるってことだね」

「そうだ」


 ユキトは頷きつつ、考察を述べる。


「しかもそれは、組織だったもの……と、カイは断定した。邪竜の力による支援があるにしても、俺が遭遇した男性……彼がどういう経緯であの場にいたのかなどを踏まえると、ってカイは語っていたな」

「その情報だけでわかるの?」

「もしこの世界に邪竜の力がやってきたとしても、それはひどく小さなものだ。それを膨らませるには、それなりに手間と労力が必要なはず。この世界は魔力が大気に満ちているけど、魔物がいない……それを踏まえると、少なくとも魔力の法則は俺達が召喚された場所とは異なる性質があるとカイは推察してた。つまり、邪竜はこの世界にいても魔力を吸収して力を大きくできない。それがやれたら、今頃もっと強大な存在になっていたはずだ」


 スイハはユキトの言葉に同意したのか小さく頷いた。


「そして、邪竜の狡猾さ……人に手を貸して力を与えていることから、自分では動くことができないか、この世界に干渉する術があまりないことを意味している……そこで俺が遭遇した男性のような人物を引き入れて、仕事を任せていた……それはおそらく、邪竜が持っている技術などと引き換えに」

「技術……魔法に関する技術?」

「ああ。もしかしたら邪竜は力を与えるとして、人を引き入れたかもしれない……それは、言わば魔力に関する技術……邪竜自身は大気中に存在する魔力すら自由に扱えない。でも、それを自由にできる物を支援者に作らせれば……」

「あるいはそれをするために動いている」

「そういうことだ」


 ユキトは空を仰ぐ。世界は魔法を認知することなく、穏やかな日常が流れている。


「……でも、魔物を生み出せるくらいには技術も高まってきた。それを踏まえるとたぶん、俺が一度目に帰還した際に、邪竜もまた来たと考えた方がよさそうだな」

「そして密かに活動を……」

「そういうこと……もし俺が再召喚されなかったら、俺だけで対処に迫られていただろう。政府組織と手を結ぶことは……いずれできたかもしれないけど、戦える人間が実質俺だけだった。それを踏まえれば、今よりも遙かに敵は動きやすかっただろうし、魔法や魔力を敵の手で公にされていた可能性は高い」


 そう述べると、ユキトは苦笑した。


「再召喚なんて理不尽な事象によって、俺達は敵の計略を防げている……皮肉な話ではあるけどな」


 ユキトはそこでスイハに笑みを浮かべる。


「スイハは……スイハ達は、本当にいいのか?」

「うん、私達が手伝いたいから、やるの」

「わかった。なら俺もこれ以上尋ねることはしない……よろしく頼む」


 彼女が小さく頷く。それで話は終わり、ユキト達はクラスへ戻った。


 次の授業まで、眠ろうか――などと考えていた時、男子のクラスメイト数人がスマホを見ながら何やら話をしていた。それはどうやら動画を見ているようで、


「これ、映画の予告か?」

「でも、それにしたって名称とかも出ていないぞ?」


 何やら話をしている。彼らは異世界に召喚されたが霊具を手にせず記憶を失っている人間なのだが――


「これ、竜と言えばいいのか?」

「ゲーム風に言うなら黒竜だよな。ずいぶんとリアルに動くけど――」


 ユキトはその時、嫌な予感がした。密かにスマホを取り出し、いくらか操作をして動画サイトを確認する。

 クラスメイトが見ていると思しき動画はすぐに見つかった。再生数も多く、コメントにはこれが何なのかと疑問に寄せる人が多い。


 その動画は――黒い戦士と竜が戦う姿。紛れもなく、先日の戦闘だった。


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