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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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山積みの課題

 竜を倒した後、ユキトは町中を駆け巡って片っ端から出現する魔物を倒し始めた。その道中でカイへ中間報告も行う。竜と戦った痕跡については、魔物を倒してから対処するということとなった。

 魔物を消滅させる技法も、使用し続ければ慣れてきて瞬殺した後すかさず消滅させることで、時間短縮に成功。魔物の撃破速度は勢いを増し、いつしか魔物が出現するタイミングを見計らって攻撃できるくらいになった。


『無茶苦茶だねえ』

「このくらいは動けないと、解決できないだろ」


 ユキトは答えながら、魔物を瞬殺し――そこは最初に魔物と交戦した公園近く。するとここでディルが、


『魔物が、いなくなったっぽいね』

「ようやくか……でも、魔物を生成する魔法が解除されたのかはわからない。もう少し、様子を見る必要があるかもしれないな」


 その時、電話が鳴った。ユキトはカイからであるのを確認すると即座に出た。


「どうした?」

『魔物が完全に消滅した』

「まだ魔物を生成するプロセスは残っているだろ?」

『そこについてだけど、どうやら魔力が底をついたようで、動きを止めている』

「魔力が……とはいえ、放置していくのもまずいだろ?」

『うん、そうだね。僕やスイハが出て破壊するのも良いけど――』

「まだ周辺警戒を頼む。俺は余裕があるから、この足で魔法陣を破壊して回る。魔法陣の位置とかはわかるか?」

『魔力を観測した段階で、おおよその位置は捕捉したよ。ただ、GPSの座標みたいにピンポイントじゃない』

「わかった。魔力がなくなっているとはいえ、魔法陣そのものも魔力の塊だ。近くに行けばわかるはず……おおよその位置でもいいから教えてくれ」


 ――ユキトはカイから情報をもらい、改めて動き始める。そして当該のポイントへ辿り着き、ディルの力で魔法陣を破壊していく。

 地上に出ているのなら、魔法陣を斬るだけで終わりだが、そうでない場合は魔法で――徹底的な処理に加え、戦闘の痕跡も取り除き――やがてユキトの作業は終了した。


「これで、作戦完了だな」

『今回は結構危なかったね』

「敵の強さがそれほどじゃなかったのが幸いだったな……まあ、邪竜レベルが出てくるとは思えないし、そんなのが出現したら間違いなくこの世の終わりだが」


 ――本当に邪竜クラスの敵が現れたとしたら、この世界で対抗できる人間は文字通りユキトだけだ。


「しかも俺は、切り札は持っているけど邪竜と戦った際のようには……鍛錬をするにしても、肝心の天神であるリュシールがいない以上、完璧にとはいかない」

『でも、それをしないとまずい?』

「邪竜クラス……そういった敵が出るということを想定して動いた方がいいのは事実だ。まあ現段階では霊具すらまともに作れないし、やれることは限られるけど」

『イズミがいないと話にならないって感じかな?』

「そうだな……彼女の力があって初めて、俺達は魔物と戦える組織として動けるのかもしれない」


 現状はユキトの力によって無理矢理解決しているような段階であった。それを是正するには、他の仲間が霊具を手にして強くなる以外に選択肢はない。


「とはいえ、だ。現状ではこの町だけが対象になっている……それはこの町でしか魔法陣の構築などができない、という理由なのかもしれないけど……その条件がなくなってしまったら、それこそ防衛のために戦力が必要になる」

『邪竜に対抗する組織かあ……』

「それは間違いなく、政府に関連するものになる。いや、それどころじゃない……下手すれば、世界を巻き込む。ただそうなったら魔法という存在を公にする必要性に迫られる」

『現状では隠していたいわけだから、秘密裏に戦力強化を行っていくけど……敵が広範囲に活動できるようになったら、人員も必要だし、何より人々の理解が必要だと』

「そうだ。政府組織である以上……そして、世界に関わる問題だから組織の規模は大きくできるけど、安易にそれをやったら政治的に面倒……と、課題は山積みだな。理想的なのは今の段階で敵の尻尾をつかんで首謀者を滅ぼすことだが」

『さすがに敵もそれはわかっている』

「ああ、よって俺達がやるべきなのは、敵の居所を知ること。敵を明確に捕捉できたら、色々と悩まずに済む」

『それに今なら、ユキトだけでも戦えると』

「ああ……そうだと思う」


 応じつつ、ユキトは最悪の想定も頭に浮かべる。自分の能力が通用しなかったら――現状、自分自身が主戦力であり最後の砦。それを是正するために活動しつつ、早急に敵の存在を明らかにする――魔法という概念を秘匿するには、それしかない。


「ま、このくらいはカイだってわかっているし、報告がてら会いに行くとしようか」

『凱旋だね』

「敵を倒したからか? まあ、凱旋といっても誰かに見られるわけじゃないんだけどな」


 そう応じつつユキトは町中を歩く――その時、カイ達が構築していた魔法が終わったらしく、魔物がいた領域へ入り込む学生の姿があった。


(問題なさそうだな)


 ユキトは姿を隠しながらそう呟くと、少しカイやスイハがいる建物へと向かった。






 その後、ユキトはカイ達と合流し、魔法は問題なく解除されて人々の日常が戻っているのを確認した。


「この町全体を覆うくらいの規模は出せるから、今後魔物が出たら有効に活用していきたいね」

「何度も使えるのか?」


 ユキトが疑問を寄せると、カイは小さく頷いた。


「魔法そのものは複雑だけど、それほど魔力消費するわけじゃない……というより、例えるなら香りを風に乗せて漂わせるみたいなやり方だから、大気中の魔力を利用すればいい」


 そこまで言うと、カイは肩をすくめた。


「僕らが召喚された世界では一切通用しない程度の効力しかないけど、魔法に対し無力なこの世界では十二分に力を発揮するというわけさ」

「なるほど、魔力に抵抗できないから、簡単な魔法でも効果があるのか」

「そう。だからこそ、魔法というものに対し扱いは慎重にならないといけない」


 カイの言葉は重く、ユキトは小さく頷いた。


「で、これからについてだが……」


 ユキトが言及すると、カイは一度横にいるスイハに目を向けた後、改めて語り始めた。


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