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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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解明できなかったもの

 ユキトは魔法陣破壊後、組織の建物に赴きカイやスイハと合流した。一連の報告を済ませ、会議室で今後のことを検討する。


「結局、魔物を大々的に生み出して終わりだったけど……」

「敵は、何かをしたと考えていいだろう。電話で話したとおり、受肉させるとか……とはいえ、その方法まではわからないな」


 カイは断言する。その顔から、敵の策を――邪竜が行った計略を異世界の出来事から考察し、解こうとしているのがわかる。


「僕らは召喚された当初、様々な策で向こうの世界の人々は追い込まれていた。その状況を僕らが打開したわけだけど、邪竜はあらゆる面で人間の上をいっていたわけだ……その謀略を巡らせる力は、間違いなく健在だろう」

「今までの騒動については、全て裏があるってことか」

「うん、そこについて検証したいところだけど……」

「どれだけ考察しても、推測の域を出ないけどな」


 ユキトはそう答えながらも、思考し始める。


「とはいっても、邪竜がこの世界でまず何をしたいのかについて考えないといけないけど」

「……ねえ、一ついい?」


 と、ふいにスイハが口を開いた。


「そもそも邪竜はどういう目的で向こうの世界で攻撃を仕掛けていたの?」

「第一に、迷宮の外へ出ることだろうね」


 と、カイはスイハの質問に対し答え始める。


「戦争初期は、フィスデイル王国を中心に攻撃を仕掛けていたという話を聞いたから、それで間違いない。けれど、迷宮があったことで多数の霊具所持者がいたことから、単純な力押しでは厳しいと判断して、各国の連携を崩すために動いた」


 そこまで言うとカイは、小さく息をつく。


「ただ、そこまでは想定内だったと思うよ。元々邪竜は本格的に世界へ攻撃を仕掛けるよりも前に、様々な人間を懐柔していた。信奉者と呼ばれる、言わば邪竜の手足となる存在を始めとして、貴族などをあの手この手で引き入れて国の情報を得た。そこを突かれ、各国は疑心暗鬼となって連携できなくなった」

「二段構えの作戦だったってことだな」


 ユキトはカイの言葉に続き、口を開く。


「フィスデイル王国に攻撃を仕掛け、王都を制圧できればそれでいい。貴族を懐柔した際の策なんて出番はなかったはずだ。けれど、第一の作戦は通用しなかったため、第二プランに舵を切った」

「うん、そういうことだ……その最中に僕らは召喚された。そして邪竜の配下を倒し始めたけど……ここで敵は動きを止めた。わざとやられたと言っていい」

「攻撃の手を緩めて俺達を迷宮へ入るよう促し、そこで、迎え撃った……加えて、外の攻撃も再開した」

「こちらの動きに合わせて対応していたわけだ」


 スイハの指摘にユキトとカイは同時に頷く。


「僕らはそこで、ユキトが外を担当して僕が迷宮を……という形になった。もちろん時と場合によって立ち回りは変えたけどね。そうした中で、敵はさらに計略を巡らせた……正直、数が多すぎて計略だったのか判然としないのもあったけどね」

「つまり、それだけ策を要して人間達に攻撃を」

「そういうこと」

「それは、迷宮の外へ出るため?」

「あくまで迷宮外へ、というのは本当の目的に繋がることだったのではと僕は考えている。外へ出て何かを果たす……人間を懐柔して支配下に置いていたことを踏まえると、人間種族を全て滅ぼすというのが理由ではない。そもそも、邪竜の支配がかなり及んでいた場所では、ある程度秩序が形成されていた」

「村を滅ぼしたりしていたけど、それは見せしめのという意味合いと共に、自分自身の力を誇示するためって雰囲気があったな」


 ユキトが告げる。それにカイは頷いて、


「そう、国への侵攻はあくまで手段であって目的ではない。ならば、外へ出て何をするつもりだったのか? そこについては、わからないままだ」

「俺達は、邪竜の真の目的については解明できなかったからな」


 ユキトは告げながら、天井を見上げた。


「再召喚された時だってそうだ。邪竜は復活を目論んでいたし、様々な種を植えてた……が、本質的に何をしようとしていたのかまではわからない。人間に対し上位の存在となって支配しようとしていたのか? それとも、何か恨みがあって復讐でもしようとしていたのか? 結局全てが不明のままだ」

「この戦いの中で、解明される可能性はありそうだね」


 スイハはそう述べると、複雑な表情を浮かべた。


「結局、敵の目論見がわからないと推測もできないか」

「一応、ヒントとなることはある」


 カイは言う。それが何なのかとユキト達が注目すると、


「現在、邪竜は魔物という存在を白日に晒そうとしている……それだけじゃなくて、魔法、魔力という概念も公にしようとしているわけだ」

「それをするためにカイは受肉させると考察したわけだ」

「うん。その上で、公にした後どうするのか……そこについては単純に支配しようとか、そういうわけじゃないと思う。そもそも、僕らという最大の障害があるにしても、魔法や魔力という存在が公になったら、この世界の人々が力を持ってしまう」

「確かに、邪竜が世界を支配するとかいう目的があったら、それは逆効果だよな」

「うん、僕らを倒すための力を得るにしても、魔力という概念を世界中に広める必要性がどこにもない。けれど邪竜はそれをするために動いている」

「無茶苦茶だと言いたいわけだけど……この二つは繋がっていると考えるべきか?」

「うん、僕はそう思う。まだ理由はわからないけれど……」


 語るごとにカイの表情は深刻になっていく。


「今はまだ、どうにか対応できているけれど今後どうなるか……」

「カイ、もし受肉した魔物が現れたらどうする?」

「……問題は、いつ発生するかだね。白昼堂々と出現したら、こちらも厳しい戦いを強いられるけど、現状では敵の目論見がわからない以上、作戦通りに敵が進んでいるという前提に立って、動くべきか」


 カイは口元に手を当て、そして、


「ユキト、スイハ、魔物が現れた際のこと……これは僕に任せてくれ。完全に封じ込めというのは厳しいかもしれないけれど、魔物が出現した際の対策はやっておく」

「可能なのか?」

「考えが一つ。これはおそらく僕にしかできない」


 カイの発言にユキトとスイハは互いに目を合わせ――やがて、同意のため小さく頷いたのだった。


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