表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

218/397

現れた脅威

「まあなんにせよ、邪竜とそれに連なる一派……俺が遭遇した男性を含め、捕まえる必要がある」


 ユキトはなおもスイハへ話し続ける。


「少なくとも魔物によって人々に危害を加えようとしたのは事実だし……ただ、問題はどういった罪にするんだろうな? さすがに魔物を生み出した、なんて法律どこにも存在してないし」

「そこは、国の人に頑張ってもらうしかないね」


 スイハは言うと、苦笑する。


「正直、そこまでは私達の手に負えるものじゃないし」

「それもそうだな……まあ、俺達としては被害を防ぐために――」


 ユキトの言葉が止まった。原因は、屋上にいる人々が、皆一様に山が見える方角に目を向けていたからだ。


「……どうしたの?」


 スイハの質問にユキトは答えず、他の人と同様に視線を移す。その先には、


「あれ、火事か?」


 山のある場所から煙が出ていた。人が立ち入るような場所ではない、山の中腹。煙が細ければさして目立つものでもなかったはずだが、ユキトが視線を向けていると、徐々に大きくなっていく。

 ユキトは何か、嫌な予感がした。スイハも煙に気付きそちらに目を向けた、その時だった。


 ――オオオオオオオ。


 そんな、声とも音ともつかない何かが聞こえた。他の人達はさして気に留めていなかったが、それが何であるか、ユキトは見当がつく。


「……魔物」


 ユキトは呟くと共に、スイハへ視線を注ぐ。彼女は小さく頷き――二人は、駆け足で屋上施設から離れた。






 ユキトがカイへ連絡すると、既に状況は把握していたようで、指示が飛んだ。


『山間部に魔物が出現している。しかもそれは一体だけじゃない』

「敵が動いたのか?」

『それで間違いない……現在山火事が発生しているけど、山奥……人がいない場所だから、それほど影響はない。ただ、煙が上がったことで注目されている。なおかつ、声もあるしね』

「俺達が急行すれば……」

『事態は解決する。とはいえ、だ。声は聞こえるにしろそれが魔物とは思わないだろう。こうした行動によって魔物という存在が周知されるとは到底思えない……何か他に策があると考えていい』

「俺とスイハはどうすれば?」

『……まずユキト、君はすぐに魔物の討伐へ向かってくれ。それに対しスイハは今から住所を言うから、そちらへ向かって欲しい』

「組織の建物?」


 スイハの質問にカイは『そうだ』と答える。


『そこでしばし待機だ。敵がどういう策を要してくるかわからない以上、如何様にも動ける態勢を作っておく。場合によっては僕も出る』


 カイの頭の中ではどこまで想定しているのか――ユキトは尋ねるのを堪え、指示に従い動き出す。


「俺は超特急で現場に向かう……カイ、逐次情報は寄越してくれ」

『もちろんだ』


 ここでスイハと分かれ、ユキトは山へひた走る。本来ならば距離もあるため、すぐに現場へ駆けつけることは不可能だが――ユキトならば話は別だった。

 魔法を行使し、ユキトは電信柱よりも高度が上の空中に立つ。そして大気を蹴るように、跳躍するように駆け抜ける。


 幻術の行使により周囲に見えないからこそできる所業だった。ただこれは諸刃の剣でもある。敵がいるとしたら、空中を飛ぶユキトの存在も見えてしまう。地面に沿って移動した方が見つかりにくいため、もしあの場に以前相まみえた人間がいるとしたら――ユキトの存在を視認しているはずだ。

 けれど、緊急時となれば話は別だった。加え、カイや組織が敵の居所を把握する魔法を開発し、捕捉しようとしている。それを踏まえれば、今やるべきことは事態の早期解決。魔物を倒すことを何よりも優先とすべきであり、敵が発見して逃げられても仕方がないという判断だった。


 また、空を飛ぶのにはもう一つ理由があった。


「――ディル!」


 ユキトは相棒に呼びかける。途端、魔力が――漆黒の魔力がユキトへと飛来し、右腕に宿った。


『デートは終わった?』


 ディルが問い掛けてくる。空を飛ぶことで、異常事態を察知したディルが自分を見つけてくれる、というユキトの思惑があった。


「まだ途中だったけどな」

『ま、こんな事態になったら仕方がないね』


 ディルはそう返すと――ユキトの姿が一瞬で変じ、漆黒の武装へと切り替わる。


『煙の場所へ向かうんだね?』

「そうだ。ディル、周囲の索敵を頼む。他に魔力の反応があったら、そちらも調べる」

『了解』


 ユキトとディルが会話をする間に、山がどんどん迫ってくる。煙は相変わらず上がり、魔物の声も聞こえてくるが、それ以上の変化はない。


(もしあの場に人間がいて俺の姿を確認しているなら、もう逃げているはずだ。そうであれば、これ以上悪くなる可能性は低い――)


 ドォン、と一つ大きな音が鳴った。見れば別所で新たな煙が発生している。


(とはいえ、仕込まれた魔法が発動しているなら、連鎖的に何かが起こる可能性もあるか)


 とにかく、早急に片付けるしかない――そう判断したと同時に、ユキトは現場へ到着し森の中へ着地した。

 そして標的を見据える。それは高い木々にも見劣りしないような巨大な魔物。二本の足で立ち、人と同じような形を成したそれを見て、ユキトは巨人だと心の内で呟く。


(これだけ巨大な姿を生み出すというのは……どれだけ準備をしてきた?)


 あるいは、短期間でこれだけのものを作成できるようになったとしたら――交戦を開始する。考える余裕はないし、考察は後でいい。煙が上がったことを踏まえれば、似たような魔物がもう一体いることに加え、さらに言えば他に出てくる危険性が高い。

 巨人がユキトを敵と見定め、拳を振り下ろす。それを回避した直後、ズシンと大地を響かせる重い音が鳴り響いた。


(こんな魔物がもし町中に現れたら……)


 未曾有の大惨事になる。ユキトは次の瞬間、大地を蹴り跳躍した。なおかつ大気すらも蹴って幾度となくジャンプすると、巨人の頭部へ到達する。

 敵はそれに応じようとしたが、動きが遅くユキトの攻撃が早かった。首を狙った一閃は、あっさりと届き、体と首が分離。それで巨人はゆっくりと倒れ伏した。


 木々に当たりながら巨人が横倒しになり……やがて消滅する。そこでユキトは視線を転じ、燃える木々を見据えた。


「魔法を使ったのか……?」

『魔法陣作成の余波で、炎が生まれたのかも』


 ディルが推測する。そこで魔物の雄叫びが響き――ユキトは思考しながらも現状に対処するべく動き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ