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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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さらなる力を

 少ししてユキトは魔物などと遭遇した山の中へ入ったのだが――カイの言葉通り、収穫はなかった。


「でも、こうして歩いてみると改めて理解できることはあるな」


 それは、土地に内在する魔力の多寡。世界全体で土地にどれだけ魔力が存在しているかわからないが、少なくともユキトが暮らす町の周辺にある魔力は、相当濃い。


(これを邪竜は悪用しているというわけだ)


 ユキトは特別な土地であるが故に、敵もまた動いているのだと察する。ただ、残念ながら敵が何かをしたという痕跡を発見することはできなかった。


「あれだけ派手に動いたんだ。もし何かやるにしても、一度は潜伏するだろうな」

『だとしたら、次に敵が動いたら……』

「もっと大がかりになるかもしれない……そうなったらかなりまずいな」


 可能であれば、未然に防ぎたい。しかし、敵の全貌さえわからない現状では、そうした行動をとるのは難しい。


「自発的に動くにしても限界がある、か……まあ、これはわかりきっていることだし、俺の能力であっても限界があるってことだろうけど」

『なら、敵の想定を上回るくらいさらに強くなるってのはどう?』


 ふいにディルが提案する。それを聞いてユキトは、


「……まさか、元の世界へ戻ってきて、さらなる力をなんて発想になるとは夢にも思わなかったな」

『そもそも邪竜が現れるなんてのも想定外だし』

「その通りだな……でも、今求められているのはそういうことなのかもしれない。さらなる力を、か……でも、この世界でやれることには限度がある」


 以前、ユキトは自らの霊具の力で戦う相手を作り出した。けれどそれであっても限界がある。


「本格的に鍛錬をするなら、それこそ相手がいないと厳しいな……魔法で相手を作るにしても、それはどちらかというと今の技術を維持させるという面が強い。さらなる力を、ってなるとやっぱり戦う相手がいる」


 現状、霊具同士のスパークリングもできない。聖剣を使っていたカイですら、今は霊具を所持していないため、ユキトが全力で訓練するには力不足だ。


「俺の場合は、訓練できるパートナーを探すところからなんだよな。でも、さすがにそんな相手はいない」

『こればっかりは仕方がないかあ……』

「普通なら、どれだけ強くても世界には自分を上回るような化け物が……って、思うところなんだけどな。オリンピックで金メダルを取ったとか、そういうわかりやすい指標があれば自分こそ頂点だ、と言えるけど……俺が持つのは世界にはない魔力に関する技術。それを邪竜ですら戦えているくらい強くなっている……ってところまでレベルが上がっている俺は、さすがに肩を並べる人間すらいないだろうな」


 ただ、とユキトは内心で呟く。


「一つだけ、今を超えることができるかもしれないものはある」

『お、それは?』

「今の俺が扱える最強の技、『神降ろし』の強化だ」


 その言葉に、ディルは沈黙した。


「リュシールと共に使ってみて感じたことは、あれも修練次第で持続時間とか、能力の向上とかもできる」

『訓練って、具体的に何をやるの?』

「まずは今以上に魔力を自在に使えるよう訓練する。以前やった相殺技術の訓練とか、そういうのを用いてより繊細かつ精密に、魔力を扱える術を思い出す」


 邪竜と戦っていたあの戦いでは、確実にできていた。しかし今のユキトには、それができていない。


「再召喚された時も、邪竜を倒すために再度訓練したけど、さすがに全盛期を取り戻すには至らなかった……もし、最後の決戦で今の全力が通用しなければ……邪竜の決戦の時みたいなポテンシャルを出せなければならなかったら、俺は負けていた」

『今回はそれが必要ってこと?』

「単純に敵を倒せばいいという話ではない。この世界の人を守るため……それを成し遂げるためには、力はいくらあっても足りないって話だよ」


 そうディルへ説明を施す間にも、決意は固まっていく。


「俺がやれることは『神降ろし』の強化……ただし、そのためには俺自身、全盛期の力を取り戻す……うん、目標ができたら方針も決めやすいな」

『うーん、あの技術を極める、かあ』

「ディルとしては不満か? リュシールからもらった技術だからな」

『あー、そういうわけじゃないんだけど、あれに頼るのは危険じゃないかなー、と思って』

「危険?」

『ユキト、あまり話していないけどさ……あの技、相当体に負担が掛かるよね?』


 ユキトは何も答えなかったが――それは紛れもなく、肯定の沈黙だった。


『元々、天神の力を体に入れ込むことで発動する能力でしょ? 今は体の内にある天神の力を用いるけど……それでも、天神の魔力とユキトの魔力は別に存在している。ということは、異物を取り込んで能力を使うわけで――』

「ディルの言いたいことはわかるよ。というか、俺のことを心配してくれるとは」

『当たり前でしょ』


 少し怒った風にディルは告げる。


『そりゃあ相棒だから、死なれても困るし』

「そうか……けど、切り札としてしっかり使えるようにしておかないといけないのは確かだ」

『体は大丈夫なの?』

「別に寿命が縮むとか、そんな無茶苦茶なことにはならないよ……ただ使用する場合、反動で少しの間戦うことも難しいほど、魔力を消費する。もしこれも改善できるのであれば、是非ともやりたいところだけど」

『それは鍛錬したら改善するものなの?』

「そこは要検証だな……実を言うと『神降ろし』についてはわかっていないことも多いし、発展途上の技術だとリュシールは言っていた。だからまあ、練度を上げて使いこなせるようになれば、体の負担だって軽減されるかもしれない」

『だと、いいけどね……で、なんだかやる気みたいだけど、どうするの?』

「少し、鍛錬するか」


 元々、山の調査で踏み込んだはずだったが、その目的が変わりユキトは訓練を始めることにした。


『ユキト、次の戦いまでに鍛錬は終わると思う?』

「難しいだろうな。そもそも『神降ろし』については相当時間を要する……でもまあ、技術の向上については、できるかもしれないな」


 課題は技術の練度、その維持だろうか――と思いつつ、ユキトは修行を開始した。


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