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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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世界の法則

 戦いは終わり、ユキトは帰路についた。ひとまず何事もなかった――と言うには、状況が悪いと考える。


「敵の目的が不明瞭だが、絶対に悪い方向にしかいかないだろうな」

『魔物が出ても現地へ赴けば、絶対に勝てるけどね』


 ディルが言う――確かに邪竜が力を持っているとはいえ、今のユキトであれば対抗できるだけの術がある。ただ、敵の狙いが魔物、ひいては魔法という概念をさらけ出すことであれば、やりようはいくらでもある。


「単純に魔物という存在を周知させようというわけでもなさそうな雰囲気だし……敵はいくらでもやりようはある。それこそ今回だって、あれだけの魔法陣を展開できたんだ。魔物の姿を周知させるにしても、良い方法があったはずだ」

『つまり敵の狙いは別にあるってこと?』

「しっくり来るのは、わざと魔物をちらつかせることで実験をしている……魔物が暴走した時の対処なんかは、それこそ俺達任せで」

『でも、そんなことをしてどうするの?』

「そこは、敵を捕まえて解明しないといけないけど……力を与えている人間、例えば俺が遭遇した男性のような人物であっても、果たして情報を持っているかどうか」


 邪竜は間違いなくこの世界の人間を利用している。それは当然、自分の目的を公にする必要性などない。

 組織の長であるなら、力で服従させるかカリスマ性により率いるか、あるいは自らの意見を述べ同意を得るかなど、様々だが――邪竜ならば間違いなく力による支配だろう。であるなら、真の目的については結局のところ首謀者の口から語られない限りはわからないままだ。


「ま、今はひとまず魔物が露見されずに済んだ……それでよしとするしかないけど」

『この調子だと、結構な頻度でありそうだけど』

「そうだな。なおかつ、俺達の手が届かない場所であったりするとまずいけど」

『うーん、その可能性は低いんじゃないかな』

「どうしてだ?」

『今日色々と魔法陣を探っていて思ったんだけど、どうもユキトが暮らす町……その周辺が特に魔力が多いみたい』

「それは……」

『たぶん異世界召喚とか、そういう魔法が発揮されたからじゃないかな。あるいは、元々この町の周辺は強い魔力が存在していて、それに引き寄せられてユキト達が召喚されてしまったか』


 普通に考えるならば、後者だろうとユキトは考える。


「なるほど、な。仮にそうだとしたら、今後も敵の攻撃は止められるかもしれないってことか」

『そうだといいけどね』

「とりあえず、カイが対策をしているみたいだから、それに期待したい……というか、それしかできないよな」


 自分は、とにかく敵を倒すだけ――それがどこかもどかしく、また同時に自分にしかできないことだとして、ユキトは強い決意を改めて抱いた。



 * * *



 魔法陣を全て破壊され、現場から逃れたヒロは、小さく息をついて時刻を確認した。深夜前で周囲は雑木林。漆黒が広がり不気味極まりないが、魔法で生み出した明かりによって視界の確保はできている。


『成功したようだな』


 そして真正面から声。ヒロはそれに小さく頷き、


「あー、これって成功と言えるのか?」

『作戦の目的については完了した。それに、敵は察していても次の攻撃を対策できない……我々にとって優位な状況だ』


 ヒロは本当かなどと内心考えたが、口には出さなかった。

 遠方から敵を観察していたヒロだが、その力は圧倒的だった。まさしく一騎当千の活躍で、なるほどああいう存在が世界を救うのだ、などと思ったりもした。


『では、作戦を次の段階へと進めよう』

「……一つ、いいか?」


 ヒロはここで声に向け疑問を告げる。


「魔物や魔法の存在を周知する……という方法があるにせよ、今回の作戦だってやりようによってはできたはずだ」

『難しいな』

「どうしてだ?」

『この世界には様々な記録媒体が存在する。それは魔法を介するものではないわけだが、これには問題点が存在する』

「問題?」

『相手が気付いているかどうかわからないが、魔力の塊である魔物は記録媒体に映らない』

「え、本当か?」

『向こうも魔物が出現したことで記録しようとしているだろうから、いずれ察すると思うのだが……魔力の塊というのはどうやら、単純な物理法則の外側にある存在であるため、どうやら魔力そのものを捉えられる物でなければ捕捉できないらしい』

「はあ、なるほど……つまり、記録はとれないと」

『うむ、大々的な魔物を拡散したとしても、現状では広げることは難しいだろう』

「でも、目撃者が多くなれば話は別だろ?」

『記憶の改ざんは可能だ』


 なるほどとヒロは思う。記録に残らないのであれば、後は記憶を封じるか改変する魔法を使えばいいと。


『よって、魔物を公にしたとしても、それが本当に広まるのかは不透明だ……なおかつ、現段階では今いる土地の周辺でしか魔物は生成できない』

「そうだな……とすると、手詰まりか?」

『無論、方法はある。それを検証するために、これほど大がかりな作戦を実行したのだ』


 声は笑い始める。それはまるで、今から始まる惨劇を期待しているかのような雰囲気があった。


『次の作戦に入るわけだが、向こう側も対策に乗り出すだろう。よって少しの間、潜伏しているように』

「わかった……その間に、準備ってわけだ」

『そうだ』

「でも、もし居所がバレたら……」

『相手は私の魔力を探索して見つけ出そうとするだろう。しかし、この世界の人間の魔力……それにより仕掛けを施せば、察することができる可能性は低い』

「俺は一度敵と遭遇しているが」

『捕捉できていないのは確認済みだ。でなければ、この作戦を行った段階で敵に見つかっている』


 ヒロは納得する。それと同時に、きちんと段階を踏んで作戦を進行させている声の主に対し、舌を巻く思いだった。


『では、早速動くとしよう……そちらはひとまず休んでいいぞ』

「どうも」


 声が消える。残されたのは漆黒の闇が広がる森に佇むヒロだけ。


「帰るか……」


 だが不安はない。それどころか、闇が味方をしているような高揚感さえ生まれ――ゆっくりと、ヒロは歩き始めたのだった。


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