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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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勇者の再来

「スイハ、大丈夫なのか?」


 相手が喋り始めるより先に、ユキトは思わず尋ねた。すると彼女――スイハは小さく頷き、


「カイの記憶を持っているから、戦えるよ……魔力を探る能力についても、ユキトを探せたことから大丈夫だとわかるよね?」

「そう、だな……そういえば、一緒に鍛錬した時、魔力の探知能力とかは検証していなかったな。戦闘以外の面も気を遣うべきだったか……」


 ユキトはそう呟いた後、スイハへ改めて告げる。


「えっと、そうだな……スイハ、姿については――」

「幻術魔法は使っているよ。でも、これだけじゃ不安?」

「そうだな、可能であれば物理的に何か――」

「わかった」


 と、彼女の姿に変化が。制服姿だったものが、突然全身を軽鎧姿に変えた。


「と、頭部も守らないといけないね。ちょっと窮屈だけど」


 さらに彼女は兜で顔を覆う――そのあまりな変化にユキトは苦笑し、


「……実は、色々考えていたのか?」

「うん、まあ」

「俺を含め、考えることは一緒か……でも、ずいぶんとすんなりできたな」

「私はカイの記憶を基に、他の人よりももっと魔法を扱えたってだけの話。これなら大丈夫そう?」

「ああ、問題ない。幻術魔法は常に維持して、絶対に露見しないようにしてくれ」

「うん……それで、私はどうすれば?」

「俺は山の上へ向かう。スイハは住宅地を回って、魔法陣を探してくれ――」


 詳細を語るとスイハは了承。そこでユキトは「頼む」と告げ――山へ向け、疾駆した。






 山へ向かっている道中で、ユキトは一つ察する。住宅地の上に存在する雑木林。それは山肌に沿って存在し、住宅地に対して山の向こう側を隔てるものとなっているが、その場所から明確に魔力が感じ取れる。


「事前に仕込んでおいて、時間が来たら発動……ってところか?」


 呟きながら、ユキトは魔物の気配を察した。しかもその数は多い。


「まずは山の上に配置した魔法陣が作動して、数を増やしている……か。これが一挙に町へ下りてくれば、何をしようが魔物という存在が公になるな」


 ユキトはそう呟きながら、剣を強く握りしめた。


(まあ、敵からすれば如何様にでもできる……か)


 ――ユキト達は邪竜に関わっているかもしれない人間がいることを把握しているが、その実態についてどういったものなのかはわかっていない。組織として行動しているのか、それとも単独で動いているのか。

 どちらにせよ、この世界の人間に力を与えた存在を滅ぼさなければ戦いは終わらないわけだが、敵の姿が見えないことで、敵側はいくらでも先手を打つことができる。


(魔物という存在が露見したら面倒なことになる……と、敵だって思うところだと推測していたが、どうやらそうじゃない。今回の一件は実験を行いながら、場合によってはそれが露見しても構わないという感じだ)


 敵側は魔物を公にする気なのであれば、ユキトとしては防ぐのも限界がある。


(カイはその辺りのことを含め、国側と協議しているところかな……正直、ここで魔法陣を形成している人間を捕まえて終わらせたいけど、それは間違いなく無理だな)


 ユキトはそう結論づけつつ、近くにいた魔物を倒す。敵は雑木林のあちこちに点在し、その数は十や二十どころではない。


「この場所では相当入念な準備をしていたみたいだな……!」


 ユキトはそう呟きながら雑木林の中を走り回り、敵を倒していく。木々の間隔が空いているため、移動は容易だがそれは魔物も同じであり、気配から町へ下りていこうとする個体も見受けられた。

 そうした敵を優先的に処理しながら、ユキトは一考する。


(数は多いし、これだけ準備をしていた以上、これを打開すれば……と思うところだが、何か引っかかるな)


 仮に敵が邪竜に関連する存在であるなら、ユキトの実力については把握しているはず。魔物の軍勢すら打破できるユキトの能力を考えれば、例え魔物が束になっても敵わないだろうと推察するはず。


(大量の魔物によって、魔物という概念をこの世界に認知させる……という目論見だとしても、俺が来たならどうなるかは理解できるはずだ。それとも、この山などに作成した魔法陣は囮で、別の場所にまだ何か――)


「ディル、周囲を探ってくれ」

『了解』


 指示に従ってディルは魔力を拡散させる。


「ここに設置されている魔法陣以外に……町中の点在するもの以外に、魔力の塊は存在しているか?」

『……現時点では……』

「ない、と」

『でもこの魔法陣、起動させないと知覚することは難しいよね?』


 ディルの質問に対し、ユキトは地中に存在する魔法陣へ向け斬撃を放った。土砂が舞い上がり、切っ先が魔法陣を形成する光に触れると、パキンと乾いた音を立てて魔力が消え失せる。

 町中にあったものを残したが、この場にあるのは検証必要性もないため、壊す――ユキトは口を開く。


「地面に直接魔法陣が埋め込まれていることを考えると、単に描いただけではない。絶対に発動するために必要となる魔力があるはずだ」

『でもそれは、巧妙に隠されている?』

「地上からは見えない場所にあるのも特徴だな。ディル、やれるだけ探査してくれ。俺はその間に魔物を倒す」

『わかった』


 返事と共に、ユキトはさらなる魔物を倒す。現時点でまだ雑木林からは出ていない。周囲に人影もないため、見られてもいないはず。


(雑木林より高い場所に建物があったら、気付かれていた可能性もあるけど、この場所が山の頂点だ。雑木林から出なければ、おそらく問題はない)


 ユキトはそう考えつつ、さらに魔物を撃滅していく。気配を探る剣を振るだけで、あっという間にその数を減らしていく。

 ――その姿は誰にも見られていないが、もし仲間の誰かが――異世界の人間がいたならば、こう考えたことだろう。黒の勇者が再び現れた、と。


「ふっ!」


 目に見える魔物を倒すのに、ものの数分。さらに魔法陣を徹底的に破壊し、これ以上魔物が出現しないように処置をする。雑木林を走り回り、魔力を抱えるものをひたすら倒し、壊し続け――山に到着してからおよそ十五分ほどで、全ての処理が完了した。


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