表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/397

急報

 施設で仲間達が顔を合わせてから、週が明けてユキトはカイから連絡を受けた。イズミと顔を合わせる算段がついたとのことだった。


(手際がいいな……)


 ユキトはそう思いつつ、カイと共にイズミの元へ行く予定を立てた。

 最初、ユキトだけでもいいのでは――などと思ったが、カイが個人的な用件でイズミに会いたいという面もあるらしい。


(たぶん組織云々と関係があるんだろうけど)


 ユキトは推測しつつも、尋ねるようなことはしなかった。それはひとえに、カイのことを信頼しているため、任せて良いと判断したためだ。


「思った以上に、組織の形ができあがりつつあるな」


 ユキトは下校中、そんなことを呟いた――授業が終わり、ユキトはすぐさま学校を出て歩いている状況。

 そうした呟きに対し、応じたのはディル。


『組織の形……?』

「カイが中心に活動しているのは当然だけど、メイも協力的だし、何よりスイハ達も……」


 ユキトは今日の出来事を思い返す。自分たちの力量を把握して、スイハ達は精力的に鍛錬を行っていた。予想以上に積極性があったためユキトが問い掛けると、スイハが代表して答えた。


「異世界で霊具を手にして、戦った……そして何より、ユキトが懸命に戦っているのを見て、手伝いたいと思った」


 理由はそれで十分――暗にそう語っていた。そしてユキトも、仲間達が覚悟を決めているのだと認識し、何も言わなかった。

「スイハ達は、俺やカイの指示にちゃんと従ってくれるだろうし……この時点で、統制の取れた動きができる」

『いいことだけどね……スイハ達は、なんだか思い詰めているような気もする』

「その辺りは、ケアしていく必要があるだろうな……負担になるけど、メイなんかがその担当かな」


 ――最初に召喚された際、仲間が倒れる中で霊具を握り戦い続けた以上、メンタルケアというのも必要不可欠だった。霊具によって精神は安定していたが、それでも人の死を見れば心は揺らぐ。よって、相談役が必要だった。


 その中でメイは率先して仲間のケアに務めていた。元々後方支援系の霊具を所持し、怪我の治療なども行っていたため、その関連で相談も聞いていた。仲間や、異世界の人々が倒れる中でも、挫けず絶望せず、邪竜を討伐できたのは彼女の功績も大きい。


 一方でスイハ達の場合は――霊具を持たないクラスメイトには細心の注意を払っていた。少しでも様子がおかしければ、国の人と連携して対処する――そういう方針であったわけだが、霊具を手にした面々についてはケアをほとんどしていなかった。というより、そうしたことをするより先に、大きく情勢が動いていたという方が正しい。


「組織として動くなら、後方支援役だって必要だろうし……」

『スイハを始めとして、最召喚された時の面々、みーんな攻撃系の霊具だしね』

「そうだな……まあこの辺りはカイと今後相談することにして……」


 ユキトはそこまで答えた時、あることに気づく。


「攻撃系であっても、役割は考えた方がいいな」

『そうだね……でも、元々持っていた霊具に引っ張られているわけでしょ? 具体的にどうするの?』

「スイハやノブトについては当然ながら前衛だけど、カノとチアキは……基本的には後衛で、援護してもらうって形がベストだろうな」

『霊具の性質を考えると、味方を巻き込みそうだけど』

「両方とも無差別かつ、高火力がウリの霊具だったからな……ま、霊具そのものは所持していないし、火力を調整すれば立ち回りも上手くやれるだろ……と」


 ユキトはそこでスマホが震えていることに気づく。


「通話だな……カイ?」


 電話に出ると、開口一番硬質な声が聞こえた。


『ユキト、時間はあるかい?』

「ああ、問題ないけど……どうしたんだ?」

『正直、僕だけでは判断が難しい……すぐに今から言う場所まで来てくれないか』


 かなり深刻な内容らしく、ユキトは「わかった」と応じ、メモをとる。


「ちなみにだが、何があったんだ?」

『組織の人から連絡があった。その出来事が起こったのは昨日だ……少々信じられない話しなんだが』


 そう前置きをして、カイはユキトへ告げた。


『魔物が――現れたらしい』






 ユキトが訪れたのは、繁華街の一角にあるオフィスビル。そこに組織の事務所があるらしく、訪れたのだが、


「……ずいぶん、ごちゃごちゃしているな」


 段ボールがずいぶんと積まれた部屋を見て、ユキトは感想を述べた。すると、


「引っ越してきたばかりらしいからね」


 既に待っていたカイが述べる。それにユキトは眉をひそめ、


「引っ越した?」

「僕らがいる近くに事務所を構えたかったらしい」

「なるほど……ちなみに、どういう名前で看板を作るんだ?」

「適当な公共サービスの名前らしいよ。さすがに組織の名称通りに、というのは荒唐無稽だからね」


 それはそうか、とユキトは内心で納得していると、春伏がやってきた。


「申し訳ありません、こんな場所で……それも平日に」

「内容が内容だけに、僕らとしても懸念がありますから」


 カイの言葉に春伏は一度頭を下げた。


「会議室へご案内します」


 そうして別室へ移動。OAフロアの典型的なカーペットが敷かれた、長テーブルのある部屋なのだが、壁も机も材質がいいのか安物感はまったくない。

 まずユキトとカイが着席し、対面する形で春伏が座ると、彼は語り始めた。


「事のあらましから説明します。観測したのは昨日です。この町から北、雑木林に魔物の目撃例が警察に報告されました。最初、通報者は熊か何かかと思ったそうですが、その形や大きさが異様であったため、怖くなって逃げ出したそうで、黒い体躯という以外に情報はありません」

「写真などは?」


 カイが問うと春伏は首を左右に振る。


「情報がないに等しかったのですが、警察に連絡が来た時点で担当者が怪しんだ。実は魔物が出現したということで、この町を管轄している警察職員の中に、ある程度事情を説明している人間がいたのです。その一人が応対したことで、私どもに連絡がきた」

「それで追加調査をしたと?」

「はい。警察官と共に、実際に確認するという意味合いを込めて……結果、漆黒の体を持つ、巨大な狼……そういった魔物を発見しました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ