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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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政府組織

 その後、鍛錬についてある程度目処が立った段階で休憩に入った。とはいえ昼以降も鍛錬をするというのは――ということで、キリのいいところで解散するような形にしようということとなった。


「休憩後は、各々がどういう訓練をしていくかアドバイスするべきだな」


 カイが口を開く――ユキトは彼と共に建物内を進む。その道中における会話だった。


「それで今日のところは終わりでいいはずだ」

「そうだな……俺やカイはどうする? 政府関係者と顔を合わせるわけだし、そこから発展して別の場所にでも行くのか?」

「向こうの出方次第だけど、そういう展開になってもいいのかい?」

「俺は平気だよ」


 同意したところで目的地へ辿り着いた。会議室らしく、部屋へ入るとスーツ姿の男性がいた。


「どうも」


 カイがまず会釈する。相手はそれに応じ――ユキトは男性を観察する。

 四十代ほどの年齢で、ピシッとした立ち姿が印象的な男性だった。黒いスーツ姿も似合っており、ユキトはドラマの中で出てくるエリート官僚のような印象を受ける。


「初めまして」


 そして男性がユキトへ向け口を開く。


春伏(はるふし)三也(みや)と申します。政府機関――特殊異能研究所の副所長を務めています」


 その言葉を聞き、ユキトは相当偉い人がやってきたと感じる。


「えっと……セガミユキトです」

「お名前は聞き及んでいます。異世界へ赴き、その力を宿したまま帰還した方……私としては、お会いできて光栄です」


 その言葉に、世辞などは含まれていない――混ざりけなしの、真実である様子だった。


「今日、集まって頂いた方々とも、いずれ挨拶をしたいと思っています」

「はい……あの、カイ」

「どうしたんだい?」

「その、特殊異能研究所……で、いいのか? カイから概要を聞いてはいるけれど、具体的にはどういう組織なんだ?」

「まず、公的に詳細は語られていません」


 と、春伏がユキトへと語り始める。


「組織的には……防衛省の下部組織となります」

「防衛……省の?」

「魔物という脅威……言わば防衛に関わるものであるため、このような位置づけとなっています。ただ、もし魔物が出現し対処に当たる場合、当然ながら現行法では対処しきれない面が非常に大きい」

「未知の存在……魔物に対する法律を策定しようなんて、現段階で誰かが議題に挙げようものならつるし上げを食らうだろうね」


 苦笑しながらカイは語る――ユキトとしては至極当然だと考える。


「では、もし有事の際は――」

「もし防衛省が動くとしたら、おそらく災害派遣などに関わる法律の運用になります。実際のところ、避難や救助については地震などを始めとした災害対応とほぼ同じになるでしょう。魔物が発生した地域の人々を安全な場所まで移動し、避難勧告を行う」

「なるほど……それが無難でしょうね」

「当然ながら魔物との戦闘などというのは想定していませんが……そのような事態とならなければ、我々も判断が難しいところです」

「仮に魔物相手でも攻撃をすれば……政治的に騒動になることは間違いないだろうね」


 カイが言う。ユキトはそれに頷きつつ、


「もし、脅威となるような存在が現れれば……俺達が?」

「正直、そこにも法律の壁が存在します……ただ、対策を事前にというのは立法の面から非常に難しい。事件が発生し、そこから法制化を進めていく……心苦しいですが」

「わかりました。こればかりは仕方がないでしょうし……少なくとも、密かに活動する必要性がありそうですね」


 ユキトの言葉にカイもまた頷く。


「魔法もあるし、騒動があってもある程度は対応できると思うけど……」

「その辺りは、実際に騒動が起こってからじゃないと僕らもどうなるかは読めないな。今はひとまず、政府側の人間と接する機会があり、場合によってはこの人達に判断を仰ぐ……それくらいしかできない」

「申し訳ありませんが」


 春伏が言う。どこか苦々しく思っているのか、表情は険しい。


「……その、この組織の設立由来などをお聞きしても?」


 ユキトは踏み込んだ話をする。そこで春伏は、


「ええ、構いません……組織そのものはずっと昔……明治よりも前から、時の政府と共にあり続けました」

「それはつまり、防衛省とかそれ以前から……」

「はい。あなた方は魔法と呼んでいますが、元々は異能や怪奇現象……ただそれはオカルトではなく、実際に存在する事柄として認識していました。この世界において、科学では解明できていない未知の力……あなた方が言う魔力によって引き起こされる問題。それを研究し続けています。日本においては、陰陽道を始め、古来より未知の現象に対策を講じてきた歴史があります」


 そこまで言うと、春伏は笑みを浮かべる。


「米国政府が国家単位で超能力開発を行っていたという話がありますね? あれもまた、アプローチは違えど魔力に関わる研究だと考えてよろしいかと」

「つまり、この世の不思議な現象について……それらは魔力によって引き起こされていると?」

「全てが、と断言できるわけではありませんが、科学で把握しきれない分野においては、大きく関わっています」


 魔力――確かに、魔法ならばいくらでも不思議な現象を発生できる。となれば、超常現象が魔力要因であるというのも、納得はできる。


「この組織は、魔力という概念的なものを可能な限り観測し、また同時に世界各国とも情報を共有している……ただ観測といっても、科学技術では魔力を感知することができません。よって、不可思議な事象などが発生した際、それを調べることで何か異変がないかを探る……我々はそういう形で活動をしています」

「日本だけでなく、世界で……」

「はい。不思議な現象については、世界と連携をして情報のやりとりをしている……過去の歴史をひもとけば、そうした出来事が起こった際に大事件が起きるケースがあります。それは自然災害を始め、人間同士の戦争や紛争、事件もまた含まれます」

「人間の戦争……」

「はい。人間が引き起こした事件において魔力が関わっている……というのは不思議に思われるかもしれませんが、実際に歴史上では発生している。よって、可能な限り観測し、何かあった場合に備える……この組織はそういった活動が主になっているんです」


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