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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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世界最強

 少しして、メイとツカサがやってきて改めて事情を説明し――それぞれ活動を始めた。


「それじゃあ、よろしく頼む」


 ツカサはスイハ達へ告げ、彼が仲間達の能力を診断することに。それに大してユキトとカイは、記憶の検証をスタートする。


「カイが仲間の能力を確認するのかと思っていたんだが……」

「能力については数値化しないといけないからね。それにはツカサが適任だ」


 なるほどとユキトは内心で思いつつ、


「パッと見た印象でいいんだが……スイハ達をどう思う?」

「魔力はきちんと制御できているし、少し鍛錬をすれば戦力になるとは思うよ。メイやツカサについても同様だ」


 カイは言いながらユキトに手をかざす。指先から魔力が漏れ、ユキトに触れる。


「他ならぬメイやツカサは……この辺りは戦ってきた期間の違いだろうね。制御できる魔力の範囲が大きい様子だ」

「邪竜との戦いをこなしていたんだ。それはむしろ当然という話だろうな」

「で、僕については以前鍛錬を受けた通りだ」

「あれから剣とかは振っているか?」

「もちろんだ。敵が明確になったんだ。一層精進することにするさ」


 カイはそこまで言うと、ユキトに向け苦笑する。


「ただ、最大戦力はユキトだし、場合によっては頼り切ることになるかもしれない」

「ディルだって持っているんだ。俺がそういう役回りになるのは当然だろ……遭遇した敵については捕縛することはできなかったけど、十分対抗はできた。油断はしないし、直接戦って勝つことはできると思う」

「だと思う。異世界の武器……それも天級の武具を持っている以上、そのアドバンテージは大きい。さすがにこの世界でディルを超える武器は存在しないだろうから、この世界において魔力という観点でユキトは最強だと考えていいだろう」


 最強――そう言われてユキトは首を傾げたくなったが、口には出さず代わりに別の話題に触れる。


「……カイ、仮に敵が邪竜もしくはそれに類する存在だとする」

「うん」

「その場合、俺やカイのことは知っていると解釈していいんだよな?」

「だと思うし、当然向こうはそれを込みで動いていると思う」

「そうか……敵が邪竜だとして、記憶についてはどうなっているんだろうな?」

「記憶?」

「俺がどうやって邪竜を倒したのかは、口頭で説明したはずだ。その中で切り札……『神降ろし』についても話したよな?」

「そうだね……でもそれはリュシールがいて成り立つ技法ではないのかい?」

「……色々検証した結果、いなくても使えるようになった。時間制限はありだが」


 カイは目を見開いた。その事実については予想外だったらしい。


「幾度かリュシールと力を重ねたことによって、俺にリュシールの……つまり天神の力が宿っている。結果、その魔力が消耗するまで能力が維持できる。時間にして、十分程度かな」

「それだけあれば、敵はどうにでも対処できそうだけどね……ただ、元はリュシールの力だろう? 一度使用したら消え去るのでは?」

「あー、その点は心配いらないよ。時間が経過すれば回復する」

「回復?」

「魔力が融合したことで、天神の魔力が俺のものになっているんだよ。なんというか、天神の特性を一部俺が引き継いだ、ってことかも……リュシールから言わせれば恩恵ではなく、融合した副作用って説明をするだろうな」

「天神との融合か……何か問題になりそうかい?」

「体調面では問題ない。むしろ天神の魔力により病気にすらならないだろう。ただ、俺はこの魔力を持っている時点で普通じゃない」

「……なるほど」


 カイはユキトの言わんとしていることを理解したのか、それだけ告げた。


「もし何かあれば遠慮なく言ってくれ……とはいえ、この世界で魔力による異常の対処ができるか微妙だけど」

「そうなったらそうなったで考えよう……話を戻すが、敵が邪竜だとする。その場合、俺やカイと最終決戦をした時の記憶まで持っているのか? あるいは、その辺りを知らないのか? そこが気になる」

「もし前者であればユキトの能力についてもある程度把握していることになるな」

「ああ。それを踏まえて動くとしたら、相手は相当厄介だぞ」

「ユキトの懸念はわかるけど、そこについては判断が難しいな。ただ、知っているという前提で動くべきだとは思う。もし相手が知らなくとも……アドバンテージを利用できるのは一度だけだ。危機的状況に陥ったら遠慮なく使ってしまって問題ないと思う」

「一度?」

「敵が邪竜かそれに近しい存在であるとしたら、ユキトの『神降ろし』を知らなくても、一目見れば何をしているかはすぐに察するだろう」

「ああなるほど、タネがわかるから、意表を突くにしても一度しか効果がないって話か」

「まあ敵が知っている前提で動いてしまって問題ないと思うよ。そもそも、十分とはいえ邪竜本体すら打ち負かす力を発揮できるんだ。例え相手が邪竜であろうとも本体には遠く及ばない。もし相手が把握していても、ユキトの攻撃は防げないさ」

「まあ……だろうな」


 邪竜との戦いにおいて、カイの聖剣が何より最強の霊具だった。それに並び立とうとした技法がユキトの『神降ろし』であり、また同時に最後の切り札だった。

 その技法に邪竜は滅んだ。つまり、例え今回の敵が邪竜そのものであっても、ユキトの全力には対抗できない。


「それよりも問題なのは、邪竜がどのように僕らに対抗してくるか……その方法だ」

「方法、というと?」

「僕らの能力をつぶさに理解しているなら、相手はそれを埋めるだけの何かをするだろう。人間に力を与えている……ただこの段階ではあくまでこの世界の人に力を分け与えているだけだ。でも、邪竜自身が力を得ようと動いた時……それこそ、危険な状態だ」

「力を……」

「おそらく人間に力を与えているのは、自分の手足となる存在を作り出そうとしている……つまり、何か事を成そうとしている。今はまだ初期段階みたいだけど――」

「今以上のステップに進ませないように尽力する。今の俺達にできるのは、それだな」


 ユキトの言葉に、カイは深々と頷いた。


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