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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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記憶の問題

 その後、ユキトはツカサと再会する――ユキトと似たような体格で眼鏡を掛けた男子生徒であり、この日は黒いコートを着ておりその姿はずいぶんと格好良かった。

 記憶を戻す手順についても、メイと同様スムーズにいったことに加え、彼もまた記憶をすんなりと受け入れたため、説明についても手早く終わらせることができた。


 ちなみに場所は一軒目と似たようなカフェ。はしごしているような形だが、カイは律儀にコーヒーとケーキを頼んでいる。


「……なるほど、事情は理解した」


 そして一通りの説明を受け、ツカサは頷いた。


「なぜ俺の記憶を戻したのかもわかるから、協力はしたい」

「ありがとう、それなら――」

「ただ一つ疑問なんだが、他のクラスメイト……いや、元クラスメイトか。彼らも記憶を戻すのか?」


 カイが話し合いを進めようとした時、それを遮るようにツカサが声を上げた。


「ユキトが記憶を保有しているんだろう?」

「ああ、まあな。でも、逐一こうして記憶を戻すというのは――」

「今日のところは、メイとツカサの二人に留める」


 カイがツカサへと告げた。


「記憶を戻す手順についても、わざわざ店に誘って……というのは時間が掛かるし、何より大変だ」

「戻す手法そのものも変えるか? ユキト、それはできるのか?」

「正直、わからないな。俺としては向こうの世界でもらった記憶に干渉するのは避けたいし、実験するのも難しいな」

「とりあえず、現状はこのままやるしかないってことだよね」


 メイがユキトの後に続く。


「カイ、全員の記憶を戻さないの?」

「そこについても検討しなければならないんだ。そもそもクラスが変わっていて全員を誘うのが大変だというのもある。わざわざユキトが来て、手順を踏んで……というのは、非効率的だし」

「まあ、確かに」

「それと、僕自身……まだ記憶を戻すべきでもないって判断している」


 ユキトは眉をひそめた。向こうの世界に残っていたカイの記憶は、戻して欲しいと願っていた。けれど目の前にいるカイは――


「ああ、勘違いしないで欲しい。記憶を戻すこと自体は賛成なんだ。ただ、それは色々と調べてからだ」

「調べる……?」

「メイとツカサについては、ひとまず問題ないという判断で率先して記憶を戻したけれど……他の人達、というかその大半は少し調査をしなければならない」

「どういうことだ?」


 ユキトが疑問を寄せると、カイは小さく頷いた。


「ユキト、向こうの世界に残っていた僕の記憶はどこまで語っていた? この記憶の詳細を」

「記憶の詳細……?」

「説明については、僕の記憶ではなくこの処置を行ったトシヤから聞いたはずだ。確かトシヤは霊具に記憶を宿していた」

「……ああ、そうだな。仲間がトシヤの記憶に触れ、カイが残したものに辿り着いた」

「実を言うと、トシヤにも言っていないことがある」


 ――改めて、どこまで見通していたのか。ユキトが目を丸くしていると、カイは苦笑した。


「そんな目をする必要性はどこにもないよ……これは記憶をどうすべきか気づいた時に、やったことなんだけど、今まで言わなかったのは、少々後ろ暗いことだったからだ」


 後ろ暗い――カイが言うのであればよほどのことだろうとユキト達は視線を集める。


「最初に迷宮へ踏み込んだことを憶えていると思う。その際、罠に掛かり……五人、犠牲になった」

「その結果、俺達は『魔紅玉』に対する願いを元の世界へ戻ることではなく、仲間を生き返らせることに変更した」


 ユキトの言葉にカイは頷き、


「その時点で僕は、生き返るのはどのような形で……と、疑問に思ったんだ。そしてこの世界の記憶を残すべきなのか考え……とあることを行った」

「とある……こと?」

「端的に言えば、死んだ仲間から魔力を……記憶に関する魔力を取り出した」


 思わぬ言葉だった。ユキトを含め三人は視線をカイへと集める。


「そして、それを保管した……これはリュシールにも言っていない。その時点で信用できた研究者と協力して行った。なぜ、誰にも言わなかったのか……それは、邪竜の動きが活発になり、城内においても敵か味方かわからなくなったせいもある。少なくとも手を貸してくれた研究者については大丈夫だとわかっていたけれど、それ以外は……リュシールでさえ、信用するのが難しかった」

「迷宮に入り込んだ当時、色々大変だったからな」


 ユキトの言葉にカイは首肯する。


「そして言い出すタイミングがなく……だね。つまりそうした人に対し記憶を戻して問題ないか、少し調べないといけない。加え、ユキトが向こうの世界で記憶を残した面々と顔を合わせたわけだけど……そこにも多少問題がある。何せああいった試みは前例がなかったから、僕らとしても手探りだった」

「つまり、カイのようにすんなり記憶を戻して終了……とは、いかないと?」

「戻しても問題ないと確信が持てるのは、僕の他にメイやツカサ……つまり、この場にいる面々だけだ。他は少し検証したい」

「俺は何をすれば?」

「暇を見つけて、僕の家に来て欲しい。といってもこちらにも都合があるからね……僕の方で予定が空けば、連絡するよ」

「なるほど……わかった」


 ユキトが承諾すると、カイは「頼むよ」と告げ会話が終わる。ツカサもカイの語った内容に納得したか、記憶を戻すことについては彼に一任するつもりのようだった。


「それじゃあ、今後の話し合いといこう」


 ――そして、ユキト達はいくらか話をした後、店を出ることにした。自分達の世界で脅威が迫っている事実を前に、ユキトとしては被害を出さないよう、全力を尽くすことを改めて誓うこととなった。

 そして最後、全員が連絡先を交換して解散となった。


「ユキト、また落ち着いたら色々話をしよう」


 去り際、ツカサはそんなことを言う。ユキトが同意すると彼は笑みを浮かべた後、一足先に店を後にした。


「それじゃあ私も帰るね」

「ああ。そっちの活動……大変だろうけど、よろしく」

「任せて」


 彼女もまた笑顔を見せ、去って行く。残されたユキトとカイも、一度互いに視線を合わせた後、


「俺も帰るとするよ……何かあったら連絡してくれ」

「うん」


 返事と共に、ユキトも歩き出し――家へ帰宅することとなった。


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