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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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再会へ

 翌日、雪斗は昼休みに翠芭を呼び出して、人気のない屋上で話をすることにした。


「えっと、話って?」

「あっちの世界から戻ってきた後、力を使っているかどうかを含め、多少あったと回答しただろ」

「あ、もしかして本当は何かやっていたとか?」

「まあな……といっても大した話じゃない。言うなれば、この世界における霊的現象を対処している」


 発言に翠芭は小首を傾げる。


「……霊的?」

「幽霊とか、そういうもの。ほら、心霊現象とかあるのかないのかこの世界ではわからないだろ? 科学で解明できていない部分だからさ……でも、それが魔力由来のものだとしたら、説明がつくだろ?」

「へえ、なるほど……それを雪斗が?」

「ディルを身に宿していて、そういうのを察知できるようになったからさ。廃墟とか、人気のない場所とかに現われるんだけど、そいつを倒していたらある時親族に見つかってバイト代わりに活動している」

「バイト?」

「不可思議な現象……そういうのが存在しているのを見つけたら、俺に連絡が来るようになっている。親族の一人が警察官でさ。その縁で、仕事をしているわけだ」


 翠芭は「なるほど」と納得した声を上げる。雪斗は反応が淡泊なものだったので、


「……首を突っ込もうという気はないんだよな?」

「それはもちろん。警察が関わっているとなったら、なんだか大変そうだし」

「まあ確かに……俺も親族……叔父さんが話を持ってくるからやってるって感じだからな。まあ丁度良いバイトという面もあるけど」

「あ、結構稼げるんだ」

「俺しかできないし、ちょっとくらい報酬をねだってもいいだろ?」


 互いに笑い始める。それが収まった後、雪斗はさらに切り出す。


「話は変わるけど、今日の夕方、カイの所へ行こうと思う。そのついでに仕事も一つしてくる」

「そっか……結果は教えてね」

「ああ、もちろん」


 聖剣所持者であった彼女にも聞く権利はある――雪斗は承諾し、会話を終えることとなった。






 雪斗が通っていた高校は、現在通っている場所から急行電車で数駅の場所にある。こんな近距離で転校するというのは、あの出来事が――自分の蒔いた種である悲劇がなければ、やることはなかった。


「ちょっと緊張するな……」


 元々いた学校とはいえ、今は他校生という身分だ。着ている制服とは別の衣服であるため、目立つだろうと思い体が強ばる。

 雪斗にとっては駅から見慣れた道を歩んでいく――ここへ進学したのは、ひとえに雪斗の努力の結果である。周辺の高校と比べ偏差値も高く、ここへ進学して国立大学へ――さすがに最難関の大学とまでは辛いが、それでも国立の大学へ進学できる可能性があるくらいには、成績もあった。


 そうして勉学に励んでいるとき、異世界転移が生じた――けれど、そのことを記憶しているのは雪斗だけで、他のクラスメイトは全員忘れてしまっている。


「見えてきた」


 雪斗は見慣れた校舎が遠目に捉えた。そこで、正門へ辿り着く前に意識を学校へ向け集中させた。

 死亡し『魔紅玉』の願いによりカイはこの世界へと戻ってきた。その結果、身体能力なども元に戻っている。しかし、幾多の戦場を共に乗り越えてきた彼の気配を、雪斗はすぐに察することができた。いや、より正確に言えばカイ以外にも転移したクラスメイト全員の気配がわかる。


 学校の中には、いくつか見知った気配を捉えることができた。その全員が紛れもなく異世界転移し共に戦ったクラスメイト達。とはいえカイの気配はない。


「校舎にはいないな。ということは、剣道場か?」


 部活をやっている可能性を考慮し、意識を校舎とは別の場所へ。すると、


「いた……」

『お、カイはまだ学校にいるのか』


 ディルの声も聞こえてくる。雪斗はそれに頷くと、


「あ、今外へ出たな。丁度帰りみたいだ」


 雪斗はスマホで時間を確認する。まだ部活の終了時刻までは余裕があるはずだったが、カイ以外建物の中にいる人達もまた外へ出ようとしている。今日は早めに終了ということらしい。


「まあテスト期間も差し迫っているだろうしなあ……よし、それじゃあ行くか」


 雪斗は意を決するように宣言すると、学校へと歩んでいく。とはいえ、馬鹿正直に学校へ潜入して会うわけではない。


『ねえ雪斗、具体的にどうするの?』

「偶然を装って話し掛けるか、こちらに注目してもらう……つもりだけど、俺のことを憶えているのかが問題だな」


 一応、前回戦いを終えて戻って以降、カイとは多少なりとも会話をするようにした。といっても精々教室の中で雑談に混ざる程度だったが、もしそのことを憶えているのなら、気付いて声を掛けてもおかしくない。


「もし向こうが反応を示さなかったら俺から声を掛ければいい。クラスメイトで見覚えはあるだろうし、何かしら応対はしてくるだろ」

『行き当たりばったりだね』

「確かにそうだが、まあどうとでもなるさ。さすがに魔法は使わないにしても、このくらいは何とかできる」


 雪斗はそうディルへ答えつつ、学校へ歩んでいく。カイの足取りはそこそこで、どうやら真っ直ぐ正門から帰るらしい。


「これなら正門を抜けた少し先くらいで、鉢合わせになるかな」


 周囲に人目はあるかもしれないが、特段問題にはならないだろう――と雪斗は思う。それに記憶の返却は一瞬だ。魔力を渡せばそれで終わりであるため、向こうが反応を示した程度の時間があれば実行できる。

 放課後から時間が経過しているため、帰る人がまばらになった正門近くへ雪斗は辿り着いた。そして学校の入口から扉を開けて出てくるカイの姿を肉眼で捉えることができた。


 少しばかり、体に緊張が走る。果たして記憶を戻して大丈夫なのか、成功するのか――様々な不安を抱えながらも、他ならぬ向こうの世界にいるカイに託されたのだ。やりきるしかないと、雪斗は足を前に出す。

 雪斗が正門へと歩んでいく。正門周辺の道はT字路になっていて、カイがどの方向に帰っていくかはわかっている。だから雪斗はそこに先回りする形で道を歩む。


 そしてカイが正門を出て、雪斗へと進んでいく――その時、雪斗の視線に気付いたか、それとも見覚えがあったのか、明らかに視線を向けてきた。


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