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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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帰宅

 帰宅途中、コンビニに立ち寄って少し買い物をしてから雪斗は自宅へと帰った。見慣れた一軒家。けれど今日は少しだけ特別だった。


「色々あったからな」

『なんだか久しぶりだよねー』


 頭の中でディルの声がする。それに静かに頷きつつ、雪斗は家の中へ。帰りが遅くなることは連絡してあったので、特段問題はなかった。

 それから自室へと戻る。部屋着に着替え、荷物をまとめる。明日も授業があるので教科書などの用意はしておく。勉強については――異世界へ転移する前は平々凡々といったくらいだったが、力を手にしてからはみるみる内に成績が上がった。


 別に魔法でカンニングをしたわけではない。雪斗自身は邪竜との戦いという修羅場をくぐったことにより、魔力とは別に生来の能力が上がった。筋肉の動かし方や、効率の良い勉強方法――邪竜との戦いは、それこそあらゆるものから知識を吸収し、強くならなければならなかった。それが元の世界へ戻ってきても雪斗の体の中に根付き、成績を押し上げたというわけだ。

 よって、今は学校の授業を聞くだけでテストの点数が維持できている。模試の成績も良く、担任の先生が言うにはこのまま成績を維持できれば難関大学も狙えるとのことだった。


『カイの記憶はどうするの?』


 ディルが問い掛けてくる。雪斗は自分の体にあるカイの記憶を意識する。元の世界へ戻ってきても、彼の魔力は体の内に残っている。


「休みの日だな……いや、学校へ赴く方がいいのか?」

『微妙なところだねー』

「放課後に行ってもいいけど、時間的に部活動なんかをやっていなければ学校には残っていないよな」


 カイは部活をやっている――剣道部で全国優勝したこともあるほどの腕前だった。とはいえ彼は生徒会長をやっているため忙しく、毎日部活に行っているかどうかもわからない。


(毎日稽古しなくても全国で優勝レベルなんだからバケモノだよな……)


 雪斗は自分のことを棚に上げて呟く――色々なことがあって学校を離れた雪斗だったが、仲間のことについては多少なりとも調べていた。その中で特に注視していたのは二人。カイと、宮永芽衣――メイの二人だ。


 カイは雪斗が転校して以降も完璧で、誰からも尊敬される人物だった。幼馴染みとの関係については半ば断たれてしまったが、それ以外は非の打ち所のない存在だった。

 一方でメイはアイドル活動により全国区で名が知られるようになった。最近はドラマの主役に抜擢され、その演技も好評だった。彼女もまたカイと同様に非の打ち所のない存在であり、その経歴は輝かしいものであることは間違いない。


 ただ、雪斗自身は異世界へ赴いた時の言動を知っているため、あちらの世界にいたメイは現状どのように考えているのか。


「まあ……戻らないことを考えれば、必要のない考えか」

『何の話?』


 ディルが問い掛けてくる。雪斗は「何でもない」と答えた後、


「とりあえず、明日学校へ行ってみるか」

『お、早いね。まあ善は急げと言うし』

「正直、出会ってすぐに記憶をというのもどうかとは思うけどな……いや、勢いでやった方がいいのかもしれないな。出会うのが難しくとも、動向を調べるくらいはいいだろ」


 最近は、月日が経つことでカイについては調べることもなくなっていた。それは転校して環境が変わり、次第にもういいのではないかという考えに至り始めたからだ。

 自分によってトラブルを招いた以上、もう関わるべきではない――そんな風に思い、カイのことについては調べる頻度が少なくなっていた。


 しかし、今は会わなければならない――気が進まないにしても、前の学校へ足を向ける必要がある。


「ただ、強引に会うというのはさすがにナシだからな」

『わかってるって。ま、雪斗の慎重さなら、問題ないでしょ』


 ディルの言葉に雪斗は頷き、


「カイに怪しまれて遠ざかってしまうようなことがあったら大変だしな。魔法が使える以上、強引にやり方だって可能だけど、さすがにそれはしたくない」

『魔法を使っているところを誰かに見られたりしたら大変だしねー』

「そうだな」

『……翠芭達はちゃんと指示を守るかな?』

「大丈夫だろ。少なくとも俺の説明を受けて納得してくれたみたいだし、何より魔法に関する危険性は理解できていた様子だ」

『私は、あの説明の中であのことを語るのかと思ったけど』


 あのこと――雪斗はそれに対し苦笑した。


「まああれはなあ……正直、バレたら面倒なことになるかな?」

『魔法を使うなと言っておきながら雪斗はバリバリ魔法を使っているしね』

「内容を聞けば納得するだろうけどさ……うーん、明日くらいに話しておくかな。隠し事をしておくのは面倒事になるかもしれないし、避けた方がいいだろ」

『そこは雪斗の判断に任せるよ――』


 ここで、雪斗のスマホに着信が。夜も更ける時間帯で誰なのか。翠芭達とは打ち上げの最中に番号を交換したので仲間の誰かという可能性はあった。しかし画面に表示されていた名前は、その誰でもなかった。


「噂をすれば、だな」

『あ、いつものやつだね』

「まあこればっかりは、な」


 雪斗は一度呼吸を整えて電話に出る。


「はい」

『雪斗か? すまないな、こんな時間に』


 男性の声だった。電話越しに聞こえるそれはずいぶんと年季の入った声だとわかる。


『今どこにいる?』

「自宅ですけど」

『そうか。メールを送るから、また調査を頼んでもいいか?』

「いいですよ。今日中にやった方がいいですか?」

『いや、被害も出ていないからとりあえず余裕があれば程度の考えでいい。今回は郊外だし、おそらく誰かが遭遇するという危険性もないはずだ』

「わかりました。資料は確認しておきます」

『頼む』


 電話が切れる。少ししてメールが来て、そこに資料が添付されていた。


「この場所は……ふむ、カイの様子を見に行くついでに処理しておくか」

『なんというか、あの人も大変だねえ……』


 ディルが感想をこぼす。雪斗はそれに頷きつつ、


「まあそのくらいの苦労はあったっていいだろ……さて、明日の予定も決まったし、後は自由にしていいぞ」

『りょーかい』


 ディルは返事と共にその姿を現す。そうして、夜も更けていくのだった。


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