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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第四章

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一つの答え

「反撃が来るかもしれない……それがわかっていても、俺達はやるしかない」


 雪斗は剣を構え『魔紅玉』を見据える。それに迷宮の支配者は頷き、


「ならば、後は君達に任せようか。私は退避していた方がいいか? どちらでも良いなら、見届けさせてもらえると嬉しいが」

「どちらでも。もっとも、被害を受けたとしても、文句は言うなよ」


 迷宮の支配者は雪斗の言葉で頷き、少し距離を置いた。

 そこで雪斗は翠芭へ視線を注ぐ。彼女はゆっくりと歩み、雪斗の隣へ。


「リュシール、貴臣、始めようか」


 刹那、リュシールは光となり、貴臣は杖を地面へとかざして魔法を発動させた。雪斗がリュシールの力により『神降ろし』を発動させた直後、ディルの魔力と共振して迷宮を鳴動させる。


「魔力だけでこれか……さすがだな」


 褒めそやす迷宮の支配者の言葉。ここで翠芭が聖剣の力を活用し、魔力を発露。それもまた迷宮を揺らすほどの力を発揮し、迷宮最深部に恐ろしい程濃密な魔力が生じる。

 それに対し『魔紅玉』は――魔力が少し揺らいだ。雪斗達の力を感知し、警戒しているのか。それとも、単純に魔力に反応しているだけか。


「一撃で仕留める」


 雪斗の言葉に対し、翠芭は頷き応じる構え。

 直後、雪斗達の力が一つに収束し始める――雪斗が持つディルと聖剣とを融合させることはできない。しかし、魔力の刃を伸張させることにより、その光同士が結びつくことはできる――これが、雪斗達が出した答えだった。


 雪斗と翠芭の力が一つに合わさり、さらに室内を揺らす。邪竜でさえ、一瞬で滅してしまうかもしれない――そんな風に雪斗が思えるような強大な力。様々な戦いの果てに辿り着いた境地。ある意味、これは一つの答えかもしれない。


「――いくぞ」


 雪斗の言葉と同時に、翠芭も動く。両者は一斉に剣を掲げ――城内で訓練してきたように、同じタイミングで剣を振り下ろした。

 少しでも動きがズレれば、力にも揺らぎが生じる。それをしないために、力を維持しながら自在に振れる訓練が必要だった。結果、雪斗達は真っ直ぐ、力をロスすることなく、振り下ろすことができた――


 そして光の刃が『魔紅玉』に直撃する――ガガガガ、と魔力同士が衝突する音。迷宮を管理し、願いを叶えるだけの力を持っている器。それが意思を持っているとは思えないが、まるで自分の身を守るように、雪斗達の攻撃を防御していた。


「やっぱり、一筋縄ではいかないか……!」


 雪斗はそう呟くと、さらに腕に力を入れる。


「翠芭、まだいけるか!?」

「大丈夫!」


 心強い返答を聞いて、雪斗は即断する。


「ならさらに力を入れてこのまま振り抜くぞ!」


 雪斗は握りしめるディルへさらに力を注ぐ。天神であるリュシールとディルの力は上手く変換して問題ないようになっている。この状況を維持することができれば――訓練で長時間応じるようにはしていたが、果たして『魔紅玉』を破壊するまでにもつのか。

 バリバリバリ、と『魔紅玉』から魔力が溢れ、雪斗達の剣を防ぐ。防衛機構――それが完全に発動し、剣を押し留めている。雪斗達にできることはそう多くない。全力を出しながら現状維持を行うのが最善であり、


「貴臣!」

「やっている!」


 そこで貴臣の出番だった。不測の事態――あるいは『魔紅玉』に防衛反応があった場合、彼が霊具により分析を行う。この状況は想定済みであり、貴臣自身もどう観測して判断すればいいのかは勉強してきた。この場合は、


「単純な魔力による結界だ! ただ、それを突破しない限りは破壊できそうにない!」

「力押しってことか……! 何かしら特別な仕掛けでもあるかと思ったら……!」

『とはいえ、やることは決まったね』


 ディルの声が雪斗の頭の中に響いた。


『でも、破壊できる? 今私達は、迷宮を管理する魔力ごと斬ろうとしているわけでしょ?』

「やるしかない……というだけの話だ。もし今、光の剣を解いて態勢を立て直そうとしたら、反撃が来てもおかしくない」


 防衛機構である以上、何かしら攻撃する手段だってあるかもしれない。よって、決めるのであれば一撃――そうリュシールからは教えられていた。

 とはいえ、、現状ではそれで終わる可能性は――けれど今しかないと雪斗は思う。


(全力で力を行使できるのは、この一度しかない……なら、その一回で全力をぶつけるしかない!)


「翠芭! まだ出力は上げられるか!」

「まだ……いける!」

「なら、フルスロットルだ! 呼吸を合わせてから、振り下ろすぞ!」


 指示に翠芭は頷くと、雪斗が力を発揮するのと同時、呼応するように魔力を高めた。

 さらに光の剣が鋭く強固となり、『魔紅玉』へと襲い掛かる――だがまだ届かない。結界を徐々に押し込んでいるのは感触でわかる。しかし、その速度はジリジリといった程度で、この調子であれば雪斗達が力尽きるのが早いか。


(あと一手……何か必要か?)


 ただ、少しずつ削っている以上、何かしらきっかけがあれば近郊は大きく崩れるはずだった。それは貴臣の魔法か、それともリュシールやディルの援護か。それとも、雪斗と翠芭がさらに奮起することか。

 まだ、いけるのか――雪斗は自問自答する。余裕はほとんどない。連係攻撃という神経をすり減らすような作業に加え、魔力を振り絞っている。邪竜との死闘の時のように、全てを出している。だが、それでもまだ一歩足りない。


「けど、ここで……終わるわけには……!」


 雪斗はそこで、仲間達のことを思い浮かべた。今回共に召喚された者達。そして、以前の仲間――この戦いは、全てを終わらせる――雪斗達の成してきたことの集大成。ここで砕けなければ、全てが無為に帰すかもしれない。

 そう思った時、雪斗は背後に様々な人がいることを理解する。それを思った瞬間、限界の一歩先まで到達できそうな気がした。


「翠芭!」

「わかってる! さらに――全力で!」


 彼女は叫び、雪斗と同じように限界を超えた力を発揮した。同じ事を考えたか――そう雪斗が悟った時、ほんのわずか、『魔紅玉』の阻む結界が押し込まれた。

 いけると確信した直後、雪斗は叫ぶ。


「い、けぇぇぇぇ!」


 声を張り上げた瞬間、翠芭の力が加わり、剣を振り抜く。刹那、白い閃光が室内を満たした――


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