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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第四章

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彼への依頼

 そこからは、雪斗の独壇場――とまではいかなかったが、ディルの本質を利用し魔物を屠り続けた。


 二ヶ月以上戦い続けたクラスメイト達は、霊具の扱いについてはほぼマスターとしたと言って良い。しかし霊具を手にして戦う度にとある問題がつきまとう。それが魔力をどれだけ維持し、戦い続けることができるのか、という点だ。


「ふっ!」


 だがその問題について雪斗は考慮する必要性が皆無だった。ディルの能力をきちんと制御することで、最善のパフォーマンスを維持し続けることができた。集中力が途切れることもなく、戦況を常に分析して場に沿った動きをとり続ける――大軍との戦いにおいても延々と戦い続けることができる。おそらく現状、雪斗達がもっとも欲していたその力を、手にすることができた。


 前線で戦い続け、やがて魔物がいなくなった――それでもなお、雪斗の体には余裕が残っていたし、丸一日くらいは戦い続けることができるだろうと踏んでいた。


「大丈夫か?」


 カイが問い掛けてくる。力強い頷きで雪斗が応じると、


「そうか……僕らにとっては垂涎の能力だな。とはいえ油断はしないでくれよ」

「わかってる」


 さすがに単独行動などはできない。雪斗は罠などを警戒し、迷宮をさらに進み続けることになった。






 結果として、その日のうちに一つの階層を制圧することができた。結界を構築し自分達の領域を広げた後、雪斗達は地上へ帰還した。

 死者はおろか大けがをした者もいないという最大の戦果。とはいえ雪斗自身これが続くことはないだろうと考えていた。


 邪竜は雪斗の能力をつぶさに観察していたはず。能力の本質が継続戦闘能力の強化であり、それがどこまで続くのかなども、理解したはず。となれば例えば雪斗だけを孤立させるために罠を張るなど、搦め手を警戒する必要性がある。

 城内の部屋に戻り、雪斗はそういう風に結論づける。ひとまずはカイと相談して――と頭の中で算段を立てていると、ノックの音が舞い込んだ。


 雪斗が返事をすると扉が開き現われたのはカイとレーネ。おそらく今後の相談だろうと推測した後、


「どうした?」

「雪斗の立ち回りについて、相談がある」


 口を開いたのはレーネ。雪斗はそれに応じる構えで、話を始める。


「カイからユキトが手に入れたディルの能力を聞いた。迷宮……いや、邪竜との戦いにおいて、色んな場面で活用できる能力であることは間違いない」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……どうしたんだ?」

「そこで今後の相談だ。ユキト、これからは迷宮ではなく地上をメインに戦ってもらえないだろうか?」


 相談の内容に雪斗は多少面食らった。予想とは大きく異なる展開だったためだ。


「地上で……?」

「邪竜そのものは迷宮の奥に引っ込み、ユキトを含めカイをリーダーとして戦っているわけだが、地上でもまだまだ邪竜の影響下にある魔物達が暴れている。中には明らかに邪竜の指示を受けて軍勢となっているものもある。そういった敵に対し、各国は霊具使いを派遣して事態の収拾に努めているわけだが……戦況を覆すには、もう一手必要だ」

「それが、俺だと?」

「ユキトを含め、数名の仲間で編成する。無論、各国の手も借りる……カイが聖剣を持っているため邪竜と戦う役目を担っているわけだが、それでは外側の敵に対処できない。邪竜の配下については聖剣の力でなくともどうにか対処できるため、来訪者達についても迷宮の内と外……二手に分かれるべきじゃないかという意見が出ていた」

「そこで俺の能力に目をつけて……ということか?」


 こちらの疑問に対しレーネは小さく頷いた。


「カイは邪竜との戦いがある以上、迷宮の中で戦わなければならない。よって外側はユキト、そちらが対処してもらえればと思っている」

「その口上だと、なんだか俺がリーダーみたいだけど」

「そのような形で、と思っている」


 レーネの言葉に雪斗は体に力が入った。唐突にリーダーに任命されてしまったわけだが、


「とはいっても、雪斗に全て背負わせるわけじゃない」


 カイは雪斗へ告げる。


「その能力を見込んでリーダー的な立ち位置を頼みたいということだ。前線で戦うのは確定だし、後方支援などをしてもらう際の折衝役とかは別の人間に頼む予定だ」

「もう他に誰か決めたのか?」

「現時点で候補に入れているのは――」


 前置きしてカイは名前を挙げていく。そこにはこの国の騎士の名もあったし、クラスメイトの名もあった。


「大丈夫なのか? 人数を減らして」


 迷宮に対し懸念を表明するが、カイは「問題ない」と応じた。


「迷宮における戦いでは、むしろ人数が多すぎても……と僕は懸念していた。今日の戦いも人数が多いために無駄な部分も多かった。加え、邪竜の戦い方も変えている……僕自身、状況を統合して決断した」

「それに」


 と、レーネは苦笑しながら、


「打算的な話になってしまうが、ここで来訪者達を動かすことで各国へ恩を売ることができる。これまで邪竜を迷宮へ追い込むために外で戦い続けたこともあるわけだが、ここでユキト達が動いてくれれば、各国も協調してくれるだろうし、迷宮へ他国の霊具使いがやってくるかもしれない」

「そういうやり方で戦力も増やす……か。それに外が片付けば、迷宮へ支援してくれる人も増えるだろうし」

「そうだな」

「――ただ一つ、言っておきたい」


 カイは重々しく語り始める。


「迷宮の外であるため、危険性は低い……と思ってしまいそうだが、僕としては下手すると外の方が危険まであると思う」


 口調に加え厳しい表情でカイは続ける。


「おそらく、邪竜の魔物と戦うため転戦する羽目になる。継続戦闘能力があるからこそユキトへこの役割を託したいと思っているけど、各地を回る以上、過酷な戦いになるのは間違いない。迷宮内は危険だけれど、安全圏を確保し危なくなれば引き返す……そうして体を休めることができる。けれど外では、そういう場合ではない機会も多いだろう」

「……そうだな」

「けれど、外ではどうなるかわからない。場合によっては、過酷な戦いになるだろう……それでも、受ける気はあるか?」


 確認の問い掛け。カイとレーネが視線を送る中、雪斗は――ゆっくりと、口を開いた。


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