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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第四章

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剣の力

 イメージは黒。白という姿がカイ以外に似合わないだろうという勝手な想像に加え、自分自身が――彼と並び立ちたいという深層的な意識が黒という色をイメージしたのかもしれない。自分自身はカイのようにはなれない。しかし、その背中を守るくらいは――対等に並ぶために、自分は対極な存在だと想像したのかもしれない。


 ともかく、そのイメージによって雪斗の装備は形作られた。両腕には腕に巻き付く革を模した小手。鎧はなく体を覆うのは黒衣――動きやすさを優先した物で、足にはブーツ。

 それはまさしく、カイと対極を成す――自分自身がカイの代わりになることはできない。けれどせめて、対等に戦うことができるように――そんな願いを込めた変化だった。


 乱戦の中で、雪斗は仲間や魔物の間をすり抜けるように疾駆する。縫うようにして前線に躍り出た直後、カイへ放たれようとした斬撃を、雪斗がガッチリと受け止めた。


「ユキト……!?」


 カイが驚愕の声を漏らした直後、雪斗の剣戟は魔物の芯を捉え、両断することに成功する。威力も十分。姿が変わったことでディルの能力を完璧に利用できるようになったのかもしれない。


「また、ずいぶんとイメチェンしたな」

「まったくだよ……援護する。それでいいよな?」

「ああ、頼む」


 頼む、という言葉を聞いて雪斗は剣を握り締める拳に力を入れる。直後、後続から魔物が押し寄せてくるが、雪斗は剣を構え直し迎撃を開始する。

 先陣はカイ。その剣が一閃されると等しく魔物は潰えていくが、やはり疲労が溜まっているのか討ち漏らしもあった。いや、もしかすると邪竜側が一計を案じてカイが対応できない編成を行ったのかもしれない。


 けれど今回はそれをはね除けた――理由としては雪斗の存在。邪竜としては雪斗が地獄を脱出した光景は見ていたはずだ。しかし、それが二度は続かないし、今回は後衛だったため、油断していた――予測がつかなかった戦力増強により、虎口を脱したのだ。

 カイが倒せなかった魔物に狙いを定め、雪斗は刃を振るう。手負いの魔物であるために当然一撃なのだが、以前ならばこれでも倒せなかった場合があった、と雪斗は心の底から思う。


 どうやらディルによって、自分は相当強くなったのでは。そんな考えと共に、自分を戒めるべく深呼吸をした。邪竜が相手である以上、自分がどれほど強くなっても大きくは変わらない。強くなったために増長し、調子に乗るのは厳禁だ。

 やがて戦局は雪斗達へ傾き、とうとう全滅させることに成功した。仲間達が息をつき疲労を回復する間、カイは油断なく進行方向を見据えている。


「大丈夫?」


 雪斗は問い掛ける。カイはもちろんとばかりに頷き、


「ユキトの方こそどうだ? 新しい武器……ディルは強力だし、体への負担は大きいと思うが」

「そうなんだけどさ……力がみなぎってくるんだよ」


 そういえば、前回地獄をくぐり抜けた時もそうだった。剣を振るい続けても一切疲れない。だからこそ集中し続けて突破口を見出した。


「もちろん、この力で増長しないように自制はしているけどさ」

「いい傾向だと思う……ふむ、そうだな。ディルといったか?」

「うん」


 横に少女の姿をしたディルが現われた。


「何が訊きたいの?」

「君の能力についてだ。剣を持つ物にどういった効果を与えるか……その詳細は?」

「うーん、私としても単に魔力を注いでいるだけで何か仕掛けがあるわけじゃないんだよね」

「なるほど……では質問を変えようか。力を注いでいる相手……ユキトにはどのような変化を感じ取れた?」

「そうだね……前回この迷宮を脱出した時、ユキトの力は一切衰えることがなかったね。だから魔物を延々と倒し続けることができたみたいだけど」

「なるほど、そういうことか」

「カイ?」


 雪斗が聞き返すとカイは笑みを浮かべ、


「単純な話だ。ディルという武器の特性……それは継続戦闘能力の向上だ。疲労を打ち消し、戦い続けることができる……そういった能力のようだ」


 言われて、雪斗も理解できた。確かに、それなら――最高のパフォーマンスを維持し続けることができるのであれば、雪斗だって剣を振るい続けることができる。


「身体強化においても種類があって、スタミナを強化するという効果を付与するケースがある。僕らだって霊具なんて恐ろしいものを使っている以上、そうした効果を享受しているはずだが、ディルの場合はそれがとびっきりらしいな」

「一昼夜延々と戦い続けることができる、と」

「そういうことだね」


 言われ、雪斗としてはこの上ない能力だと思った。現状、クラスメイトもこの迷宮攻略で苦戦し、犠牲者も現われている。この中で戦線を維持し続ける者がいれば――


「ユキト」


 そこで、カイが声を上げた。


「わかっていると思うが、その力を利用して戦うとしたら……修羅の道だよ」

「ああ、わかってる」


 応じはしたが、既に答えは決まっていた。


「霊具を活用して、できる限りのことをするのは当然だろ? それはカイだってそうだし、他の仲間達だって同じだ。俺も例外じゃない」

「……そうか」


 決意は固いと見て取ったカイは、小さく笑みを浮かべた。


「ユキトの能力はどうやら、状況を変える一手になり得るかもしれない……が、問題はその能力がどこまで使えるか、だ。ユキトが語った通り一昼夜戦い続けることができるのであれば、僕達にとってはこの上ないものだが……」

「大丈夫大丈夫。やれるやれる」


 ディルがのんきに声を上げた。そんな様子に当の雪斗は苦笑する。


「お前な……自分の能力なのに無責任じゃないか?」

「だって私だってこうして他者に力を与えたのユキトが初めてだし……」

「能力の検証は必要だ。それまでは、戦線をある程度維持できる能力だと解釈しよう……ユキト、戦える?」


 問い掛けは、前線に立って欲しいというもの。雪斗の答えは決まっていた。


「ああ、いける」

「なら、雪斗は僕の後ろへ。邪竜も僕らの存在によりやり方をこれまでとは変えているらしい。こっちもそれに対応すべく、隊列を組み直そう」


 それからカイは的確に指示を送る。そうした中で雪斗は自分に何ができるのか。この能力をどれくらい生かせるのか――それを考えながら、カイの力になろうと改めて胸に誓っていた。


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