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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第三章

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迷宮の悪魔

「いよいよだな……」


 雪斗がそう呟くと同時、正面から魔物の気配。やがて前方から現われたのは、人間の四肢を持った悪魔。武器は所持しておらず、その肉体そのものが武装のようだ。

 これまで遭遇してきた魔物と比べても明らかにその力の度合いが高い。この階層迷宮における精鋭クラスかもしれない。


「迎撃態勢に!」


 雪斗の号令に従いそれぞれが動き始める。途端、悪魔が咆哮を上げ襲い掛かってくる。

 その奥にはさらなる個体が二体。しかし魔力の多寡を探ればまだいる。ゆえに最大限の警戒と共に、雪斗は剣を構える。


 直後、先陣を斬ったのはナディ。迫る悪魔に対し真正面から応じるようで、真っ直ぐ最短距離を突っ走り悪魔へ挑んでいく。その勢いに雪斗は若干不安を感じたが――


「ふっ!」


 気合いと共に振りかざされた彼女の拳と、悪魔の拳がぶつかり合う。直後、ビキビキと音が鳴り響いたかと思うと、悪魔の腕が大きく崩れた。

 痛覚でもあるのか、悪魔は叫ぶ。そこへ間髪入れずにナディが悪魔の頭部へ拳を突き立てた。それにより頭部も砕かれ――悪魔は消滅する。


「さすがナディだな――」

「ダイン、下がって!」


 茶化すような物言いのダインに対し、ナディはそう警告する。


「相当硬いわよ、こいつ……二回の攻撃で仕留めたけど、ほぼ全力で魔力を注いでのことだし……少しでも力を緩んでいたら、たぶん腕も破壊できなかった」

「――ナディがそう言うのなら、間違いないでしょうね」


 イーフィスが告げる。それと共に放たれた魔法により、後続の悪魔達が動きを止める。

 魔法の威力はイーフィスとしてはかなりのもののはずだが、悪魔は健在。ナディの言う通り、耐久力は高いのだと雪斗は確信する。


「やっぱり迷宮はここからが本番というわけか……ディル、周辺の状況は? 目の前にいる以上の悪魔は出現するか?」

『微妙なところだけど、とりあえず妖しい雰囲気はないなあ。そもそも罠のようなものも見当たらないからね』


 邪竜との戦いでは魔法により構築された罠などが満載だった。それこそ突然魔物が出現することなどザラにあったため、とにかく気を張り詰めて魔力を探り続けなければならなかった。

 雪斗はその戦いを思い起こし同じように動いているのだが――前回の戦いと比べれば、罠もなく魔物と交戦するだけという状況。とはいえこんな状況が続くとは思っていない。


 ナディが二体目と交戦する。なおかつシェリスが前に出て、二体の内片方を相手にし始めた。

 彼女の拳とシェリスの光が悪魔を貫く。威力は十分で両者共にその体を砕くことに成功したのだが――表情はずいぶんと厳しい。


「強いわね」

「ええ」


 ナディの呟きにシェリスは同意する。しかしひとまず倒した――と思った矢先、さらに悪魔が出現。

 際限なく出現するのであれば、一度退却し様子を見るべきところなのだが――あいにく状況がそれを許さない。


「俺が出るか?」

「ユキトはまだ動かないで」


 ナディはそう告げると拳にさらなる魔力をまとわせる。それは青い光を生み、視界には魔力の渦が彼女の両腕に収束しているのが見られた。


「ここは私が……シェリスは不測の事態に対して備えておいて」

「わかった」


 指示に引き下がるシェリス。新たに出現した悪魔は合計で三体。だがそれに対しナディは、さらなる魔力収束により応じる。

 難敵であることは間違いないが、邪竜との戦いと比べればまだ余裕はある――ただここで疑問が一つ。アレイスは目の前の悪魔についてはスルーしたのか。


(余計な戦いを避けるようにして動けるのならそうするか……こうなると彼に追いつけるかどうかわからないな)


 最悪、『魔紅玉』を手にしたアレイスと戦う必要が――そんな想像をした時、前方にいた最後の悪魔にナディがトドメを刺した。


「……ふう。とりあえずどうにか倒したわね」


 呟きながらナディは周囲を確認。さらなる増援が来ないことをしっかり見た後、雪斗達へ口を開いた。


「ダインとかだったら倒せなくてどうしようもなかったでしょうね」

「俺が無理だったらディーン卿とかもそうか?」

「ふむ……見たところ微妙ではあるが、私やゼルが所持する霊具では厳しい戦いを強いられることになるかもしれないな」


 一定以上の霊具がなければダメージをまともに与えられないとしたら――


「ま、ここまで来た以上は逃げ帰るつもりもないが……ユキト、俺達は役に立つのか?」

「そこは役に立つと豪語しなさいよ」


 ナディからの横槍。ダインは「そう言えればいいんだが」と肩をすくめる。


「ともあれここまで来た以上は進むさ……ユキト、ついていくってことでいいんだよな?」

「ああ、もちろん……先へ行こう」


 雪斗は指示をした後、歩き出す。ディルに逐一情報はあるのかと尋ねるが、彼女もまた罠などはなくひとまず問題ないという返答だった。


「もうすぐ下の階段が現われるけど……リュシール、アレイスは?」

「まだ発見できないわ……それと一つ報告。『魔紅玉』が安置されている場所の観測ができた。結論から言うと、どうやら強力な魔物がいる。邪竜級ではないにしろ、苦戦すること間違いなしでしょうね」

「そこにアレイスはいるのか?」

「まだ辿り着いていないわ……ここまで来ておぼろげに観測できるけど、詳細な場所はまだわからないわ」


 居所が知られれば致命的になってしまう以上向こうも注意しているだろうし、詳細がわからないのは仕方がない。


「とにかく前進あるのみだな……」


 雪斗がそんな風に結論を述べた時、階段を発見。ただし下り階段には強烈な魔力を感じ取ることができた。


「確か次の階層における構造としては、入口付近がかなりの広さがあったはずだ。そこで敵がわんさか待ち構えている……という線は?」

「数はいるようね……おそらく先ほどの悪魔よ」

「俺やリュシールが頑張ればどうにかなるけど……ナディ達はまだ温存しておけと言いたいだろ?」

「そうね」


 肯定するナディ。よって雪斗としては何も言うことができず、口をつぐんだ。

 その時、魔物の雄叫びが階段に反響して聞こえてきた。待っている――そんな風に敵が語っているようにも聞こえてくる。


 だが――雪斗達の答えは変わらなかった


「……行こう」


 全員に声を掛ける。それと共に剣を強く握り締め――雪斗は、いつ何時どんなことが起きても対処すべく、静かに刀身へ魔力を注いだ。


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