10月8日 ①
カーテンの隙間から眩い太陽の光が射し込む。浮かび上がる光からは埃が舞っている様子が伺えた。
「ん…ああ」
そんな光によって意識を取り戻し、手荒に携帯電話を掴み時刻を確認する。
「ああ、まだ7時か…まだ寝れるな。」
スマホに表示されているのは8時のはずだが、いっちは既に時刻への興味をなくしていた。ずっと抱きしめていたであろうドンキーコングの人形が苦しそうな顔をしているのだが、構わず首元に抱きついて二度寝の体勢に入り…。
眠りについた。
「!?!?」
声に出ない叫びをかまして目を覚ます。時刻は10時。意識はドルフィン岬の水から出たかのごとく覚醒しているのだが、それどころではない。1限はもちろん、2限に間に合うかすら危うい。
とにかく制服をかき集める。すぐ家から出る。走る。走る。なんでこうなった。意味がわからない。とにかく2限の科目は成績が危うい。誰か助けてくれ。
全力疾走ののちになんとか高校に到着した。その疾走ぶりは今まで練習してこなかったノーアイテムショートカットに連続で挑むようなものではあったが、うまくいったようだ。
ただ1つ詰めが甘かった。甘く見ていた。高校に到着すれば勝ちだと思っていたのだ。
「いっち!そんなに急いでどうしたんだ?」
「いや急ぐだろ。お前はなんでそんな余裕なんだよ。」
「ふふ…。面白い質問をするね。決まっているだろう?僕は風であり、風は僕であるからだよ。」
目の前に立つのは学校で一番のイケメン。黙っていれば学校中の女子は虜にできそうな男である。
「それよりいっち、例の件、そろそろYESを貰いたいんだが。」
神妙な表情になり、イケメンとんがりは、耳元でそう囁く。
そして同時に2限開始のチャイムが校内に響き渡るのであった。