10月7日
右、右、左、左。
ワリスタの第一カーブでのサンドリをするような足取りで少年は帰路についていた。
部活でくたくたであったが日課は忘れない。ワリスタでの入力と似たような動きで帰ってワリスタのTAを帰宅早々するのが少年の日課だ。
いまや3ヶ月以上続けている日課。初めは奇妙な足取りに困惑する目も少なくはなかったが、今では皆慣れたものだ。
「低空からのJAスルー!」
玄関に普通の生活では目にしないような角度で滑り込みながら靴を華麗に脱ぎ捨ててダイブ。…のつもりではあったが少年の膝にできた傷は少なくない。
しかし階段を登る足取りは軽い。なんだか今日は更新できる気がする。
両手を上にあげ競技終わりの選手さながらのポーズを決めた。のだが…。
「はああ!?サンドリ吸いついたわ!!」
見てしまった。ワリスタの俺の記録が確かに抜かされるのを。目の前で小柄な少女にsubられるのを。
「ああ、いっち帰ってきたの?おかえり」
「おかえりじゃねーんだよ!俺んちだろ!?…というより俺の記録は…?」
「え?あぁ、更新意欲を刺激されたでしょ?」
「-----」
呆れたのか、幼馴染である少女の笑顔に圧倒されたのか、少年いっち自身にもわからないままいっちはSFC虹のドッスンのように表情を無くすしかない。
「そんな硬い表情してどうしたの?」
何も理解していないのかこの女は。
「ま、そんなわけで今夜は徹夜で頑張ってちょー!あ、お母さんお邪魔しました!」
周りを巻き込んで荒らして、笑顔で去っていくのだから、呆れたものだ。お前はカラカラ砂漠の蟻地獄か。
「とりあえずゴーストでも見てみるか。」
5時間かけて更新したコースが数十分で更新されたことに関しては悲しさを隠しきれないが、だからといって怒りに走ることはできない。
ゴーストを垂れ流しにしながら、少年は暖かい手のひらに包まれていくように眠りに落ちていった。