傷心の果てに2
「旦那への罪悪感がある限り無理ですね。罪に対する罰心に私の心はなっているのですよ。そこの処を理解して下さい」と客は言った。
ホスト亭主が助言する。
「でも人の心なんか分かりませんからね。醜い心で貪欲に長生きするのも考え物でしょう。それならば、やはり清く正しく優しい心の方が数段増しですよね」
客が首を振り答える。
「私はエゴ剥き出しの醜い心を自覚していたから旦那を殺し、その保険金でぬくぬくと遊んで暮らそうと当初思っていたわけだし。それなのに意に反して私の心がこんなに清く優しいのだから、貪欲な私は私の清い心を心底憎んだわけです。でも仕方ない。実際に寂しいのはどうする事も出来ないし。こんな心になっちゃて、リフレインして醜い心には戻れないし。こんなどうしようもない寂しさを紛らわす為には、旦那の後を追うしかない自分がいるわけだし」
ハイボールのお代わりを作ってから客の前に差し出しホスト亭主が尋ねる。
「清い心のままに長生きしてみてはどうですか?」
客が再度苦笑いしてから即答する。
「旦那への罪悪感がある限り無理ですね。罪に対する罰心に私の心はなっているのですよ。そこの処を理解して下さい」