表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

傷心の果てに

「醜ければ良かったですよ。醜い心ならば長生き出来たのだから」と精神病の客は苦笑いしてからホスト亭主に言った。

拒食症を併発し酷くやせ細った中年の女性客が袖をめくり上げ、リスカで傷付いた己の手首をホスト亭主に見せて来て言った。





「旦那が投身自殺してから、この癖が抜けなくなっちゃって。私、旦那に随分と酷い仕打ちをしていたのだろうなと、そう考えると、手首切るのが癖になって、その自虐趣味と言うか、それが旦那の苦しみを分かってやる唯一の手立てだと思うわけですが、貴方はどう思います?」





精神を酷く病んでいる客を前にしてホスト亭主が言葉を慎重に選びながら言った。





「でも死んだ旦那さんが苦しんだのは貴女だけのせいではないでしょう。違いますか?」




めくった袖を戻し、客が言った。





「ここで初めて告白しますが、私は旦那を生命保険にいれて、徐々にいたぶり虐め抜き、生殺しにしてから、保険金目当てに投身自殺に追い込んだのだけれども、人の心なんか分からないと言うか実際問題旦那が死んでみると、心にボッカリと穴が開いたと言うか、寂しくて寂しくて、いたたまれなくなり、入って来た億に上る保険金も、そんな寂しさに吸い込まれるようにホスト狂いして使っちゃって、気が付いてみたら、私も旦那と同じように精神病になっちゃって、その精神病に食われるように私お金を湯水のように使って、それが旦那への罪滅ぼしと言うか、この保険金を使い切ったら私も死のうかなと、そんな風に考えているのだけれども、貴方どう思いますか?」





ホスト亭主がスタンスを置くように言った。




「貴女は自分を醜いエゴ剥き出しの強欲だけの女だと思っていたのだけれども、実際は清く優しい心の持ち主だったのですね」





客が苦笑いしてから言った。





「醜ければ良かったですよ。醜い心ならば長生き出来たのだから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ