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事件報告書File.13「同位殺人」

 ――七月二十日 午後六時四十八分。

 東京都品川区 プリンセスホテル 一○二四号室。


「お母さん落ち着いて! もう、しっかりしなさい!」

 園城寺おんじょうじ あきらは、先ほどから動物園の熊のように室内の同じ場所を往復していた母親を叱りつける。怒鳴りつけたと言ってもよいほどの声量だ。

「あ、晶ちゃん。わたしどうしよう……」

 今度はホテルの部屋の豪勢な絨毯に貼り付いた女性を、晶は呆れた顔で見つめていた。

 娘のスカートの陰に隠れようと試みているのは、金髪碧眼の絶世の美女だった。背中の大きく開いた赤いドレスが目立っている。透き通るような白い肌には染みひとつなかった。

 これが、自分の母親なのだ。

 潤んだ目を娘に向けていた。長い睫毛が何度も瞬く。真っ白な首元に、ダイヤのネックレスが煌めいていた。大きな石が豊かな胸の上で転がる。見た目からは晶と親子だとは感じさせない。二十歳代前半と言われても納得してしまう若々しさだ。

 娘の方の姿は、黒いエナメルの靴。黒いニーハイソックス。黒い短いスカート。黒い半袖のセーラー服。そして、長い黒髪は腰まであった。全身黒ずくめと云う学校指定の格好だ。

 セーラー服の襟の白いラインと、胸の白いスカーフが目立っている。実際の年齢よりも大人に見られてしまう晶は、学院の制服は自分に似合わないと感じていた。

「ホラ! 立ちなさい!」

 言うことをかない我が儘たっぷりに育った大きな幼稚園児の腕を取って、床から引き剥がす。

「だってぇ……」

 この期に及んで、まだ言い訳を口にしようとしていた。

「このパーティーは、お母さんが主役なのですよ! もうすぐ時間です。ハイ! 行きなさい!」

 母親の大きめのお尻をペチンと叩いて、部屋から送り出す。晶は腕時計を見た。パーティーの開始時刻は午後七時だった。とっくに会場に到着してなくてはならない時間だ。

 腕を組んで、ドアの前に立つ。

「あ、晶ちゃん……」

 一人で会場に向かうのが余程心細いのか、エレベーターに向かう短い距離で何度も何度も娘を振り返る。

「お母さん! 二十階よ!」

 ドアの前で仁王立ちの晶は、母親の向かうべき階数を指示する。右手の人差し指は天の方向を指し示していた。二十階の場所には、このホテルの最大の宴会場「蒼龍の間」がある。エレベーターを降りれば目の前だ。バカでも分かる。

 エレベーターが閉まるまでを見届けた。母親の寂しさに満ちた青い目が隠れていく。少しばかり心が痛んだ。

 でも、これで帰れる――晶はそう思っていた。


 園城寺おんじょうじ パトリシア――自分の母親。世界的なチェロ奏者であり、高名は極東の島国にも轟いている。明日は奇しくも本人の誕生日であった。

 今日は、誕生祝いとコンクールでの受賞祝賀を兼ねた盛大なパーティーが開催されるのだ。

 今年で何歳だっけ――母親の年齢を考えながら、部屋に戻ろうとドアに向かう。晶は固まっていた。

「バカは……私の方だ……」

 この部屋のカードキーは、ドアの向こう側にある事に今更ながら気が付いた。母親のパトリシアの高級バッグの中だ。

 ドアのレバーを何度もガチャガチャ動かすが、非力な晶ではピクリともしない。

 オートロックの部屋から閉め出されてしまっていた。

 晶は自分の両手を見る。財布も携帯電話も部屋の中に置いてあるので、自宅に帰ることすら出来ない。電車賃もタクシー代もない。嗚呼……両手で自分の頭を押さえる。

 今回のパーティーには、園城寺家の人間は一人も招待されてなかった。娘の自分ですら員数には入っていない。パーティー会場に向かっても、入り口で追い返されるのが関の山。招かれざる客なのだ、自分は……。

 アンナ・大鷹おおたか――やり手の伯母おばの顔を思い出す。パーティーの主催者。国内大手企業グループの社長の妻の座に収まっている伯母。

 旧姓はアンナ・フォン・ハノーファー・カレンベルク。母の実姉。パトリシアと同じく、自分の通う学院の創設者の孫なのだ。

 警察官である父と、音楽家である母の結婚。周囲には猛反対されて、今でも園城寺家とカレンベルク家の関係は険悪だ。断絶していると言ってよい。

 しかし、母から――「晶ちゃん! ホテルに来て! 大事件!」――呼び出された時には何事かと思った。取るものも取り敢えずに、はせ参じた。そこにはパーティを前にして、駄々をこね出す大きな子供が居たのだった。「皆の前で演奏するのが恐い」と言っては泣き出す。母はもう、不惑の年代に突入しているのに……。

 自分はそれだけで呼ばれた。母から持ち込まれた厄介な仕事は終了した。でも、帰るに帰れない。ホテルのフロントマンに身内の恥を告白して、鍵を開けてもらおう。全ては母の所作にしてしまう――チャッカリ者の晶はそう考え、エレベーターホールに向かっていた。


「チン!」

 タイミング良くエレベーターが到着する。扉が開き、中からゆっくりとワゴンが出て来た。ルームサービスなのだろう。ホテルの女性従業員が、重そうな手押しワゴンを慎重に動かす。小柄な彼女は、晶を認めて会釈をする。しかし顔を背けていた。少し失礼だな――晶は、そんな印象を持って、脇に避け通り過ぎるのを待つだけだった。

 従業員は古風なメイド姿をしていた。このホテルの正式なコスチュームなのだろうか。黒い長めのワンピースの上に、白いエプロンドレスを羽織っている。頭にも白いカチューシャを着用していた。

 可愛い姿だな――晶は微笑んで、女性メイドの後ろ姿を見送っていた。

 そんな間に、三基あるエレベーターのカゴは全て他階に移動していた。階下に向かうボタンを押そうと手を伸ばす。


「ガチャン!」

 何かが割れる派手な音がした。晶はその方向を見やる。先ほどの女性従業員が、ホテルの廊下にお皿を落としていた。

 フカフカの毛足の長い高級絨毯は、くるぶしまで埋まってしまいそうだ。どう落とせばお皿が割れるのだろうか……晶は、破片を拾う彼女に親切心で声を掛ける。

「手伝いましょうか?」

「……」

 相手は無言だった。

 従業員は長いスカートを床に這わせて、黙々と作業に集中していた。白いレース編みの手袋が小さな欠片を拾い集めていく。その最中も、決して晶の方を向こうとはしなかった。

「失礼ね……」

 ハッキリと声に出した晶だった。そして、腕を組みメイド姿の少女の作業を注視する。先ほどから非礼が過ぎると感じていた。従業員の教育がなっていない! メイドが片付けを終えたら、相手に注意をするつもりだった。

 最上級生で女子寮の寮生代表である晶には、同年代の少女の無礼な行動が許せないのだ。苦言を呈しなければ、収まりのつかない性分。父親譲りの堅物な性格。我ながら難儀だな――と自分を嘆く晶だった。

 腰を落とし無言で働く従業員は、遠くの破片を拾おうと大きく移動した。足を高く持ち上げる。


 ――その時。


 彼女のスカートが派手に捲れていた。晶は、メイドの白いストッキングの細い足に注目をする。すらりと伸びた長い足。その足首の部分に、革製の入れ物を見た。そして黒い物体。メイドの少女には異質な存在。

 サイレンサー付きの小型拳銃だった。晶は見逃さない。刑事の娘である自分が、見間違う事など無い――本物だ。そう断定する。

「キャッ」

 晶に見られていることを察した従業員は、短い悲鳴をあげて今更のようにスカートの乱れを直していた。


 晶はクルリと回れ右して、自分の部屋である一○二四号室へと歩き出す。見てはいけない物を見てしまった――と感じた。胸の鼓動が高鳴る。極めて冷静を装っていたのだが、部屋の前に到着して、中には入れないことを思い出す。自分はいったい何をしているのだ……。


 観念して振り返る。

 従業員がこちらに向けて右手を挙げていた。白い手袋に握られているのは拳銃だった。

 標的は自分。


 ――殺される!

 どうするべきか瞬時に考えた。迷っている暇は無い!


「火事よ!!」

 大きな声が出ていた。母を叱りつけたときの比ではない。

 裏返った高声は、悲鳴に近い音だった。相手の――恐らくはホテル従業員に扮装した――女は……驚いている。そんな顔を見た。

 まだ、あどけなさを残した可愛らしい少女の容貌だ。ウェーブした肩口までの栗色の髪の毛が、顔に掛かっていた。少女はかぶりを振り、髪の位置を整える。大きな目はやや吊り上がり気味になっていた。そして体全体からは、猫のようなしなやかさをたたえたとの印象を持つ。見た目は可愛いが、獲物をしっかりと狩る事が出来る肉食の獣だ。

「大変! 火事よ! 逃げて!」

 晶は再び叫ぶ。下腹に手を当て前屈みになって、思い切り声を出す。

 賭だった。この時間に、このフロアに、宿泊客が居なければ自分は終わりだ。花も恥じらう十八歳の乙女……死んで花実が咲くものか! この場で散らしてもなるものか!


「何だ?」

 無限に続くかと思われるホテルの長い廊下。そこに面した一室から、一人の男がのっそりと顔を出した。


 ――助かった。


 安堵した瞬間、晶の背後に少女がピタリと寄り添った。固い物が背中に押し当てられるのを意識する。紛れもない拳銃だ。

 少女は晶の口を左手で塞ぐ。そのまま、凄い力で晶を押し出して来た。あの小さな体にどれだけの力が秘められているのか? 抗うことも出来ない。瞬く間に男の部屋に迫る。

「な、何だ? 何だ?」

 男の疑問は当然である。晶は背中を押されて、男にぶつかった。そのまま晶と男は部屋の中にもんどり打って倒れ込む。

「キャア!」

 晶の今度の声は可愛らしかった。場にはそぐわない。

 メイド少女は、左手で重そうな手押しワゴンを引きずり込み、男の部屋に侵入した。か細い腕からの豪力に舌を巻く晶だった。

「だ、誰だ! キミは、私が誰だか判っての行動なのか?」

 床に倒れた男は、無様な格好のまま高圧的に威嚇してくる。無駄なのに――晶は男の顔を見ていた。

「け、拳銃……」

 少女の手に握られた武器を見て、途端に黙る。驚きの表情のまま固まっていた。既定路線の行動を見て、晶は呆れ返っていた。

「衆議院議員の大石おおいし 亮介りょうすけ先生ですね」

 少女は始めて言葉を発した。低めの声を努めて出そうとしているが、可愛らしい声には変わりが無い。鈴を転がすよう――晶は少女に向いた。

「そ、そうだが……。それより――き、キミは大丈夫か?」

 男は精一杯の虚勢を張りながら立ち上がる。晶に向けて手を差し伸べてくれた。

 女性の晶にも気を回す。思ったよりは紳士な男性だった。

「え、ええ。ご心配なく」

 晶は短いスカートを押さえながら自分で立ち上がる。同時に男の顔を見る。国会議員? 晶には知らない顔だった。

「さぁ、両手を挙げて! 頭の後ろで組みなさい!」

 メイドの言葉通りに、男と晶は素直に小さくバンザイの形を取る。そして、後頭部に手を廻した。

「き、キミは誰の命令で――う、動いているんだ? まさか……」

 右隣の男、大石議員は頭から盛大に汗を流していた。商売柄、敵は多いのだろう。メイド姿の可愛いらしい殺し屋の依頼人を頭で探っている。両目が激しく動いていた――晶は詳細に観察する。

 反対側に視線を向ける。冷房の良く効いた部屋の室内を見渡す。この十階のフロアは、ダブル以上の部屋が並ぶ……豪華な調度品に目が行った。花瓶や灰皿で戦えるか? 床から伸びている木製の帽子かけを、女の自分が振り回せるか? 剣道二段の腕前の晶は思案する。

 視線を元に戻すと、少女と目が合った。


 ――さて、どうしよう。


 殺し屋少女の拳銃の腕前は分からない。境目もない平坦な廊下で、ワゴンから皿を落として割ってしまうドジっ子メイドだ……。こちらの勝ち目はゼロではないと、甘く見積もる。

 少女の体つきは華奢だ。並んで立つと、身長は晶よりも拳一つ分低いと判る。

 メイドの持つベルギー製のFNブローニングM1910は、確か32口径――小口径の拳銃だ――と晶は、自分に偏っている知識を与えてくれた父に感謝した。刑事の父親の影響で、銃器についての造詣が深くなってしまった。

 中学生時代は、男子に混じってサバイバルゲームに打ち込んでいた自分。隠したい過去。


 現実に戻る。

 この拳銃なら、一撃目で致命傷を負わなければ逃げ切れる好機もある。

 チャンスを待つか? 彼女の標的は隣の男だけだ――そんな結論を出して、晶はニヤリと笑いだしていた。

 メイドは、当惑の表情で黒いセーラー服の娘を見つめる。

 他人を犠牲にしてまで逃げ出すのか? 刑事の娘が! こんな時に、妙な正義感が湧く。

「ねぇ、あなた……取引をしましょう」

 晶は口を開く。思ったより落ち着いている自分の声に気付く。少女は言葉を無視していた。だが、構わずに晶は続ける。

「あなたが殺したいのは、隣の大石議員のはず。その任務の途中に、偶然に居合わせてしまったのは――私。あなたに命令したのは、大石議員のボスに当たる人間でしょうか。私は大石議員の殺害に協力をするわ、あなたと共犯関係になるの……協定を結びましょう」

 晶の提案に少女は興味が無さそうだった。首を傾けて、哀れな人間を蔑む様な目で見ている。大石を片付けた後は、晶を殺す。いや、順番など関係ないのだ。二人共に殺すことは彼女の中で決定している。


 しかし、殺される当の本人は慌てていた。それはそうだろう。

 語る晶と少女とを、かわるがわる見ている。

「わ、私を殺すのか? く、倉田先生の指示なのか?」

 大石の質問に、二度ゆっくりと頷く殺し屋メイドだった。

 倉田? まさか、倉田くらた 源一郎げんいちろう現・内閣総理大臣の事なのか? 晶は熟考する。簡単に結論を出すな! 情報を整理しろ! 自分の脳細胞を叱咤する。大石議員のボスの――当てずっぽうの推理は、今のところ的中していた。

 ここまでの自分の判断は間違っていないと確信する。

 晶は学院での学年トップの成績を誇っていた。三年生の自分は生徒会長も務めている。

 そんな自負もあった。


 大石の姿を詳細に観察する。年齢としては四十歳ぐらいだろうか。母親と同年代。高そうなスーツを着込んでいる。胸元には金色の菊花をあしらった、えんじ色の議員バッジが目立っていた。ネクタイと胸のハンカチーフのセンスも良い。シャツも、アイロンと糊が効いているのか、パリッとしていて清潔感と几帳面さが漂う。大石議員の身の上は知らないが、彼の背景は想像が付く。

「倉田総理の指示ならば、大石さん……あなたに罪を全て着せて、自殺に偽装するはずです。ですから、問答無用で射殺する荒事はしない。そうですよねメイドさん?」

 晶は少女の顔を見る。メイドの右眉が上がった。そして、小さくて可愛い口が動く。

「――ご心配なく。大石議員は無関係な少女に関係を迫った末に、無理心中を図った――そんな筋を用意しています。更に、議員には受託収賄に加えて、殺人と銃刀法違反の罪が課せられる事になります」

 少女はそのままの表情で、感情無く言った。「ご心配なく」……立ち上がる時の晶の口調を真似していた。無性に腹が立つ。せめて一太刀浴びせたい――晶の願いは変節をする。


「ま、待ってくれ。本当に、倉田先生――総理の命令なのか?」

 議員は食い下がる。世事に疎い晶も、総理が国会の予算委員会で追及されているのを新聞で見て知っている。入院間近との報道もあった。大石議員は、倉田総理の元秘書だとも推察できる。元秘書に全ての罪をなすりつける行為は、過去から何度も行われて来ていた。とんでもない場面に遭遇したものだ。自分の不運を噛みしめる。


 議員の質問に少女は答えない。クライアントの名前は最重要の秘匿事項なのだろう。

「大石さん無駄ですよ。冷酷だと思われるでしょうが、ここはあっさりと死んで下さい。そのワゴンには、遺書やサイン用のボールペンが入っています。きっと、天井から吊すためのヒモも用意してありますよ。奥様とお子さんの将来を考えても自殺を決断して下さい。ご心配なく大石さん、私も自殺教唆や自殺幇助の罪を甘んじて受け入れます。『同意殺人』の罪に服すことも厭わない……」

「な、な……」

 大石議員は驚愕の表情で晶を見つめる。娘ほどの年齢の小娘に簡単に殺し屋に売られたのだ。売り渡されたのだ

「ねぇ、あなた。クライアントにオーダー変更の確認を取らなくていいの? 私の父は、警視庁の現役の刑事をしているわ。叔父は警視庁の幹部だし、母は現在このホテルでパーティー中の有名なチェリストよ。伯母は巨大企業の取締役役員もしている。私が死ねば徹底的に捜査されるわ。何しろ、父も叔父も警視庁刑事部の所属なのよ。父は死にものぐるいで、私の仇を討ちに来るでしょうね。あなた一人の判断で大丈夫なの? あなたの後ろに控えている人物たちに、多大な迷惑がかかるわ」

 晶は自分の持っているカードを全てさらけ出していた。どれがヒットするかは分からない。切れるカードは全て切る。出し惜しみをしている場合ではないと判断した。

「私なら秘密を守るわ。秘密厳守を誓っても良い、何故ならば……」

 晶は一気呵成に畳みかける。少女は思案する顔付きをしている。命乞いをするタイミングは今だ!

「……私は、あなたを見て一目で恋に落ちたの。あなたの顔も体も声も私のタイプ……。そう、私は同性愛者なの……告白するわ、あなたのことが好き! 大好き!!」

 もう破れかぶれだった。少女の目を見据えて、晶は自身の特殊な性癖を告白する。

 全くの嘘八百ではあるが……。

 こうなれば異常性愛者のそしりを受けても、甘んじて受け入る覚悟は出来ている――晶は、自暴自棄な言葉を発していた。


「え?」

 晶と大石議員は同時に言葉を発していた。少女の顔が赤らんでいたからだ。耳まで赤くなって俯いていた。真っ直ぐに晶を狙っていた拳銃の射線が下を向く。まさか、この焼けクソでさらけ出したデタラメカードが、有効だとは思わなかった。

 今こそが、千載一遇のチャンスだと確信する。

 このまま全速で部屋から飛び出せば、自分一人で逃げおおせるだろう。

 だが、そんな自分は許せないのだ。ここに来て、正義感が邪魔をする。

「え……」

 今度はメイド少女が当惑の声を出す。

 晶は少女を抱きしめて、キスをした。少女の唇に自分の唇を重ねる。同性とのキスは、何とも思わない晶だった。幼少の頃から母親とは毎日のようにキスをしていた。否、されていた。

 更に激しくキスをする。相手の口の中に舌を進入させるのは、母親との挨拶代わりとは質が違う。

「あ……」

 晶が口を離した時に、少女は悦楽の言葉を漏らしていた。拳銃を持った右手は完全に下がっている。身体が享楽に打ち震えていた。


「大石議員! 逃げてぇ!」

 横を向き大声を出す。少女二人の行為をかぶり付きで見ていた彼は、小さくうなずくとドアに飛びつき、震える手で何度か手こずりながら開けて出ていった。

 全力で逃げていた。

「あ……」

 少女の今度は、放心した声だった。そんな彼女を優しく床に寝そべらせる。腰が抜けているのだと見抜いていた。努めて華麗に外に出ようとする晶に、少女は声を掛けて来る。

「待って……僕の名前は、栗林くりばやし 桃花ももか。僕を好きだというのは本当?」

 寝そべったままの桃花は、晶にそんな言葉を投げかける。

 晶は当惑する。「嘘よ」とは言えないからだ。少女の純情を弄んでしまった事を反省する。同時に、彼女の発する「僕」と云う言葉に違和感を覚えていた。

 「僕ッ」と云うジャンルの子なのだろうか。

 こういう子は、学院にも寮にも沢山いた。全てが厄介で面倒くさい相手だった。


 少女の問いに晶は答えず、部屋を出て行く。優雅に部屋を出た晶ではあったが、エレベーターホールに大股で走っていく。良いフォームだった。到着後はボタンを連打する。

「チン!」

 カゴは直ぐに到着した。

「ふぅ……」

 深呼吸して乗り込む。さて、何処に向かおう。

「お嬢さん……何階ですか?」

 奧にいた男性が尋ねてくる。上に向かうエレベーターだった。完全に一人だと思っていた晶は、少し驚く。両肩が少し上がっていた。

 男は親切にも、低い位置の「開」ボタンを押して待っている。追っ手が来ないように、早く移動せねば――扉の外を見つめる。

「に、二十階……」

 まだ息があがっていた。それだけ答えて、晶は男性の顔を見る。背の高い……外国人の男性だった。晶は見上げる形となった。

「パーティー会場ですか……奇遇ですね。ボクもそこに向かうのですよ。ご一緒にいかがですか?」

 にこやかに笑い、手振りを交えて語る男性の言葉は、流暢な日本語だった。刈り込まれた短い金色の髪の毛と、透き通るような青い瞳の――美しい男性。

 綺麗……見惚れるような男の顔だった。しばし相手を見つめる。黒い高級タキシードがスタイルの良い彼に似合っている。その後、紺色の蝶ネクタイに目が行った。襟元のバッジにも注目する。金色の正六角形の形だった。模様も文字もない。どこかの企業の記章なのだろうか?

 警戒心に満ちている晶は、男の観察を怠らない。


 エレベーターは直ぐに到着する。

 ゆっくりと晶は二十階に降り立った。金髪の男性は扉を押さえて待ってくれている。

 女性優先の精神が根付いている極めてスマートな行動だ。

 晶は真っ直ぐに進むが、大宴会場入り口の受付で止められた。

「招待状を――」

 受付の男性ホテル従業員がキッパリと言い切った。矢張り入場拒否だ。

 一階のホテルフロントでスペアのカードキーを受け取っても、十階の母の控え室には戻れない。殺し屋メイドが、きっと待ち構えている。ホテルマンを大勢引き連れるよりは、警察へ連絡するか……晶は諦めて回れ右をする。この階で母を待つつもりだった。少しでも賑やかな場所が良いと考えた。正直、一人で置かれた状況は恐いのだ。

「このお嬢さんは、ボクの随伴者です」

 受付で、晶の後ろにいた金髪の男性が話し出す。するとホテルマンの態度は急変した。丁重に二人に頭を下げて、男と晶とを案内する。宴会場入り口の大仰な観音扉をゆっくりと開けた。


 大きな空間の最後尾に立つ。

 丁度、演奏が始まっていた。「蒼龍の間」前方に作られた特設のステージ。ピンスポットが赤いドレスの一人の女性を浮かび上がらせていた。

 チェロの独奏。

 暗い会場では、立っている観客がゆっくりと体を左右に揺らしていた。

 正面を見る。大きな弦楽器を抱え、椅子に大股を開いて座っているのは母のパトリシアだ。赤いドレスのプリーツが、右手の弓を動かす度にゆっくりと揺れる。弦を押さえるために、繊細かつしなやかに動く左手の指。

 母の顔に注目する。ほう――と感心もした。家庭内では絶対に見せない、凜とした表情だった。自分の演奏に酔ってきたのか、少し恍惚としている。

 同性の、しかも娘の自分でも惚れ惚れとする。こんなに立派に演奏を行えるのに、子供のような性格には手を焼かされ続けているのだった。

 ステージの端に立つ伯母の姿を確認した。赤いスーツを着込み――真っ直ぐにこちらの方を向いている。

「良い奏者ですね」

 先ほどの男性が晶の背後から声を掛けてきた。優しくささやく。

「ええ……」

 晶は前を向いたまま答えた。曲が終了し、母は立ち上がって一礼をした。観客全員が盛大に拍手をしている。晶もそこに加わっていた。

「ボクの名前は、エルンスト・フォン・ブラウンシュヴァイク・カレンベルクです。友人たちはアーンストと呼んでいます。素敵なあなたの名前は?」

 カレンベルク? アチラの一族の関係者か――晶は、ステージ上で母に惜しみない拍手を送る伯母のアンナ・大鷹の姿を見ていた。いつ見ても抜群のプロポーションだ。母と同じく年齢を感じさせない。この一族には、不老不死の呪いでもかかっているのか――晶は、不遜な考えに至る。

「お、園城寺です……。園城寺 晶……」

 首だけ後ろを向けて答えていた。その時気が付く。エルンストは晶の黒髪を手にとって匂いを嗅いでいた。

「な、何をするんです!」

 晶は慌てて、自分の髪の毛の一束を彼の手から奪還する。

「良い香りだ……失礼しました、お嬢さん。で、園城寺……ですか、パティの関係者?」

 パティとはパトリシアの愛称だ。そんなことは、今はどうでもイイ! 失敬な――晶は怒った顔を青年に向けて、口を開く。

「む、娘です!」

 この場所では園城寺の名前は禁句だった。今更のように思い出す。愚かな自分。早々に立ち去りたい気分になった。

「あ! 晶ちゃん! やっほー!」

 ステージ上の母が、目ざとく娘を見つけて手を振っていた。楽器用のマイクが声を拾って、会場中に響く。「蒼龍の間」の全員が晶に注目していた。何をするのだ、我が母親よ――叫びたい気持ちであった。

「晶さん。では、ステージへどうぞ」

 伯母のアンナが、司会者のマイクを奪って語っていた。商機に目ざとい彼女の事だ、考えがあるのだろう。それに逆らえない雰囲気を、会場の全員から感じ取った。

 照明が戻って、観客の顔が確認出来た。テレビで見知った顔も混ざっている。財界、芸能界、スポーツ界……政治家もいた。皆が自分に注目している。晶は少し緊張し、ステージまでの道程をゆっくりと進んで行く。振り返ると、エルンストは姿を消していた。晶をここまで誘ってくれた男性。急に心細くなり、視線を足元に落とす。本来は招いてもいない客なのに……何をさせたいのだ伯母は!

 正面を向き、アンナ・大鷹の顔を睨みつけてやった。彼女は小さく笑う――してやったの表情だ。高校生の姪っこに嫌がらせをして楽しんでいる。

「こちらは、パトリシアの一人娘、園城寺晶さんです」

 ステージに上がった晶は、アンナに紹介され頭を下げる。自分に向けられた照明が眩しかった。少し目付きが悪くなったな――良く指摘されるので、自覚していた。

 小さな拍手が起こる。

 マイクを向けられた。

「えー……」

 頭の中は、真っ白になっていた。



   ◆◇◆


 ――七月二十一日 午前七時四十五分。

 聖マクシマン学院 中・高等部女子寮 合同大食堂。


「学院生徒の皆様! 今日のお恵みに感謝しましょう! 天にまします我らの父よ――エーメン」

 寮生代表の園城寺晶は、胸の前で手を組み主への祈りを捧げる。

「エーメン!!」

 六百名になろうとする学院の中等部・高等部の寮生たちは、声を揃えて一斉に祈る。晶にとって、学院の黒い制服が並ぶのを眺めるのは、いつものごとく爽快だった。

「では、皆様お食事を!」

 修道服姿の老シスター吉田よしだ 美保子みほこは、にこやかに高らかに宣言をする。シワだらけの、顔が更にシワくちゃになる。


 古くて細長いテーブルが幾重にも並ぶその場所で、生徒たちは食事を始めた。パンとミルクだけの質素な朝食。今日の日付二十一日は、学院創設者エルメンヒルデの命日だった。

 

 月に一度の「エルメンヒルデの会」が開催されている。極貧の布教生活から、一代で学院までを築いた彼女の偉業を称える日だ。生徒たちはもちろん未成年者であるので、パンとワインとはいかない。

 普段は成長期の少女達向けに、栄養バランスが考えられた豪華な食事を口にしているのだ。

 晶は自分の斜め前の空席を見つめる。今日は学院の一学期の終業式が行われる。それを待たずに、他の学校へと転校し、引っ越してしまった女生徒の席だ。

 名前は田村たむら 佳実よしみ。寮で晶の世話係をしていた二年生の生徒。晶には何も告げずに、寮の部屋を引き払ってしまった。

 何故、私の世話係の生徒たちは、直ぐに辞めてしまうのだろうか……。

 自分の指導が厳しすぎるのか? そんなつもりはない。叱ったことなど一度も無い。それとも、妬みに思う他の生徒の嫌がらせを受けているのか? それはあり得ない。敬虔なる……とまではいかないが、学院の生徒の慎ましやかでお淑やかな様を晶自身も知っている。

 食事の間、晶は自問自答を繰り返す。乾燥して堅くなったパンがノドを通らない。

 小さくちぎって、牛乳で無理矢理流し込む。

 晶は牛乳が苦手であったが、寮生代表の自分が食事を残すわけにはいかない。

 毎月二十一日の「エルメンヒルデの会」が、たいそう苦痛であった。

 そして七月は、命日のその日でもあり、学院創設者のエルメンヒルデの誕生日でもある。

 母親と同じ誕生日。母の祖母――曾祖母の肖像画を思い浮かべる。母そっくりの容貌だった。

 自分にも流れる血。そんなプレッシャーに押しつぶされたのが、世話係の交代の背景なのだろう――そう思うことにした。


 ――午前八時二十二分。


 食事が終わり、寮の三階の自分の部屋に戻る。

 晶はドアを開けたまま、空室となった隣室を見つめる。その向かいの部屋から二年生の生徒が出てきて、晶を認め礼をする。

「おはようございます晶様。いってまいります」

 元気よく挨拶をし、廊下を無音の早足で進み階段に向かう。下級生は全員、自分を晶様と呼ぶ。何だかこそばゆいが、昔からの伝統なので無下にも出来ない。

「いってらっしゃい」

 挨拶を返した晶ではあったが、悠長にはしていられない。八時半までに学校に到着しなくてはならないのだ。晶は自分の腕時計を確認する。学院と同じ敷地内にある女子寮。歩いて五分もかからない短い距離だが、遅刻は絶対に許されない。

「園城寺さん」

 廊下を歩いてきたシスターに呼び止められた。

「はい、何でしょう」

 満面の笑みで応対する。このシスターは毎度苦手だが、表情には決して出さない。

 生徒会長で、学年代表で、寮生代表の自分の役目をわきまえている。

「田村さんの部屋には、今日――新しい生徒さんが入られます。余所から転校された、二年生の生徒ですので、園城寺さんには指導をお願いしたいのです」

 急な話だな。そして、おかしな話だな――との印象を持つ。今日の午後には学院は夏休みに突入する。多くの寮生は郷里の実家に帰省したり、近郊の自宅に戻ったりする。

 晶自身も、自宅である警視庁の官舎に戻る予定だった。大きな女の子が待っているからね。夏休みには帰ると連絡を入れていたし、約束を守らないと泣き出してしまう幼子だ。まったく母は……溜息を吐きたい思いだった。

 いつもは用件だけ短く告げて、直ぐに立ち去るシスターだった。今日は、まだ何か言いたげな顔をしている。

「込み入った事情のお話ですか?」

 晶はシスターの吉田美保子の思いを汲み取って、質問をする。

「ええ、突然のお話でね。寮長のわたくしも、最初はお断りしようと考えたの……」

 老シスターはこの寮の寮長なのだ。乙女の園の最高責任者は顔を曇らせる。

「でもね、彼女の可哀相な身の上話を聞かされて、わたくしは決心しました。その生徒さんは、最近になってお父上とお母上の両方を相次いで亡くされたのです。現在は、身寄りのいない身です。この学院の創設者のお言葉でもあります『困った方には、最大限の援助を……』の精神で、学院は一切の面倒を見ることを決定しました。園城寺さんも、ご協力をお願いします」

 祖母ほどの年齢の女性が頭を下げてきた。断れるはずもない。

「了解しました。お任せ下さい」

 晶も丁重に礼を返す。



   ◆◇◆


 ――午前十時五十分。

 聖マクシマン学院 敷地内。


 終業式が終わり、各教室で担任教師により長期休暇の注意事項が述べられた後に、解散となった。

 ただ今より、夏休みに突入だ!

 梅雨明けも宣言されて久しい。澄み切った青い空を見上げる。すっかり夏の光の風景に変わっていた。

「晶様、ごきげんよう!」

「ごきげんよう」

 寮に向かう道すがら、数多くの女生徒から声を掛けられる。寮以外にも自宅から通う生徒も大勢いる。実際、半数以上はそんな生徒ばかりだ。その生徒たちはわざわざ遠回りして晶に挨拶しているのだ。

「あ、あの……晶様……」

 一年生なのだろうか? スクールバッグが赤色の生徒が声を掛けてきた。

「どうしました?」

 立ち止まり用件を聞く。

「あの私、一年の美作みまさか 水琴みことです。田舎が熊本なので、夏休み中にスイカを贈りたいのですが……。寮の園城寺晶様宛に送ります。祖父が作ったスイカは絶品です。是非とも寮の皆さんで味わって下さい!」

 小柄な少女は必死に喋りながら、何度も頭を下げていた。笑顔が眩しくて目がくらむ。

「ええ、分かりました。楽しみにしています。でも無理はしなくても良いですよ。夏休み中は寮生も少なくなりますからね。六個も送って下されば、全員に行き渡ると思います。荷物の宛先は『聖マクシマン学院女子寮 ご一同様』と書けば、ちゃんと届きますよ」

 晶はハッキリと数を指定した。そうでもしなければ何十個も何百個も送ってきそうな勢いだったからだ。彼女の実家の負担を考える。夏休み中に留まる生徒の数も考える。それらは寮生代表の責任だった。

「分かりました。じっちゃ……いえ、祖父にそう連絡します!」

 女生徒は深く頭を下げて駆けて行った。彼女の同級生なのだろう五六人のグループの元に戻っていた。キャアキャアと手を取り合って喜んでいた。



   ◆◇◆


 ――午前十一時四十五分。

 聖マクシマン学院 女子寮内。


 晶は、寮の自分の部屋に戻るまでに、何人もの女生徒に声を掛けられていた。特に女子寮の入り口では大勢の女の子をさばく羽目となる。

 晶の名前宛てに、郷里の名産を送ると言われた。果物に野菜にお菓子に……米まで送ると言われていた。先ほどの一年生の生徒と同様の案件だ。

 その度に、全て寮宛てにしてくれと断っていた。学院も寮も、多くの方々の寄付で成り立っている。先ほどの転入生の様に、身寄りのない子も沢山いる。その子たちの為に、甘んじて申し出を受ける晶なのだった。

「ふぅ……」

 お腹空いたな――晶はそんなことを考えていた。ようやく一息付けそうだった。


 三階への階段を昇りきる。今日は酷く疲れてしまった。

 一番西側の角部屋。

 自分の部屋のドアノブに手を掛ける。自然と左隣の部屋に目が行く。ドアが開いていた――転入生の荷物なのだろう。幾ばくかの段ボール箱が運び込まれていた。

 今度こそは逃げられないようにしよう――堅く心に誓う晶だった。


 ほんの好奇心だった。


 隣室に入る。

 田村佳実が居たときには何度も入った馴染みの部屋だった。自分の部屋と同じ作りではあるのに、部屋の中を見渡してしまった。

 備え付けの机やベッドには、少しばかりの違いがあった。

 佳実が貼っていた壁のポスターの跡。日焼けで壁紙に色の違いが出来ていた。


 新しい住人を推理する。ミカン箱ほど大きさの、引越し会社の用意した白い箱。数は三個だけだった。他に荷物は無かった。同年代の少女にしては少なすぎる量。だが、新住人の身の上をおもんぱかる。少し同情しようと考えた。


 ――その時だった。


「動くな!」

 晶の口を女性の小さな手が塞いでいた。そして背中に押しつけられた堅い感触。

 同じ事が、つい昨日あったな――園城寺晶の記憶が蘇る。

 声には聞き覚えがあった。

 晶は、相手の言葉を無視して口を塞いでいる女の手首を掴む。

 振り返った。

「会いたかった!」

 少女はいきなり晶に抱きついて来た。


 少女の名は――

 栗林桃花。


 晶の制服の胸に顔を埋めて、法悦ほうえつの表情を浮かべていた。



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