表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/101

園部男児葬送記録(平成17年3月24日)

【極秘】秘匿葬送記録

報告書番号: 平成17-03-24-001

作成日時: 平成17年3月24日 午後11時37分

報告者: 神奈川県緑川市 蓮華寺 住職 古沢 禅徳(花押)

事案名: 園部男児葬送記録


一、事案発生日時・場所

日時: 平成17年3月23日 午後2時00分頃(通夜開始時)より、翌24日 午前10時30分頃(出棺完了時)まで断続的に発生。

場所: 緑川市総合斎場 さくらぎの間(通夜・告別式会場)、並びに園部家自宅(故人安置場所)。


二、故人情報

氏名: 園部そのべ 健太けんた

享年: 3歳

死因: 不明(自宅にて突然死。警察による検死の結果、病死と判断されるが、明確な原因特定には至らず)。

特記事項: 故人は生前、極度の人見知りで、特定のぬいぐるみ(名称:ポポ)を常に肌身離さず持っていた。家族以外にはほとんど心を開かなかった。


三、事案の概要(時系列順)

3月22日 午後5時00分頃: 園部家より通夜・告別式の依頼を受ける。当寺より担当僧侶として若手僧侶 清水 晃を派遣。


3月22日 午後7時00分頃: 清水僧侶、園部家にて枕経をあげる。この際、故人の傍らに置かれたぬいぐるみ「ポポ」が、微かに揺れているように見えたと報告。

当初は気のせいと判断。遺族は故人の安寧を願い、ぬいぐるみを棺に入れてほしいと強く懇願した。


3月23日 午後2時00分頃(通夜開始): 斎場にて通夜が始まる。読経中、参列者の間で「子供の泣き声が聞こえる」との囁きが複数確認される。

しかし、会場内に子供の姿はなし。清水僧侶も微かに耳にしたと証言。

声は、まるで壁の向こうから聞こえるかのように不明瞭であった。


3月23日 午後7時30分頃: 通夜振る舞いの最中、故人の遺影が突然、祭壇から落下。

ガラスが粉々に砕ける。遺族は動揺するも、斎場スタッフは「固定が甘かった」と説明。

しかし、遺影はしっかりと固定されていたことを清水僧侶は確認済み。

落下した遺影の裏側には、ぬいぐるみの繊維のようなものが付着していたという。


3月23日 午後10時00分頃: 清水僧侶、斎場にて故人の傍らで夜伽よとぎを行う。

静寂の中、故人の棺の中から「トントン」と、内側から叩くような音が数回聞こえたと報告。

恐怖を感じ、経文を唱え続ける。

音は間隔を開けて続き、まるで何かを訴えかけているかのようであった。


3月24日 午前8時00分頃(告別式開始): 告別式が始まる。

読経中、棺の蓋が微かに持ち上がるような動きを見せる。

清水僧侶は視線を逸らさず読経を続けたが、参列者の一部がその動きを目撃し、ざわめきが起こる。

その際、棺の隙間から、まるで何かを覗くかのような「視線」を感じたという。


3月24日 午前9時30分頃: 棺を霊柩車へ運ぶ際、棺が異常に重く感じられたと、運搬担当者数名が証言。

特に故人の頭部側が顕著であったという。

通常の子供の棺の重さとはかけ離れていた。


3月24日 午前10時30分頃(出棺完了): 霊柩車が出発した後、斎場内の空気が一変し、強烈な冷気と腐敗臭が充満。

数分で消え去る。

この現象は斎場スタッフを含めて複数名が体感した。


四、特異な点と考察

故人の死因不明という状況と、怪異発生の関連性。 特に故人の遺品である、ぬいぐるみ「ポポ」が、怪異の中心にある可能性。

通夜の際、清水僧侶がぬいぐるみに触れたところ、異常な冷たさを感じたという。

故人が生前、極度に執着していたものに、何らかの「念」が残ったのではないか。

「子供の泣き声」「棺を叩く音」「棺の動き」など、故人が「生きている」かのような錯覚を覚える現象が多発。

これは、故人の魂が安らかに旅立っていないことを示唆している。

斎場スタッフも巻き込んだ、広範囲での怪異の発生。

これは、単なる幻覚や錯覚では片付けられない。

当寺に伝わる「幼子を弔う際の禁忌」との関連性。

特に「故人の愛着の品を棺に納める際は、必ず浄めるべし」という教えが守られていなかった可能性。

遺族の強い感情が、供養の障壁となったか。


五、対処・対策

事案発生中、清水僧侶は常に読経を続け、故人の冥福を祈ることに専念。

精神的な動揺を悟られぬよう努めた。

事案終了後、斎場及び園部家に対し、当寺の秘伝の護符を授与。

故人の供養を定期的に執り行うよう助言した。

今後、幼子の葬儀に際しては、より厳重な浄めと、故人の愛着の品の取り扱いについて、遺族への丁寧な説明を徹底する。

特に、故人の死因が不明瞭な場合、より慎重な対応が求められる。担当僧侶の精神状態にも配慮が必要。


六、付記

本件は、通常の葬儀報告では説明しがたい事象が多発したため、極秘扱いとする。

清水僧侶の精神状態は安定しているが、本件に関する詳細な聴取を再度行う予定。

この記録は、今後の類似事案発生時の参考に供する。

故人の「未練」が、ここまで強く現れることは稀である。

安易な供養は、かえって事態を悪化させる危険性を再認識した。


【検閲追記】

担当僧侶・清水晃の精神状態について、経過観察を要す。

十年後の清水晃不詳死記録(平成27年4月1日)との関連性、最重要。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ