8. エル、怒られる
「どういうこと?」
俺は隠さずに事実を伝える。
「実は今日の朝、水生成魔法を使って、その魔力切れを回復魔法を使って直そうと適当に詠唱してみたら、なんか発動しちゃったんだよね。」
「…」
怒られるだろうか…怒られるだろうな…昨日の今日で親のいない間に危険なことをしたのだから。
と思ってたのだが、マーシュは何も言わず俺のことをジッと見つめていた。
「…怒らないの?」
「怒る前に教えなきゃいけないことと聞きたいことがあるわ。」
「…はい。」
「まず、魔力切れは回復魔法では治らないわ。回復魔法はあくまでも体の傷を治すためだけの魔法だから。」
「…でも昨日お母さん僕に回復魔法使ってたよね?」
「あのときはあなたが倒れて慌ててたからそのことを忘れてたのよ。まあ頭の怪我を治せたから良かったけど。」
「そうだったんだ…」
「でもあなたは適当に詠唱した回復魔法を唱えたあと魔力が戻った感じがしたのよね?」
「うん…それは間違いないよ」
「魔素を使って魔力を回復した?それとも新魔法?いやエルの勘違いって可能性も__」
とブツブツと独り言を繰り返すマーシュ。
マーシュの言い方的には、恐らく普通の回復魔法では魔力を回復させることはできないらしい。
「ねえ、もう一回今朝唱えた魔法を詠唱してみて?」
「う、うん。」
「神よ、我を癒やしたまえ、回復魔法。こんな感じだったよ。」
「新魔法ではないわね…それに詠唱もちょっと違う……
エル、あなた魔素がわかるの?」
「うん…昨日倒れた時に魔素っぽいのを感じたから…」
もう隠すことはできないだろうから俺は正直に答えることにした。
「ありえない…こんな子供が魔素を理解するなんて…
それに間違った詠唱で発動したなら無詠唱で魔法を
使ったことになる…」
あれ?俺なんかやっちゃいましたか?
「取り敢えずこの話は明日にしましょう。」
と言われたあと、俺はマーシュから勝手に魔法を使ったことをビッチリと説教された。
いやはや1時間も説教されるとは…マーシュって意外と厳しいんだな…