4. マーシュ視点
私の息子、エルラルドはかなり変わった子だと思う。
生まれたての頃、授乳の時にいつも嫌そうな顔をしていたり、言葉が話せるようになるのが早かったり、歩けるようになるのが早かったり。
危なっかしいことはまるっきりしないし、ほとんど怪我をしない。
これだけ見ると俗に言う天才だったりするのかもしれないけれど、逆に言えば子供らしくないとも言える。
現に今までエルがわがままを言ったり、駄々をこねたりしたことがない。
ただ、少し変わってるからといっても私の息子であることに違いはない。
「少し変わってるかもしれないけど、私たちで大切に育てていきましょうね。」
と、旦那のガウスが返ってくる度にいつもそんな話をしていた。
ガウスはそれに対して毎回_
「男の子なんだからたくさん転んで、その分強くなってほしいものなんだが…」
とボヤいていたけれども。
(別に無理して強くならなくてもいい。幸せな生活を送ってくれればそれで…)
と考えていた。
そうして時間が過ぎていった頃のある日、エルラルドから「魔法を教えて」と言われた。
もちろんだめだ。
使い道によっては人を殺せるようなものを、未だ2歳の子供に教えるわけにはいかない。
そう思って、魔法は危ないものだからもっと大きくなってから、と伝えていたのだが、駄々をこねられてしまった。
初めて見せる子供らしさに、
(なんだ、やっぱりまだ子供なんだ。)
と、うれしくなってしまった。
それと同時に、初めてエルが駄々をこねたんだからそれに応えようとも思ってしまった。
「わかったわ。でも教える以上、途中で投げたしたりしたら駄目だからね。」
(私が魔法の怖さも含めてしっかりと教えてあげれば大丈夫だよね!)
そう楽観視していたが、このあとエルの才能に度肝を抜かれることになるのだった。