38. アイキャンフライ!
その日は夜までびっちり訓練だった。
「これからも俺が休みの日にやるぞ。」
「次はいつ休みになるの?」
「基本的には週一で休みだ。それに三ヶ月に一回は長期休みが入るな。」
この世界は1年が12ヶ月、1ヶ月が24日となっていて、一週間は6日だ。
つまり1年が288日で、うるう年みたいなのはないみたいだ。
「長期休みになったら家に帰るの?」
「いや、今回はやりたいことがあるからな。家には帰らない。」
「やりたいこと?」
父さんはあまり欲を出さない性格なので、やりたいことがあるというのは珍しい。
いったい何をするんだろうか。
「まあそのうちな。」
と濁されてしまった。
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翌朝…
「いた!いたたたた!」
俺は絶賛筋肉痛に悩まされている。
(そう言えばもう10年近く身体を動かしてなかったのか。)
高校卒業してからはともかく、この世界でもあまり運動してこなかった。そのつけが今回ってきている。
「お前、もっと身体を動かしたほうがいいぞ?」
と、父さんにまで言われてしまう始末である。
(面目ない…)
今日は身体中が痛いので、明日から。
明日からは軽く運動しようと思う。
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(自然はやっぱり気持ちいいな…)
俺は浮遊魔法を実験するために、外まで来ていた。
(よし、やるか!)
集中し、魔素を操る。
魔素を溜め、上向きのエネルギーを生み出す。
初速度は速く、重力よりも強い力で体ごと持ち上げる!
ブワッと一気に上空まで来た。
(ちょっと高すぎるな。上向きのエネルギーを弱めて…)
高度を落とし、軸を安定させる。
(よし、進みたい方向と逆向きにエネルギーを加えれば…)
アイキャンフラーイ!
完成だ。
俺は今空を飛んでいる。
全人類の夢を達成したのだ。
(風が気持ちいい!)
昔自転車で坂を下った時の風音がして、懐かしさを覚える。
一通り満足したので、上向きのエネルギーを弱め、地表に降り立つ。
(待てよ?これを相手にかけられれば…)
思い立ったが吉日。
早速俺はそこらの石を拾い、浮遊魔法をかける。
上空に打ち出された石は、そのまま自由落下を始め、そこそこの勢いで地表にぶつかる。
(下向きにエネルギーを加えればもっと速くなるんじゃ…)
もう一度石を拾い、上空に打ち出す。
今度は石の上から下向きにエネルギーを加え続けてみた。
石は、凄まじい勢いで地表と激突し、爆音と風が巻き起こった。
(意外と難しいな。エネルギーを常に下向きに与えたいんだけど、石も落下してるから調節が難しい…)
浮遊魔法の実験をしていたはずが、いつの間にか重力魔法という、かなり高度な魔法の実験になっていたことに、エルラルドは気づいていなかった。




