194. 免許皆伝
「はぁぁ……染み渡る……」
月日にしておよそ3か月。一見短いように見えるかもしれないが、3か月のスマホ禁止から解放されたら誰だって同じような反応をするだろう。
「次元収納魔法内の物も……ちゃんと残ってるな。」
金貨約150枚、宝刀:エルラルド、戦争時の紫のローブ、指輪2つ、携帯食に裁縫道具などだ。
宝刀と指輪を取り出して身に着けておく。
「指輪……奪われてなかったのね。」
「あの条件を飲む時に万が一を考えて全部しまっておいたんだ。俺を無抵抗にさせて投獄されるのは感づいてたからな。」
「てことはあなたもそれが大事なものって思ってくれてるんでしょ?嬉しいわ…」
彼女自身の指輪を見つめてうっとりしている。
「これが俺を変えてくれたんだ。『死神』から人間に戻れた瞬間だと思う。」
指輪と宝刀は感傷に浸れるほどには思い入れ深い。
「………あと3ヶ月で新年だろ?飛び級できそうなのか?って言っても俺より強くなったんだからいけそうだけどな。」
「私はいけると思うけどレイちゃんは……」
「………レイがこれから先何がしたいか次第だな。無理して俺たちについてくる必要もないし。」
手の届く範囲にいなくなるというのはどうしても嫌な考えがよぎってしまう。しかし、レイにはレイの人生がある。そろそろ自分の道を探す年齢になってきているのだ。
「レイちゃんが帰ってきたらまた家族会議しなきゃね。」
「そうだな。」
その時、誰かがこちらに向かって走って来る気配がする。
「師匠ーーー!!!」
「あー……あんなやつもいたな……」
「長くなりそうね。私は先に戻ってるわ。」
「レイもそろそろ戻ってくるだろうし先に会議しててもいいからな。」
「わかったわ。」
次元間移動魔法でさっさと家に戻る。
「さてと…」
「師匠!どうしてここに来てくれなかったんですか!?ずっと待ってたんですよ!」
「俺は待ってないんだが……あとここに来る理由が無かっただけだ。」
何でこいつのためにわざわざここまで来なきゃいけないんだ。
「それにあれからレイさんにも全然会えないんですよ!避けられてるみたいでとても悲しいです!」
「それは知らねえよ……あとレイは多分もうここには来ないぞ。」
「え、どうしてですか!?」
「免許皆伝みたいなものだ。俺がレイに教えられることなんてもうほとんどないからな。」
灼熱系の魔法は俺でもわからない。あれはレイ自身が先駆者として作り上げていくだろう。
(というか炎の上が灼熱なら他の基本属性にも上がありそうだな。)
「僕はどうですか!?」
「あー……うん。めんどくさいしお前も免許皆伝でいいんじゃないか?」
「そりゃないですよ!逆に言えばまだ僕に教えることがあるってことじゃないですか!」
「いやまず今のお前の実力を知らないし…」
「なら今から確かめてください!」
なぜか臨戦態勢に入ってしまう。連戦だしまだ戦うと了承すらしてないんだが…
「さあ行きますよ!」
仕方ない、適当に相手してやるか。
「炎速射魔法!」
(詠唱破棄…このぐらいの魔法なら無詠唱でやってもらいたいんだがな…)
「水災害魔法!」
「ん?お前は炎と地じゃなかったか?」
「操られてる間無理矢理力を引き出されたのかできるようになったんですよ!風災害魔法!」
魔道具の類でもない。となると四属性をいきなりマスターしたということだ。
(そうなると少し話は変わってくるな。)
そこから混合魔法に派生させていくにはかなりの修練がいるが、感覚を掴んでしまえばどんどん覚えられる。
(全混合魔法マスターまで面倒見るつもりはないし、以外と実力で免許皆伝させられるかもな。)
むしろ面倒を見すぎてもよくない。自分で考える発想力も必要だからだ。
「ふぅ……どうでしたか!?」
「悪くないんじゃないか?そこから無詠唱やら混合魔法やらを身につけるのはお前の努力だ。いいだろう、免許皆伝だ。」
「やったー!ありがとうございます師匠!いえエルラルドさん!」
(貴族ってのはこうやっておだてとけば手のひらの上だな…)
「それにしても師匠、レイさんにも免許皆伝の試験やったんですか?」
「ん?やってないがそれがどうかしたのか?」
「やらなきゃだめですよ!師匠に認めさせる大切な儀式じゃないですか!」
「あーはいはいわかったようるせえな…今日レイは忙しいから明日な。」
「はい!また明日ここで!」
めんどくさいことになった……
グレイス=スライトのステータスです。
名称:グレイス=スライト
種族:人間
年齢:10歳
趣味:魔法
筋力:D 敏捷:D 体力:D 知能:C 魔力:A
習得魔法:炎魔法(詠唱破棄)、水魔法(詠唱破棄)、地魔法(詠唱破棄)、風魔法(詠唱破棄)、煉磊魔法